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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第三章~異世界その1~
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7.内政計画

「…どうしよっか。」


 今村は今回の敵であるローゼンリッターの弱さに困り果てていた。民心は離れているし、兵の練度も低い。指揮官は無能。戦闘よりも事後処理の方が大変なのだ。今、今村の目の前には前にここを治めていた悪徳貴族たちの負の財産が大量に残されていた。


「こっちは財政破綻してるし、あっちは農地の損傷が酷い。後は?民の年齢層が低過ぎなのと高すぎな土地、それに貧困!…マジで戦争どころじゃねぇ。」


 と言うことで今村は改革をすることにする。しかし、今村の独断でやるわけにもいかないので会議を開くことにした。











「と言うことで第一回異世界改革プロジェクト実行委員会会議を始めます!まずこの辺りの土地は連作障害を起こして死んでいます。これについて意見をどうぞ。」

「…どうにもできないと思うです。土地を休めたら作物がなくなって改革の前に死んじゃうですから…」


 ルゥリンが暗いテンションでそう言う。それに対してルカが明るく反論する。


「お師匠様ならどうにかできるはずです!何か考えがあるはずですよね!」


 今村は渋い顔をした。小野が手を挙げて発言する。


「いくら今村でも「様をつけろ不敬者!」…今村様でもできることとできないことが…「何でもできるに決まっておろうが!」…」


 だがその発言はもの凄く邪魔された。今村は頷いてその邪魔している人物を見て言った。


「うん。ローシ五月蠅い。」

「失礼いたしました!」

「うん。良いから五体投地をやめろ。後呼んでおいてなんだが出てけ。」


 今村が端的にそう告げるとローシはすぐに出て行った。今村は何事もなかったかのように進める。


「…で、他にいい案はないのか?」

「…土地の損傷が酷い地域には今回の敵兵の死体を灰にしてばら撒くというのはどうですか…?」

「ん~どこから損傷が酷いって認定するかで暴動が起きるだろうし…灰で済むほど簡単なレベルの損傷じゃないんだよな…他に案はないか?」


 祓の意見も却下して今村は周りを見渡すが誰も今村と目を合わせない。


「可哀そうですが…全員救うことはできないです…」


 ルゥリンの暗い呟きがその場に良く通った。今村は溜息をつく。


「はぁ…じゃあ仕方ない。フェーラルスライムに今回の戦争で殺した敵兵の死体を肥料にしてもらうか…足りない分は空気中の魔力で補うとして…」

「できるのかよ!」

「流石お師匠様です!」


 突っ込む元同級生の一人美川と無条件に賛辞を贈るルカに対して祓は疑問の声を上げる。


「…それができるなら聞かなくてもよかったのでは…?」

「あー…なるべくこの世界にあるもので改革したかったからな…それに魔法で助けると楽して後々使えないし、一回助けると助けられて当たり前になられても困るしな。」


 バツが悪そうな顔をして頭を掻く今村。そして次の議題に移った。


「これは賛成か反対かを聞きたい。この辺り、人口の偏りが酷いんだ。それに数も少ない。全部の城の人口を統合をしてようやく12万人位だ。城の規模に全然あっていない。」

「…成人男性の殆どが徴兵されてたですから…それに女性は貴族に手籠めにされて殺されたり…」


 ルゥリンは暗い声で再び言う。今村は続けた。


「あーまぁそれに食糧問題とかな。これに関しちゃ流石に手を出す。…冥界に行った時に変な木があって抱き締めると何故か実を出したんだが…その実を調べたら色々凄かったからそれで何とかなる。」


(まぁ実用したことないから実験も兼ねて…)


「…っと話が逸れたな。で、人口の件なんだが…この辺の城を全部ぶっ壊して真ん中に新しい城を作ってそこに全員移住してもらいたいんだが…賛成か反対か。」

「…質問良いか?」


 元同級生の一人、美川が手を挙げた。


「まず、城ってそんなに簡単に壊せるものか…?それに崩して作るって…」


 その問いにはタナトスが答えた。


「俺らが訓練した兵士たちなら…まぁ一日もあれば解体と建築位はできるだろ…で、俺から大将に質問。城の設計は俺がしてもいいか?」

「いいぞ。」


 「プラモデルかよ…」と小さく突っ込む美川を置いておいて、話は進んだ。


「さて、賛成か反対かを採決取ります。賛成は?」


 小野、タナトス、蜂須賀、祓、美川、ルカが手を挙げた。


「ルゥリンは反対か?」

「…どうなるのかわからないです。それに…領民の方たちもみんなが賛成じゃないと思うです…」

「それは知らん。来ない奴は放っておく…早めに来たやつは特典つきだけどな。さぁて明日の朝から改革始めるか。」

「え…連戦終わったばかりですよ…?」

「知ったことか!大体この程度で疲れるほど軟な訓練してねぇよ。じゃ、皆さん解散してお休み。あ、タナトスは城を造る打ち合わせね。」

「おう。」


 全員が席を立った中今村はタナトスに声をかける。タナトスが軽く頷くのを見てルカが今村に寄って来る。


「お師匠様!私は!?」

「…お前も解散してよかったんだが…まぁいいや…各国回って高札立てて来い。城壁はそのままにしておくが、城は崩すってな。」

「了解であります!行ってきます!」


 今村は特に頼むことでもないんだがな…と思いながらルカに用件を頼むとルカはこの場から煙のように消えた。それを見た祓も今村に指示を仰ぐ。


「先生…私は…?」

「…解散してよかったんだが…まぁ手伝うってんならこの場に残ってろ。城の設計終わったら外行くから。」

「今村!私は?」

「寝てろ。」


 小野の発言は切って捨てた。魔力量も多くないし、特別訓練を受けたわけでもない元同級生たちには無茶をさせられないからだ。だが、彼女には不満だったようで噛み付いて来た。


「何よ!手伝うって言ってるじゃない!」

「あー…一応力仕事ぐらいならできるぞ…?」


 美川が小野の手助けに回る。今村は苦笑いを浮かべて頭を掻いた。


「…明日…城の建築の時に警備に回ってもらうから…寝てていい。」

「徹夜でも大丈夫よ!何か仕事無いの?夜食でも作るわよ?」

「あー…」


 今村は寧々と祓をちらりと見た。


「…じゃあ…まあ…何か用事できたら言うから…その辺に座っておけ。」

「分かったわ!」


 ようやく納得させて話を進めることになった。今村はタナトスの方を向いて構想を練り始める。


「…で、どういった造りにする?マジック系の奴にするか?それとも物理トラップ系にする?」

「まぁ空気中の魔力量少ないし無難に物理トラップでいった方がいいと思うぞ。…さて、即死トラップ大目に行こうかそれとも…」

「…魔力確保の道具にしようぜ。生け簀多めの。」

「フム。じゃあ…落下系の奴を大目に…」

「あ、魔力が少ない奴は直で喰った方がいい肥料になるんだよな~…」

「じゃあ、識別ルートをつくるか。」

「あぁ、かかった奴自体の魔力で発動するタイプのやつが良いと思う。魔力ロスも少ないしな…」

「先生…ちょっといいですか?」


 二人の話を祓が止めた。


「…何だ?」

「…お城の話ですよね…?何でいきなり罠の事から…外見とかじゃないんですか…?」

「外見ねぇ…この城をそのまま持っていくからなぁ…防壁についても魔力壁で十分だし…そもそも城まで攻め来られた時点で負けだろ?対応しないといけないのは暗殺者。俺らなら大丈夫だが…帰った後の統治者がどうかわからんからな…」

「そこまで考えてるの…流石今村ね!」


 何故か小野が誇らしげだ。


「…まぁでもこの世界じゃそんなこと考えてないんだよな…バカばっかりだし…タナトスあの二人・・・・は今どこまで行った?」

「…首都まで行ったみたいだ。通過した城下町や領主たちの中で警戒状態の所は全く無いとよ…もうさっくり暗殺しまくって混乱に陥れて乗っ取りたいな。」

「駄目だ。それじゃ民心が掴めない。非効率的だが派手に勝った事実もいるんだよ…」


 今村は溜息をついてタナトスの魅力的な案を蹴っ飛ばす。そしてその後、会議は夜が明けるまで続いた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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