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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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18.乗り越える

「ちょっとマキアと白崎のところに行くか……」


 期限が迫りつつある二人のいる場所へと今村は行くことにした。動機は勿論。


「邪魔をしに。」


 今村はローブを翻して一瞬で二人がいる場所へと飛んだ。











「…………あ……」

「よぉ、調子はどう?……っと、マキアが何か変だ……」


 今村がその場所に行った瞬間、【狂危きょうき凶瀾(きょうらん)恐厭姫(きょうえんき)】ことアルマが今村の方目掛けて駆け寄るが、今村はマキアの方を見ていた。


「……色魔眼……」


 何故か穏やかな表情で動物に囲まれ、後光が差しているマキアを今村は普段のマキアであれば見た瞬間、どこかの大佐のように目をやられかねない状態になる目で見て、マキアの現状を把握し、軽く驚いて目を戻した。


「ゼロ……凄まじいな……悟りを開いた坊さんでも発情期の猫と大して変わらんと思えるほどの性欲からの離れっぷり……」

「……おや、今村先生……お久しゅうございます。」


 誰だと言いたい口調でマキアに話しかけられて今村は微妙な顔をした。それに対するマキアの対応は口を手で少し隠しながらの微笑。


「ほほ……この状態に、お引きになられているのですか?」

「うん。」


 今村は素直に頷いた。何か気持ち悪いと思ったのだ。それを受けてマキアは優雅に腰を折って謝る。


「それは、申し訳ございませんでした。以前は欲望に塗れてましたので……この変わり様には少し、驚かれるかも知れませんね……」

「……まぁいいや。」


 今村はマキアが深層精神体まで肉体の不浄さを説くレベルに入っているので放置していても子どもを欲しがるような精神ではなくなっていると判断して放置することを決め、白崎の方に目を向けた。

 平常時のマキアであればそれでも絡んでくるだろうが、現在のマキアは少し寂しそうにするだけで再び瞑想に入って行った。


「ところで白崎は何で起きないんだろ?そろそろ廃人になってるはずだったんだがな……」

「……ずっと、ウルサカッタ…………何か、急に…………止まった……」


 今村の呟きにアルマが反応して今村に飛び乗りながらそう教える。それを聞いて今村は原因を調べるために白崎に術を掛ける。


「……原因を調べて、不正だったら……面白いことをしてやろうか……っと出た出た。何だろうか……チッ!」

「…………どーした、ノ?」


 急に顔を険しくして険悪な気分になった今村を見て何か不正をしていたのならこれはすぐに殺そうとアルマが考えていると今村は苦々しく言った。


「いや、俺の顔が出た……」

「……?」

「まぁ気にするな。」


 アルマは今村の顔を見たことで何故不機嫌になるのか分からずに首を傾げたが今村の背中にいると抗いがたい眠気を感じるので若干寝ることにした。


「…………アンシン……」


 そんな安らかな眠りに就くアルマのことなど気に留めず今村は気分悪そうに舌打ちをした。


(……そう言えば、俺こいつに殺されたな……まぁアレ、実際は俺自身の術の問題が色々あって死んだんだが……こいつ目線じゃそうなるわ……)


 自分の顔が写った原因を鑑みて思い当たるのはモナルキーアの王族であるメアリーとダニアンをフェデラシオンに送った後に、刺殺された状況だ。


 それに思い当たる節は別にもあった。


「そう言えば、消滅騒動の時にもこいつが余計なこと言わなければ……的な騒ぎがあった気がする。まぁ、実際イヴの所為で一回死んだし、その時に色々あって四肢捥がれたんだっけ?」

「っ……はぁ……うっ……お、ぇ……」


 二度目の今村の悲惨な生活を視て白崎は泣きながら嗚咽を漏らしていた。そして今村の今世における軽い地獄と修羅場を見て、辛いのは自分ではなく彼なのに何故自分が折れそうになっているんだと叱咤激励して頑張っているようだ。


「……そこは頑張ってしまうと俺の邪魔になるって思わないのか……同情するなら暇をくれ……同情するなら自由を寄越せ!」


 割と真面目にそう思うのだが、現在進行形で色んな人々の悲惨な思い出を視ている白崎には聞こえない。そんな白崎のことを分析して今村はもう起こそうかどうか考え始めた。


(……このタコ、こいつの所為で悲惨な目に遭った奴らの思い出を分析して何をすれば心残りが生まれて死にたくなくなるのかを考えてやがる……それで、本人の欲求とは別の意味でも子どもを手に入れようとし始めたな……)


 どちらにせよ、やることは変わりないらしい。そんな彼女に今村は溜息をつきつつ術を解く。


 現実でも、無言で何か考えている状態のまま動かない彼女は悲惨な物を見てもその程度に変わってしまった彼女には他人の悲惨な人生などサンプルとして扱う以上のものを見せなくなっていた。


「……最初は泣き崩れて吐いたりしてたんだろうなぁ……まぁ吐瀉物なんて出来る前に完全分解させられるように作ってあるからただの胃酸だが……」


 溶けている岩盤を見て今村はそう呟いてどうした物か……と考える。毎回無理だと思っていることをさせているのだが、どうも乗り越えられる。


「……ちょっと、【運命神】の所に行って変な動きがないか確認するか……?具体的にはアホ女神2柱の介入とか……っと?」


 そう計画し、実行しようと「ワープホール」を形成したところで今村は自らの携帯電話が鳴り始めたことを受けて止まる。


「はいよ?」

『あ、もしもし。マホです。なんか、おばさんから「誰がおばさんよ?」……おねえさんからうまれそうなのででんわしました。』

「フォンから生まれる……?まだ早」

『あ、やっぱりおばさんでつうじましたよほら!え、かわる……はい。』『もしもし?あなた、私のことおばさんと思ってるの?』


 電話主が変わったが、今村はそれどころじゃないだろ……と思いつつも一応フォンに答えておく。


「誰がおばさんよってお前が言ってたのが聞こえてたんだよ……そんなことより、もう産まれそうなのか?」

『あぁ、そういうこと……産まれる?えぇ。そうよ……結構、苦しいわねこれ。立ち合いを希望するわ。』

「分かった。今行く。」


 そう言うと通話が切れた。そしてちょっとだけ内心で思っておく。


(おばさんどころかお婆さんだろうが……)


 その瞬間、再び電話がかかって来たので今村は若干びくっとして受信先を見て落ち着いて出る。


「フィトか。どうした?」

『あのね~?種がね~生まれそ~……でね~お腹空いた~……そしてね~』

「あぁもう面倒臭い……要するに種から子どもが生まれそうなんだよな?そっちに行く……ということはアレだから……えぇい面倒な。どっちも呼んでやる……」

『え~何~?』


 のんびりとしている口調で訝しむフィトからの電話を切って今村は両者を別の空間に呼び出すことにした。


(……無菌空間で産ませた方がいいな。ついでに当クリニックは産後は結構なエネルギーを摂ることをお勧めしてるから……違う。あぁもう面倒だ。前みたいに一回綺麗に役に入るか……)


 今村は軽く医師モードに入ることにして誰もいない世界にフォンと彼女に着けた世話係、そしてフィトを飛ばすと自らも体を清めながら飛んで行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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