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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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21.アリスさん

「……あ~嫌だなぁ……」


 今村は白崎相手にも負けが決定したので遣る瀬無い気分になっていた。


「負けっ放し……はぁ……あ~嫌だなぁ……」


 そう言いつつ今村は目の前にいるアリスを見る。彼女は居心地悪そうに顔を伏せていた。そして今村が黙って静かになると顔を上げる。


「ご、ごめんね?でも、負けたくないのはお姉ちゃんの方だから……」

「俺の方が負けるの嫌い。」


 今村の言葉にアリスは苦笑して否定する。


「……いや、それはないかなぁ……だって、お姉ちゃん失敗したらひとくんとのえっちを諦めないといけないって……しかも、子どもまで諦めるんだよ?人生の3分の1を失うようなものだし……」

「じゃあ残りの3分の2で我慢しろよ……」


 そう言われるとアリスは期待を込めた視線を今村に向けた。


「ひとくん、私とずっと一緒に居てくれるの……?永遠に……?『契制約書』にきちんと明記して、あらゆる物に誓う結婚をしてくれるの……?」

「仕方ない。始めるか……白崎が起きるまでの短い時間で蹴りを付けないといけないからなぁ……単純に知恵比べでいっか。」


 さらりと流されてがっかりするアリスだが、続く今村の言葉を聞いて表情を強張らせる。


「……る、ルールは……?」

「互いに質問して、3問答えられなかった方が負け。」


 本気で知恵比べをされると勝ち目が全くなかったが、これならまだ何とかなる可能性が出て来たのでアリスは表情を元に戻した。


「じゃ、先攻は……まぁどっちでもいいが、俺から行くか……n,e,z,d,vと来れば次に入る文字は?」

「……fだね!ドイツ語の数の単語の頭文字!」


 今村はアリスの即答に驚いた。


「へぇ……答えられるとは思わなかった。」

「ひとくんが読んだ本はその後で大体読んでるからね……それじゃ、次はお姉ちゃんの番だね。お姉ちゃんのバストサイズは何でしょう!」

「知るか!」

「えっ……?何で……?」


 心底不思議な顔をされるとは思っていなかったので今村は引いた。


「今日のひとくんのチェストサイズは88でしょ?」

「何で知ってんだよ……」

「好きだから。」

「理由になってねぇ……」


 今村は普通に困った。これでは知恵比べじゃない。そんな今村を見てアリスはにこにこしながら言った。


「触っても、いいよ?」

「痴女かよ……後、普通に嫌だ。」

「違うよ。乙女だよ。ひとくんにだけ大胆になるのです。」


 ドヤ顔で豊かな胸を更に張るアリスに対して今村は面倒になったので魔眼を使おうとして、止めた。


「……何か変態っぽいし……『呪式照符』もなぁ……使いたくない……」

「……ちょっとは興味持ってくれないとお姉ちゃん悲しくなるんだけど……」

「知るか。……何かもう面倒だしどうでもよくなって来たなぁ……一先ず、今回は答えられなかったことにしていいけど次から自分の体に関する問題はなし。」

「……アンダーが58で、トップが80ね?Eカップだよ。」

「至極どうでもいい……って、流し掛けてたけど細過ぎじゃねぇの?大丈夫?生きてる?」

「うん。生物だった時はね、頑張っても60㎝を割ると不健康な感じになってたけど……神様って凄いね。ちゃんとしてるでしょ?レジェクエの洋服だから服の上でもわかると思うんだけど……見る?いや、見よ?」


 アリスはそう言って服を捲り上げようとするので今村はそれを止めて次の問題に行った。


「……摩竭受まかつ大魚の生息地は?」

「第2世界におけるウルの地球の大焦熱地獄の木転処のマグマの川の中!」

「……正解……よくもまぁ辺境地のことまで……」

「ひとくんがよく遊びに行ってるから……」


 またも普通に答えられたことに驚く今村。そしてアリスの方も続けて質問してくる。


「ひとくんとお姉ちゃんの記念日はいつでしょう!?」

「……知るかぁっ!そんなもん作った覚えがないわぁっ!出任せ言ってんじゃねぇよこの馬鹿!『審偽眼』!」


 今村は今急に作った記念日のことについて看破しようとして彼女の思考にドン引きした。


「え、マジで記念日とか作ってんの……?俺知らないんだけど……」

「うん。勝手に祝ってる。」

「……サイコじゃん……」


 光の女神なのに闇の深いアリスから今村は少しだけ距離を取る。アリスは不思議そうにその分だけ詰めて来た。


「どうしたの?」

「……これ、俺じゃなかったら逃げ出してもおかしくない案件だからな……?まともな頭してる奴なら負の神でも逃げるよ。」

「何か問題が?」


 アリスは首を傾げる。それに対して今村が反論しようとする前に、アリスは続けた。


「私、ひとくんが許容できるなら別に他の誰に何と思われてもどうでもいいんだけど……?」

「サイコパスめ……記念日は毎月14日。それと、あんたの世界で俺が生まれた日。後、あんたの世界から俺が出て行った後、貴様が神化して再会した日とこのゲネシス・ムンドゥスで再会した日……それに……つーか多いな……」

「知っておいてほしかったから問題に出しました~!最近ひとくん話聞いてくれないから……」

「……最近、ここに、居たか?」

「居たよ!」


 憤慨するアリスに今村は首を傾げて少し外を見上げながら頷いた。


「興味ないことばっかり言ってたんだろ。認識外だな多分。」

「酷い!ぎゅってさせなさい!」

「意味が分からん……」


 アリスは問答無用で今村を抱き締め、顔を執拗にその豊満な胸に埋めさせ摺り合わせる。


「さて、そんな事より次の問題だ。」

「あ……むぅ。」


 液状化してその拘束から抜け出した今村はアリスに次の問題を出す。その際に少しだけ違和感を覚えたが僅かな物だったので捨て置き、アリスに次の問題を出す前に1つだけ言っておいた。


「遊びは終わり。じゃ、行くぞ?『確率視』……アリス。お前のことを知っている内、本気であんたのことが好きな奴の名前を30名、どーぞ。」

「え……?」


 アリスは困惑する。それに対する今村は微笑を湛えていたが、その表情はすぐに変わることになった。


(……確率が、いやに乱高下してる……?おかしいだろ……さっきまで0%だったのに変えられてる……)


 すぐさま介入を疑う今村だが、そんなことをしても誰にとっても、何のメリットもない。仮にそれが介入だとしても得をするのはアリスだけだ。

 それならば、何らかの理由で彼女が自覚していない能力を行使していると考えた方が自然だろう。


(……こいつの能力の殆どは解析済みだから……怪しいのは愛氣……ブラックボックス扱いでずっと放置していた結果、非常識フォンからも非常識と言われた無限の愛情ってやつか……あまり解析したくないし、時間もないからなぁ……)


 答えられる確率が二桁に到達した瞬間、アリスが答え始め、最終的に良い顔はしていなかったが答えきるアリスを見て今村は舌打ちをした。


(こりゃ、不味いかもなぁ……本気で罠に嵌めないと……)


「じゃあ、次は私から……」


 そこで、アリスは急に言葉を切ってにっこり笑った。光の神、正の神としては不自然なまでの妖艶な笑みに今村は訝しげに声をかける。


「おい、」

「あのね?」


 だが、アリスに機先を制されて今村は少し待つ。アリスは続けた。


「子ども……ひとくん、今回えっちで子作りしてくれないんだってね……?」

「そんな契約を交わした覚えがないからな。それが何か?」

「ううん……でもね?それじゃちょっと、一生言い寄らないって条件には足りないから……私もちょっと足りなくても、子ども、作っていい?」

「どうぞどうぞ。」

「作った後も、変に突き離さないでね……?」

「勿論。」


 何だ、やっと別れの言葉か。卑怯なまねばかりでようやく飽きたか……別れた後はできればタナトス辺りの子どもでも作ってくれないかなぁ……などと今村は思った。

 

 それに対し、アリスは、にっこり笑うとお礼を言った。


「ありがと。言質は貰ったからね……?じゃあ、はい。」


 次の瞬間、アリスの体内に別の氣が混じった。


「……さっきね、ひとくんが液体になった時……髪の毛の部分をちょっと集めて飲んだの……イヴさんの例を参考にして……出来たよ。」

「……うっわ。」


 今村はそれしか言えなかった。




 

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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