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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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3.マイペース

 入ってきた青年の二人組である見目麗しい男女は席に戻った今村とその近くに腰かけた百合を見て彼らか。と判断し、その方へと向かった。


 それを見て腰を抜かしていた店主が大声でその二人組に声をかける。


「ロッド王子!エメリア姫!き、危険ですので、お引き取りを……!」

「ダズマリン。危険は承知だ。だが、余にはやらねばならぬことがある。その為に危険を冒すのは当然のこと……」


 会話をする二人を見ながら今村はぼんやりとロッドと呼ばれた王子とエメリアと呼ばれた姫のことを何となく見たことがあるような気がしないでもない気がする……と思っていた。


「失礼。それで、稀代の魔術師はどちらの方で……?」


 王子の問いに今村はすぐさま百合を指し、百合もほぼ同時に丁寧に手先を今村に向けた。


「……両方、ということでいいのでしょうか……?」

「いや、違う。こいつ。」

「あ、はい……冗談です……私です。」


 百合は空気を読んで今村に向けた手を下げた後、逆の手で小さく手を上げた。


「おぉ、このような美しい方が……まさに天の使い……」


 その後も続く王子のリップサービスに今村は吹き出しそうになるが、百合の方は慣れているのでキリがいい所まで適当にあしらった。


「……美しき方、お名前を伺っても……?」

「百合、です……」

「おぉ、もしや、かの高名な学者、今村 百合さんですか……?」

「はい……」


 それでも褒めに褒めまくるロッド王子に対して居心地悪そうにそう言って今村の顔色を窺う百合。今村の方は話が済むまで適当にこれ全部飲むか……と手酌で酒を呑み直し始めた。


(まぁ、こんな酒じゃ酔わないんだが……勿体ないし……)


 周囲に聞き耳を立てる際に浮かないように買った酒で、人外の今村を酔わせるには程遠いが、それでも勿体ないので今村は百合が褒められるのを肴に飲んでいく。そのついでに「呪式照符」で二人の素性を洗っておいた。


(……モナルキーアの、メアリ女王とダニエル王の直系の娘と息子か。一応姉弟だが、継承権は弟のロッドの方にあると……)


 そんな観察をしていると姉のエメリア王女が今村に話しかけてきた。


「ところで、あなたはあのレディ百合の何なのですか……?」

「助手の尾藤おとう ひ……ろき。尾藤 弘樹だ。」


 今村の説明に自分探しの旅という設定ではなかったのかと百合は軽く困惑したが、今村は無視する。そうなってしまっては仕方がないので百合もその設定に合わせることにした。


(……今世で何回転生しても仁、って名前になるのはフォンの執念の結果の呪いみたいなもんだし……名乗ると現れそうだからなぁ……仁って名前に慣れてるが……まぁ反応が遅れても人間なら気付かんだろ……)


尾藤おとう様ですね。分かりました。」


 エメリア王女に納得してもらったところで百合も今村の名字を尾藤という物に変えた理由を把握して思わず頬を緩ませかかる。


「どうかなさいましたか?」

「……いえ。それより、本題に入っていただけませんか?私たちも暇、と言うわけではございませんので……」


 ロッド王子に声を掛けられた百合は折角の親子水入らずの旅に邪魔が入って、本来であれば自分がいるはずの場所、今村の話し相手のポジションにエメリア王女がいることが気に入らないので単刀直入にそう言ってのけた。


 それを受けてロッド王子は承諾し、頷いた。


「モナルキーアの伝統として、王位を継承するにあたって国難を乗り越えるという義務があるのはご存知ですか?」

「……えぇ、まぁ一応存じております……確か、今代の女王はフェデラシオンとの外交摩擦を乗り越え、国に安定をもたらしたと……」

「良くご存知ですね。流石です……」


 今村はどうでもいいと携帯でゲームを始める。そんな態度に不快感を覚えたエメリア王女が注意しようとして百合の殺気に当てられたりしながらもロッドの話は続いた。


「此度の国難……それは、国に特色がない。ということです……技術・魔術・観光に学問……そのどれをとってもこの国は他国に劣っている……資源国として一応国は維持できていますが……それでも、これから先のことを考えるには足りない……」


 芝居掛かった動きだなぁ……と思いながら今村はそれを冷めた目で見つつ酒をすべて飲み干す。


「ですから、私は自らの足で様々な場所を調査し!実際に見ることで国興しの力となる物を手に入れたいと思っています。その為には王族が来るからということで飾り立てられた文化など不要!少数精鋭で、本物の生活を見たい……ですが普通の護衛だと、王族としての責務などを盾に父上も母上も許可を出してはくれないでしょう……ですので、なにとぞ。あなたのお力をお借りしたい!万夫不当のその力を見せれば、出立の許可を頂けると思います!どうか、ご助力を……」


 熱弁をふるう王子の言葉が切れた所で百合は今村に尋ねた。


「えぇと、お父様……どうしましょう……?」

「まぁ、行くだけ行ってみましょうか。スケジュール的にそのくらいの余裕はあるでしょうし。」

「わかりました。」

「忝い!」


 承諾に喜色満面になる王子と共に今村と百合はモナルキーアの王城に向けて移動を開始した。










「お~……?モナルキーアって、激寒だね……」

「間違えて南極近くに来ちゃったみたい……」

「ほくじょーしないと!」


 ザギニの占いで適当にモナルキーアに来ていた今村の子どもたちは南極大陸の縁に居た。


「いや、寒いですね兄上たち……ここら一帯、燃やし尽くしましょうか……?」

「りゅーいちくん。そんなことしたらヒカリがサラ母さんに言いつけるよ?ヒカリまで怒られるのヤだし。」

「いや、そんなことよりさっさともう少し暖かいモナルキーアに行こう。っていうか異常に寒いなぁ……」


 フォンの息子であるアズマがそう言って身を震わせるとフィトの娘の華凜が華で嗤った。


「ふっ。ナンジャク……」

「あぁん?華凜は太ってるから寒くないんでしょ?ボクとかみたいに普通の体型の悩みはわかんないよね?」

「違いますー華凜別に太ってないもん。アズマが筋肉なさすぎなだけ~後、華凜の能力で寒さを押し付けてるんですー」

「何してんだコノヤロー!寒いじゃねーか!」

「やろーじゃないもん。べー」


 南極でも対して変わらず元気な子どもたち。一人ザギニだけ占いを続行して無言だが、白崎の息子の優也はふとあることに気付いてオルディニの秘密回線に念話を繋いでみた。


『……はい?』

「あ、あの、お父さんに、代わって下さい。」

『……誰ですか?』

「だから、お父さんです。」

「優也馬鹿だな~。父さんの名前を言わないとダメなんだって。ボクがやるからどいて。」

「え~ぼくでも出来るよ。」


 優也とアズマが小さな争いを始めるので仕方ないとばかりに日香理が念話を引き継ごうとして優也とアズマの争いに巻き込まれる。


 そして、オルディニがキレた。


『念話を急に何回も切り換えられたら頭痛いって、念話、する相手、考えてから念話かけろ馬鹿ガキども……!こっちは、隠蔽とか、忙しいんだ……!取り敢えず念話掛けて来たお前、通話禁止な。』

「えぇっ……」

『二度とかけてくんな馬鹿。』


 そう言って一方的に切られたので優也は涙目になった。それを見て華凜がアズマを非難する。


「あーアズマのせいだー。ひどー」

「……こ、このくらいで、キレる方がどうかしてると思う……仕事なのに。」

「仕事の邪魔すれば怒られるに決まってますー」

「こ、この……」

「……王都。あっちに行けば道が開ける……」


 極寒の地でも占いを続けていたザギニがそう言うと龍一がそれに乗っかり事態の収拾に努める。


「ここで喧嘩しても、何も始まらないから行こう皆。」

「チッ……」

「あー逃げたー!」

「華凜ちゃん止めなって……」


 海の上を走りながらも喧嘩しながら子どもたちもモナルキーアの王都へと移動を開始した。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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