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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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16.家事ゲーム終了

 全ての料理が出そろった時点で今村が食べる順番を宣言した。


「まず、マイア。次に祓、そしてアリア、その次がサラで、最後が百合。」

「えーっと……虎、スープ、石、紅い竜、そして懐石料理……」


 順番通りに目の前の料理を見て取り敢えず食べられる物かどうかよくわからないといった気分になった。

 祓が出したスープも最初は普通の物かと思っていたのだが時間が経ち、冷めるにつれて発光し始めており、まともな料理は百合の物だけに見えるのだ。


「特に、石って……これ、食べれるの……?いや、こんな美少女が作ってくれたのだったら鋼でも食べることは食べるけどさぁ……」

「アリア、今度サーリクッタの原石を精錬してこいつに食べさせよう。」

「あ、うん。」

「うんじゃないよ!?」


 耳かきに乗る程度の粉末でも水分と触れれば大爆発を起こして星を一つ消し飛ばせるレベルのそれを拳大用意される未来が普通に見えたのでライアーが立ち上がってそれを止める。


「チッ……まぁいいや。じゃあ食べるか。……ぁ?」


 審査員全員の視線が自分に集まっていることを認識して今村は手を止めて睨み返す。


「何だよ。食えよ。」

「いや、どうやって食べるのか……」

「はぁ?……タナトスはまだしも、ミカド……お前、第1世界にもいたことあるだろうが……」

「いや、こんなの見たことないぞ?」


 今村は一応これと似たようなものをミカドの結婚式の時に作ったのに忘れたんだな……と思いつつ一瞬でマイアの物から食べた。

 因みに食べ方はこの料理に込められた魔力に触れるだけでどこからでも美味しさと言う概念と共にそれそのものが流れ込むという物だ。


「ふぅ……複雑ながらも正しい道筋を創り上げ、簡単に到達させると思わせながらも深みを出す……うん。高得点。」

「え、今どうやって食べた?」


 今村は無視した。そして次に祓の作った発光するスープに手を出す。これは普通に飲んだ。


「……ん~……若干、作りに焦りが見られるな……これそのものの味は良いからこそ魔力回路が少し惜しいのが響く。まぁそれでも高得点であることは間違いないんだが……」

「うっま!何だこれ……何これ、何?え、何?ヤバいよな。これ何?」

「シェフを呼べ!」


 諦めてマイアの作った虎を噛み砕いてその驚きの美味しさに騒ぐ面々を余所に今村は続いてアリアが用意した料理を食べる。


「うん……これは、俺の好みは分かってるんだが……うん。いや、確かに俺はこれ好きだけどさぁ……うん……まぁ……俺は多分ここに在る料理の中で一番好き。」

「オイこれ!ヤバいって!うまぁー!ち・か・ら・がぁ~っっ!漲って~来ました~っ!」

「まぁ、美味いッスね。」

「何であんたそんなにテンション低いの!?こんなに美味いのに!」

「いや、俺ってご主人の作った素材で出来たもの食べてるんで結構いいもんばっかり食ってるんッスよ……」


 女性陣から羨望の眼差しを受けて無言で軽く得意げにしているアリアとはしゃぎにはしゃぐ男性陣のことを無視して今村は次に行く。


 次は、サラだ。


「……チッ……」

「ど、どうじゃ……?」

「普通。だが……」


 何となくマズイ気がした。別に料理がマズイと言うわけではない。この場の流れとしてあまりよくない感じがしたのだ。今村の舌ではまだ食べていない百合の料理を除いてダントツで最下位ということをしっかりと認識できる。

 しかし、周囲の食生活が今村に比べてあまり良くないことを始めて知って若干の問題が見られる。


「辛っ!かっら!何これ!?痛いんだけど!?」

「待って、これ部位ごとに味がちがぁぁあぁぁぁあっ!痛い!痛っ!何だこれマジ痛ぇ!」

「……お、これは……辛さの中にもきちんとした味があり、辛味は全体を整えて引き締める感じがいいッスね……しかも次の味にきちんとつながるという……いや、まさに魔法のような料理ッス……」

「し、死ぬ……」

「お、俺でもきついぞ……これ……」


 周囲の声がその問題を浮き彫りにしている。今村の家のペットであるキバですら分かる料理の腕の違いが、他の面々には分かっていない気がするのだ。


「……最後に百合……うん。少し薄めだな……まぁ嫌いではないが……」


 今村が百合の料理を食べている間に他の面々はサラの料理を食べる。


「……あー……何か、田舎の味って言うかな……何だろ……?安心……いや、落ち着く味というか……何か、そんな感じ……?」

「ちょっと嫁の飯食いたくなって来たな……」

「ママン!「これは仁のじゃ!」げふっ……」

「……いや、別に俺のじゃないんだが……」


 ライアーがサラの巨大な胸に飛び込んで回し蹴りを喰らいどこかへと飛ばされるのに突っ込みながら今村は普通に採点する。


(……マイアが15点。祓も15点。アリアが18点で、サラは5点……百合が14点というところだが……余剰分は……まぁ使うのはこれだけでいいか。別に全部振り分けないといけないわけじゃねぇし……)


 点数の振り分けを終えたところで周囲を見る。サラの料理を食べた影響で何故か帰りたくなっている者がいたが、一応百合の料理も食べ終えたところで審査は終わった。


「じゃあ、マイアから……俺が15、ライアーが19、タナトスが20、キバが12でミカドが18か……合計、85。」

「……ところでこれってにゃにを決めてるのにゃ……?」


 マイアの疑問に今村は答えずに次に移る。


「次に祓が……俺は15、ライアー18、タナトスが……20?、キバが13、ミカドが19で……合計85。」

「あの、先生……後でまた作り直して持ってきます……」

「20点になるまでとかは止めてくれよ?」


 祓にそう応じて今村は次のアリアの点数結果を見て盛大に顔を顰め、舌打ちした。


「アリア、俺が18、ライアーが11、タナトスが0、キバが19、ミカドが6の合計が54……なぁ、アリアさぁ……お前この中で一番料理上手いのに何でかなり特殊なのを作るかなぁ……?いや、まぁ……審査員が未熟者ばっかりだったのが悪いんだけどさぁ……」

「分かってくれる人が分かってくれればそれでいいです。……というより、正直父様が美味しいって言ってくれることが目的ですから……」


 採点結果にドキドキしているサラ以外から料理を教えてほしいと言われながらアリアはそう答える。

 それを見つつタナトスなどがあんなもの料理じゃないだろ……と小声で呟いているので今村は後でアリアに万人向けの料理を作らせることにした。


「……で、サラ……より先に百合にしよう。俺が14点。ライアーが……あれ?12点なんだ……タナトスが20……お前こればっかりだな。で、キバが17でミカドも17の合計が81だな。」

「僕、薄味ってあんまり好きじゃないんだよねぇ……」


 ライアーのぼやきも無視して今村はサラの結果を告げる。


「最後、サラ……俺が5点。ライアーが……19。タナトスは20……お前、これ絶対に適当に付けただろ……キバが16でミカド……あぁ?20?お前間違えてない?」


 今村はそう言ってミカドの方に書き直さなくていいか確認する。すると彼は平然と答えた。


「いや、嫁の飯食いたくなるって言ったからにはやっぱ嫁の料理に近いってことだし、なら満点出しとかないと……因みに嫁の飯は全員分の点数を捻じ込むから俺一人で80点!」

「完っ全に尻に敷かれてやがんな……そういうのは自宅に帰ってのプレイだけで十分だろうが……!」


 ミカドは諦めてタナトスの方を見る。


「いや、俺的に全部とても美味しかったって感じなんですけど、一つ明らかに殺傷用の何かが紛れてたから……」

「えぇい馬鹿舌め……」


 今村は次に妙に点数の高いライアーの方を見る。その時点でサラは合計得点の結果に気付いた状態で放心していたところから我に返る。


「勝った……妾は……ぅぅ……」

「おいライアー……テメェ……」

「敢えて一番低いレベルの料理を褒める……これで僕はお手軽にみられるという寸法さ……さぁ、存分に告白しに来ると良いよ!」


 泣き始めたサラに気付かれたことを悟る今村は怨念を込めてライアーを見るが彼は他の面々に無視されていじけていた。


「……キバは、多分妥当に付けたし……不正はアレだからなぁ……しゃーない……おかしいなぁ……確実に勝てるはずだったんだが……」


 連敗を喫した今村は首を傾げながらそう言って会場を閉幕した。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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