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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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20.マキアさん

 ゲネシス・ムンドゥスに戻って、今村は自宅の荷物を持ってからフォンとフィトがいる場所へと向かった。


 しかし、そこには誰もおらず、子どもたちを交流させつつ早期教育を始めますと言うメモ書きが残されていただけだった。それを見て今村は呟く。


「……あんまり早期教育を始めると頭の発達に心の発達が追い付かなくて心が捻じ曲がったりするからよろしくないんだがなぁ……」


 幼少期から自分で何もかもをしなければいけなかったので、無駄に様々なことを発達させて、捻じ曲がった張本人はそう言ってこの場では特にやることもなくなったので屋敷へと戻って行った。


「あ~……眠いなぁ……」


 そんなことを呟きながら屋敷の門まで戻ると、百合が出迎える。


「あ、お帰りなさいま……」


 しかし、その声は途中で遮られた。けたたましい音が今村の懐から鳴り響き、屋敷を軋ませ、目の前にいた百合を吹き飛ばしたのだ。


「……?何だ?」


 今村は百合を難なくローブで確保して「白魔法」で回復させ、保護した後に首を傾げて原因を探る。


 だが、そんな必要はなかった。


「……これは……」


 何の能力を使わずともわかる圧倒的なまでの淫靡な気配。それがもの凄い勢いでこちらに向かっており、それは近づくにつれて濃厚さを増している。

 今村はそれを把握した瞬間、音の原因となっているマキアが発情したことを知らせるベルを握り潰した。


「あの、ジャリがぁ……!」

「来ましたよ!あぁぁあぁん♡!生先生!久し振りの先生!≪自主規制≫が捗りますぅっ!イきましょう!ふぁん!また、来る、キちゃうぅっ!」


 光速を越えたマキアの到着を見て今村は苦々しい顔で出迎えるが、そんなことなどお構いなしにマキアは最初からフルスロットルで騒ぎまくる。


 取り敢えず、今村はそんな彼女に「自聴他黙」をかけてローブでその場に縛り付けた後、静かになるまでしばらく待つことにした。


「……あ、う……ど、どうしたんですか……?」

「……変態の所為で、少し大変だっただけだ。休んでていいぞ。」

「はい……」


 百合は今村にそう言われて音の波動によって軋みはしたものの、すぐさま元通りになった屋敷の中へと入って行く。その代わりに、中から眠そうに目を擦りながらフィトがふよふよやって来た。


「お帰り~……ところで~何~?うるさいよ~……?」

「……お前、子育て……」

「任せてってね~言われたから~……」


 今村の言葉を聞きつつフィトはその奥にいる変なマキアを見て頷いた。


「何だ~……あれなら~仕方ないね~……」

「にゃ、お帰りにゃさいませ今村さん。今、お屋敷の周りのお掃除終わったところにゃ……ぁ?にゃんか、変にゃ匂いがするにゃ……甘酸っぱい感じにゃ……?」


 諦めて部屋に戻るフィトの代わりに出て来たのはメイド服に身を包んだ黒猫耳美少女、マイアだった。その後ろからミーシャも出てくる。


「今村さん!やりましたよ!私、とうとう『レジェンドクエスターズ』第3世界統括総長になりました!」

「……お前、どこを目指してんだ……?そんなに仕事好き?」


 今村は何となくミーシャに少し厳しいながらも本当は優しい姉のイメージが、マイアに甘えん坊の妹というイメージが出て姉妹に見えたが、すぐにそれを打ち消して……一応、百合の花を召喚してミーシャに渡しておいた。


「あ、どうも……私が好きなのは仕事じゃなくて今村さんです。……ところで、皆さん、子どもを頂いている……と、聞いたのですが……私も、その、昇進祝いに、花束とは別に、その……」

「皆って誰?俺はそんなことしてないんだけど?」


 今村の答えにミーシャは首を傾げた。


「……そう言えば、皆って……誰ですか?」

「お前が誰のことを聞いたのかなんざ俺が知るか。そんなことより、ウチに来ると仕事を渡されるけど……いいのか?」

「え、はい。」


 ミーシャの答えに今村は少し微妙な顔をした。仕事を嫌がって逃げ帰って欲しかったのだが、彼女は普通に仕事を受け取る姿勢を見せたのだ。


「私が頑張ることで、今村さんが楽になればそれだけで私は嬉しいですからね……幾らでも頑張りますよ!」

「お前……体壊すなよ……?」

「大丈夫です。今村さんがいる限り、私は大抵のことであれば何でも出来ますから。……あ、すみませんがそういうの今は止めてもらっていいですか?いいことを言ってるので。」


 何でもって言ったね?と言う顔をした今村に真顔でそう告げるミーシャ。今村は軽く舌打ちをして出しかけた呪具を片すと後ろからマキアに抱き締められた。


「……何だ?どこ触ってやがる!」


 ホールドから股間の辺りを探り始めるマキアを今村は後ろ蹴りで蹴り飛ばそうとするが、今村の足はマキアの体を何の抵抗もなく貫通した。


「おい……」


 「自聴他黙」の効果で今村には何も聞こえないが見ただけで分かる恍惚の表情に今村は結構引いて足を抜く。


「……この甘酸っぱい匂いって……もしかしてこの人のアレかにゃ……?」

「マイアちゃんはちょっと早いから逃げましょうね~」


 股の辺りから雫を垂らし、地面に糸を引いているマキアを見せないようにマイアの目を塞いでミーシャはこの場からマイアを連れて逃げて行き、自分だけ見学に戻ってくる。


「……『自聴他黙』解除。」

「シましょう!準備は万端です!激しく、理性など打ち壊して!子作りしましょう!」


 今村は溜息をついて無言でマキアの方に歩いて行く。物陰からそれを見るミーシャは期待に鼓動を高鳴らせながらそれを集中して待ち、マキアは妖艶な笑みで服を捨て去るとその場にベッドを形成し、手をついて尻を突き出した。


 そんなマキアを見て今村は少し思案するような顔になるとその場で停止して頬を掻きながら術式を行使した。


「…………これで行くか。『カーレリッヒ』」

「えっ。」


 今村の呟きが風に乗って聞こえた瞬間、マキアは間抜けな声を漏らした。そして体にぴっちりと合わせられた服を着せられる。


「…………えっ?あ、あの!」

「何?」


 マキアは踵を返して屋敷に戻ろうとする今村を呼び止めるが現状に頭が追い付かずに言葉が纏まらない。


「あの……その……単刀直入に尋ねますけど……セックスは?」


 言葉が纏まらなかったのでマキアは直球で今村に尋ねることにした。そんなマキアに今村は平然と答える。


「しないよ。」

「えっ?何で?」

「する必要がないから。」

「えっ?で、でも、普通……」

「俺に普通を求めるな。例外者だぞ?」


 今村にそう言われてマキアは何とも言えなくなった。


「……なら何であそこまで渋るんですか……」

「本来なら俺の要素を一片たりとも増やしたくもないからな。」

「何かまた酷いこと言ってる……あ~……う~……駄目だ。力が抜けて、何も考えられない……ごめんなさい。失礼します……」


 緊張から不本意な形で解放されたマキアはその場にへたり込んで帰ろうとするが、上手く術式が描けずに戻れない。


「あぅ~……何で、う~……」

「ミーシャ。送ってやって。……ついでに、面倒も見てやってくれ。」

「あ、はい……」


 物陰に隠れていたミーシャにマキアの面倒を押し付けるとミーシャはおずおずと出て来てマキアを回収し、「幻夜の館」へと戻って行った。


 それを確認し、今村も屋敷の中へと入って行く。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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