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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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19.許す

「……何よ。」

「何にも~?」


 行った先ではフォンがフィトに絡んでいた。その周りには【血染め黒兎】ハニバニ、【消血妖鬼】桜花、【破壊魔導姫】マホが薄緑の術衣に身を包んで帽子を被り、マスクを付けている。


「……いや、別にそこまで本気で無菌にする意味は特にないぞ?フォンは風の神だからそういうのに気を遣うかと思ってこの世界に運んだが……」

「別に気にしないけど……気を遣ってくれるのは素直にうれしいわ。ところで他の女と一緒に孕まされて子どもを産むって……まぁいいけど……取り敢えず産むからいいかしら?」

「あ、生まれるよ。」


 1m近い種に内側から皹が入り始め、外に何かが出てこようとする。それとほぼ同時にフォンの体から何かが出てきた。


 瞬間、今村は苦笑しながら生まれると同時に背後に回って自分を攻撃してきた幼児二人をローブで捕獲する。


「放しぇ!じどーぎゃくたい!」

「うったえてやぅ!」

「うっさいぞ、殺神未遂犯……本当に放して欲しいのか?」


 生まれたのは金髪に僅かに緑色を混ぜたかのような髪の色をした男の子と黒色にほんの少し緑色を混ぜたかのような髪の色をした女の子だった。

 その二人は今村に捕まってジタバタしていたが、不意に恐ろしいまでの殺気が世界を揺るがしていることに気付く。


「ふぇ?」

「……しょb「それ以上は、ダメだぞ?」……だってぇ……」

「あはは~……旦那様~甘いよ~?……次は、ないよ?」


 目から一切の光が消えて殺意を向けているのは彼、彼女たちの母親だ。今村が先手を打って何もさせないようにしたが、抱えられている二人は身を竦めて怯えながら呟く。


「な、なんで?こぇ、あいじん並べてこどもうましぇてえつにひたってるくそおやじ……ひぅ!」

「……いい?色々、あるのよ?余計なことに、口を出さない……ママとの、約束よ。いい?」

「華凜も~駄目だよ~?」

「う、うん……」

「……さて、お前ら子どもに殺意を向けるな……」


 今村はお世話係の面子を何とか抑えきって二人に意識を戻す。


「ところで、フィトの娘は華凜って名前で良いんだな?」

「うん~前にね~?いっぱい考えたの~」

「だから……ふぅ。じゃあ華凜、お母さんの所に行きなさい。」


 華凜はおずおずとフィトの方へと行き、触樹で抱えられる。


「わ~おっき~……すぐに~背~抜かれそ~……」

「お母様……小さい……」

「がーん……しょっく~……」


 その間にも今村は頑張って後ろでジタバタして子どもたちを殺……教育しようとする面子を抑えて男の子の方とフォンを見る。


「お前はちゃんとこいつの名前考えてるのか?」

「……考えてた……けど、この子の能力って多分、雷よね……変えるわ。」

「じゃあその間俺は雷神の名前を適当に挙げて行くか……ペルクナ「今言おうとしてるそれ、多分雷竜神の名前だから呼ばない方がいいわよ?」……マジか?あれ?お前、竜神様の知り合い?」

「……風神、雷神としての付き合いがあっただけよ。まぁ、知っての通り私はあなたに能力を結構渡したからこんなに弱体化してるけどね。」


 そう言った後は、再び名前を考えることに戻る。


「武雄……とか?仁が居た国の神話を考えるに……」

「……建御雷之男神たけみかずちのをのかみのことか?」

「そう、それ。長いから武雄。」


 今村は嫌そうな顔をしている子どもを見て首を振る。


「嫌みたい。」

「じゃあヤガミかな……八雷神からとって。」

「……腐り果てた伊邪那美イザナミの体から生まれた奴じゃん……」

「我儘だな……漢字にしたい……九天応元雷声普化天尊きゅうてんおうげんらいせいふかてんそん……は長いし、そのまま過ぎるから……」


 ぶつぶつ小声で考えるフォン。それに対して今村は抱えている子どもに適当な名前を提案してみた。


「レイ、エクレール、アレク、カエサル、イヴァン、ライカ、アズマ「アズマがいい!」……ここから俺が考えた名前に行こうと思ったのに……」


 母親譲りのネーミングセンスだな……と思ったが、本人が選んだのだから文句は付けない。今村は続いて漢字をどうするか考える。


「色々あるが……アズマにするならもうシンプルに雷でアズマにするか?何かそこの奴が暴走しようとして来てるし……」

「うん。あんまり古めかしい名前は嫌だけど、皇帝でカエサル読みレベルの先端を走るのはちょっと……」

「雷帝で、イヴァン読みはどうかな?」


 追い打ちをかけてきたフォンにアズマは諦めて今村の方を見た。


「……父さん。」

「諦めろ。こういう奴なんだ……」

「……これ、顔が悪かったらぼく、母親でもぶん殴ってた……」


 何となくがっかりしたような顔になるアズマに苦笑しながら今村はフォンにアズマを渡す。


「……思ったより、重い……」

「取り敢えず、きちんと抱えててくれ。……俺はこいつらを連れてどこか別の世界に行ってくる。」


 今村はそう言って封印術式を掛けておかないと殺気だけでこの場にいる二人の子どもを殺しかねない面子をローブで持ちあげて見せた。


「こいつらをどっかに連れて行かないとこいつら放っておくとアズマと華凜を殺しかねないからな……」

「……はぁ。もう少し付き合う相手は考えなさいよ……そんなのと係わってたらそうなるのは当然でしょ……」

「……普段は良い子なんだよ。今日は、たまたま。ほら、行くぞ?」


 納得がいかず、不満気な面々を連れて今村は一度、ゲネシス・ムンドゥスへと戻って【狂危きょうき凶瀾(きょうらん)恐厭姫(きょうえんき)】であるアルマを連れて別世界へと飛んだ。















「むー……何で、止めたの……?せーとーぼーえーなのに……」

「アホ、別にいいんだよあれくらい……」


 むくれるバニー美幼女、ハニバニにそう言いつつ今村は全員をローブから降ろして空間を遮断し、ゲネシス・ムンドゥスに戻って子どもたちを殺さないようにした。


「よくないぞー?所詮、有象無象の子どもと違って、あにじゃの代わりはいないんだからなー……」

「俺の代わりはいくらでもいるだろ……それこそ、あの子どもでもなれる……」

「なれない。」

「なれません。」

「なろうとしたらハニバニが殺す。」

「…………何の、ハナシ……?」


 一人話に付いて行けないアルマに【消血妖鬼】こと小悪魔系幼女の桜花が説明をする中、今村が溜息をついたことにマホが怒る。


「わたしはいろんなことにおこってますからね。だいじなかたをころされかかったら、もう、このじょうたいじゃ、ないですよ?」

「止めとけ。今度こそ殺されるぞ。」

「それでも、です。」


 今村をじっと見上げて本当に分かっているのかと言う視線を投げかけるマホに今村は再び溜息をつくしかない。


「はいはい。今度からはちゃんと叩きのめしますよ。」

「ちゃんと、もうにどとはむかおうとかんがえなくなるまで、きっちりやらないとわたしがいきますからね?」


 一応納得してくれたらしいマホはそう言って今村の足に抱きつく。今村はそれを見て一先ず安堵したが、ふと静かになっているアルマと桜花の方が気になり、そちらを見るとアルマの目が深紅に染まっていた。


「おぉおぉぉぉ……あ、アルマちゃ、落ち着いて……」

「む、リ…………うぁあぁぁぁあぁぁっ!許、サナイ……」

「……寝てろ。」


 どうやらアルマは怒りのあまりに暴走モードに入りかけていたらしいので今村はそれを寝かせて少しだけこの場にいる面々の為に時間を取るとゆっくりしてからゲネシス・ムンドゥスへと戻って行った。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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