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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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22.白崎さん

「えー……タナトスとかの子どもじゃねぇのかよ……」


 しばらくして慈母の顔でお腹を労わるアリスに対して今村が言った言葉はそれだった。


「……何で、そんな、変なことを考えつくのか……私の頭じゃよくわかんないけど、ひとくんの子だからね?氣を見て分かると思うけど……」

「そんな生まれる前から第2世界最強レベルのあんたと別に存在してるって分かるくらいの強力な氣なんて見なくても分かる……」


 何か疲れた今村はそう言って溜息をつくが、そんな今村に連絡が入る。どうやら白崎が目を覚ましたようだ。


「……全敗……己は結構知ってるが……敵のことを知らなさ過ぎたか……」

「失敬な。お姉ちゃんたちはひとくん第一で考えてますよ!敵とか言わないでほしい……けど……うぅ……ごめんなさい……」


 今村の冷たい視線で色々とやってしまっていたことを思い出してどんどん自信がなくなって行くアリスを尻目に今村はこの場所から移動しようとして止まる。


「クワトロシスターズ。」

「はい!」

「呼ばれて参上!」

「呼ばれなくても必要とあらば参上!」

「我ら仲良し、ヒトシ様が下僕機械4姉妹!」

「「「「クワトロシスターズ!!!!」」」」


 今村の呟きレベルの声に対して大声で宣言しながら現れ、決まったとばかりにポージングを取る4人に今村は特に突っ込むこともなく告げた。


「あれの世話。」


 そんなそっけない態度に4人は再び騒ぎ始める。


「冷たい!」

「でもそこがいい!」

「また孕んでる……女の子ですね!」

「じゃあ絶対安静ですよ!」


 騒がしい4人の登場に最初は驚くアリスだが、その正体が今村の創ったナニカであることが分かると為すがままにされる。


「それじゃ、俺は行くところがあるから後は任せた。」

「「「「Yes,my master!」」」」


 サムズアップをして見送って来るクワトロシスターズに後のことは任せて今村は白崎の下へと飛んで行った。










「……チッ……おめでとー。」


 到着すると白崎は少々疲れたようにしておそらく術式で創ったであろう椅子に腰かけていた。それを見て気のない祝福の言葉を投げかける今村に白崎は苦笑しながらその言葉を受け取る。


「ありがとう。」

「んで、一応言っておくが……ここで終わっておいた方がいいぞ?今なら何か欲しい物に変えていいから。金も、地位も、名誉も、それこそ世界まで取り扱ってるから言ってみな。」


 その言葉に白崎は少し悩む素振りを見せた。今村は押し時と見るが、白崎はそれより先に言った。


「……あなたの、今村くんの愛が……欲しい……って、これ自分で言っておきながら恥ずかしいわね……コロルはよく平然と言えるわ……」

「俺の愛ねぇ……どこにあるんだろ?あんまり持ってないからどこかに落としたんだろうなぁ……見つけたら1割あげる。」

「……そうね……」


 白崎は一拍置いて今村に言った。


「それで、赤ちゃん……」

「……お前は……んー……どっちがいいかな……まぁ無難に『生命生成』かな……マキア程じゃないから『カーレリッヒ』形式で正に寄らなくていいし……負に向かわせることも…………どうした?」


 今村はそこで白崎が固まったまま動かないことに気付き、声をかける。その声で白崎は目を覚ました。


「……そうよね、あなたそういう人だものね……」

「何だよ。……あー、アレか、セックスか。」


 今村がそう言うのを聞いて白崎は少し躊躇いながらも頷いた。


「……まぁ、平たく言えばそうよ……しない……みたいね……」

「そうだな。」


 僅かにがっかりして見せる白崎のことを意識的に無視して今村は彼女に術を掛けた。


「終わり。……それでお世話係だが……」

「へ?……あぁ、そういうのに気を付けてくれるの……」

「森羅万象破壊丸の乗組員の奴らで良い?」

「嫌よ。」


 白崎は笑顔でバッサリ切り捨てた。すると物陰から黒光りする筋肉を魅せつけながら男が現れた。


「へいへい!そう言われてももう来ちまってんだぜ?俺らとあんたの仲じゃないか。仲良くしようぜ?」


 白崎が出た……と言わんばかりにうんざりした表情で彼を見るが彼は怯むこともなく笑顔で白い歯を見せつけた。


「おい、まだ呼んでないんだが……」

「ボス!クワトロシスターズの奴らは呼んでおいてワンマンブラザーズの俺らを呼ばないなんてことはないだろうと思ってスタンバってましたぜ!」


 今村の言葉も苦にした様子を見せずにその男、ジョージがそう言うと物陰から更にナンシーとマイケル、そしてバーバラの3人が現れた。


「機械組に負けてられないんでね。式神組も行きますぜ!差し当たって……」

「母乳が出るかどうか不安だから豊胸から始めましょう?」

「おいおい、何十年かけても無駄だろう?そんなことをしてる暇があったらさっさと粉ミルクにした方がいいに決まってる。」

「……今村くん。」

「おう。」


 目を伏せてイライラしている白崎より先に今村が動き、4人を『週刊 筋肉大冒険』の本の中に戻した。


「……あれ、イラッとくるのよね……」

「まぁそういう存在だから……妊娠中にはおすすめできない。」

「じゃあ何で最初訊いたのかしら……?」

「いや、案外気に入ってるかも知れないし……それに、仕事だけはきっちりやる奴らだからな……」


 深呼吸して落ち着く白崎の背中を撫でながら落ち着かせようとして逆にドキドキさせている今村は逆の手を顎に当てて頷いた。


「ここは祓とかにしておくかな……あいつに任せて大丈夫かね?八つ当たりとかが心配だったら別の誰かを呼ぶが……」

「……多分、大丈夫よ。お気遣いどうも。正直、術があるから流産の心配もないし動きがどうなるってこともないから別にいいわよ?」


 そう言って軽く流す白崎に今村は色々と言おうと思ったが止めた。


「じゃ、お前に任せるけど……」

「うん。あ、後、名前、一緒に考えてくれる?……いや、その前に部屋を掃除しないと……じゅ、10分後に、部屋に来て?そこで一緒に考えましょう?」

「……シェイム、芽衣。」


 今村の一言で音もなくこの場に二人の女性が現れた。そして、今村は続ける。


「白崎のサポートを。上げ膳、据え膳レベルで。」

「はい。」

「分かりました。」

「気を遣わなくても……」


 遠慮をしてくる白崎に今村は軽く真顔で告げた。


「お前が気にしなくてもこっちが気にする。本当に邪魔だと思ったら言え。兎に角体を大事にしろ。10分後にはきちんと行くから、あんまり激しく動かないでこの二人に任せること。」

「……分かったわよ。」


 心配されて、初めての経験では強く反論することも出来ないので白崎は銀髪の美少女エルフと黒猫耳美少女に連れられて自宅に連れて行かれた。


 それを見送り今村は呟く。


「……はぁ。……あ~全敗した……まぁ、一応……俺の要素だけを抜いても子どもたちの存続は出来る術式は創れるから挽回は利くけど……リソースを改造に回し過ぎてるかなぁ……?まぁいいか。予定より大分早く済みそうだったが子どもが15歳になるまでは一応生きて面倒看ないとな……」


 この後があるという感覚を持って追い詰められた相手と対峙するとダメなんだよなぁ……と思いつつ特に用のないこの場所から今村は撤退した。




 もうすぐ暮れます。1年間お疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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