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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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15.料理対決

「……まさかここまで来るとは……」

「はぁ……っはぁ……ど、どうじゃ……」


 サラは音楽、洗濯も見事にやり遂げた。……と言うより、マイアが勝手にミスを連発して余ったポイントが流れていた。

 それを受けて今村は非常に不可解な思いを抱いていた。


(おかしい……マイアはあざといが、かなり出来る奴なんだが……少なくとも今日見せた無様な感じは何故……?)


 今村は、サラに勝ち目のない勝負しかさせるつもりはない。つまり、今日呼んだ面々は全員サラよりも家事能力が遥かに高い者、そしてこの近くにいる者だけを抽出して召喚する召喚陣によって呼び出された者だ。


「……マイア?」

「にゃ?」


 今村に呼ばれてマイアはこてんと首を傾げつつとてとて今村の方にやって来て今村を見上げる。そんな彼女に今村は言った。


「……真面目に、やってる?」

「ま、真面目に、やってるにゃ……」


 静かだが怒りが滲んでいるように見える今村に怯えながらマイアはそう反論した。そして今村は目を閉じて頷いた。


「そうか。」


 その一言にマイアが身を竦ませた。そして目を開けた今村を見て更に怯え始める。

 その目にはマイアに対して一切の興味が失われており、感情が全く籠っていない目に感じられたのだ。


「い、いやにゃ……が、頑張ってるにゃ……もっと、頑張るから……ここに、居させてくださいにゃ……」

「いや、急に呼び出した俺が悪い。帰っていいよ。これ、詫びの品。」

「いらにゃいから、お願いします……」


 とうとう野外で土下座までする震えるマイアに今村は何をしてるんだろう程度の興味しか示さずに次点で誰がいいか考え続ける。見かねたミカドが今村に言った。


「オイオイ……可哀想だろ……」

「あ?何が?……あぁ、時間を返した方がいいかな?ちょいと疲れるけどまぁ仕方ない……」

「おい、それは……」


 特異点である今村から時間を返すと言う言葉が出るのは事実上の絶縁宣言のようなもの。もっと大事になってしまったと思ったミカドが本気で止めに入る中、ライアーは空気を読まずに地面に伏しているマイアを口説く。


「オイ、ライアー!お前、そんなことしたらこの人がどうするか分かってんだろうが……!」


 面白そうな顔をしてライアーとマイアの姿を見ている今村の方を指しながらミカドが怒るとライアーは悪びれなく笑って顔を上げる。


「そりゃ、長い付き合いだからねぇ……でも俺が良ければそれでよしじゃん。今村さんとの利害も一致してるし。」

「その子の気持ちも考えろや……!」

「あん?戦んのかな……?言っとくけど、今の僕は変な仕事を大量にしていたお蔭でちょっとばっかり強いから……」


 一触即発の雰囲気になる中で、今村は危険地帯のど真ん中でも全てを無視して今村に頭を下げたまま動かないマイアを見て言った。


「……じゃあ、やる気あるなら取り敢えず今から炊事だから料理出してよ。でもアレだ。競い合いに参加するかは出来上がってから決めるってことを他の参加者が認めるならいいよ。ダメだったら帰って。新しい人呼ぶから。」


 その言葉を聞いてマイアは不安そうにサラたちを見た。全員が頷く中でサラだけは苦い顔になりつつもそれでも見てられないと頷く。


 その瞬間、マイアは鬼気迫る動きを見せて涙目になりつつも持てる限りの全ての力を尽くして複雑な何かを形成していく。


「う、おぉ……何だ……アレ……」

「へぇ……」


 ミカドが驚きの声を上げる中で今村は感心する声を上げた。今村から見てもマイアが作る料理は結構珍しい料理だったのだ。


「こりゃ見ただけで分かるな……美味いわ。俺の料理レベル換算でもおそらく8は行くな……いや、9まで届くかもしれん……」


 今村は目を食魔眼にして笑いつつそう言った。そして彼女を選手として今回も参加させることを決めると他の面々にも開始を告げる。


 一度解散するとライアーもミカドも、そして万一の戦闘の際に余波で会場が壊れないようにさり気なくフォローに入っていたキバも審査員席に戻った。


「……にしても、時間を取るのは酷いって何回も言ってんだろうがよぉ……」

「……取る?俺は返すって言ってるんだが……あぁ、そう言えばお前、俺が時の能力を自在に操れるようになったの知らなかったか?」

「……いつの間にまた更に化物に……」


 呆れたように溜息をつくミカド。それに対してキバが軽く睨み、ライアーは止めようとしたタナトスを連れて審査員席から出て行って今回呼ばれた面々を口説きにかかる。。


「百合ちゃん、だっけ?凄い全部できるよね?俺の嫁さんにならない?」

「あ、あの、今は忙しいので……」

「えー?今じゃなかったら考えてくれる?」

「ちょ、止めましょうって……今村様がブチ切れたらどうするんですか……」


 困りつつ作業の手を止めない百合に対してへらへら笑いながらライアーが口説き、タナトスが戦々恐々としながら今村を見つつライアーを止める。


「……そうですね……お父様のお仕事を全部引き受けてくださいますか……?」

「い、ちょっと……それは、無理……かな……」

「……では半分。」


 料理と言うよりは調合というべき工程をしながら百合がそう言うと、ライアーは今村の方を見て尋ねる。


「ねぇ、君の仕事の半分ってどれくらい……?」

「ん?……そうだな……今お前に任せてる仕事あるだろ?それを100倍したことをまず想像して。」


 ライアーは仕事漬けの日々のことを思い出して、その100倍などどう考えてもキャパシティ的に無理だろ……とげんなりする。だが、今村の言葉には続きがあった。


「そんなのは天国だから。事務処理だけじゃなくて戦闘処理もあるし管理システムの運営についての指針も出さないといけないし、他世界の流れを見つつレジェクエをどう運営していくのかも考えないといけない。その他にも原神どもの動き「ちょっと無理かな……」諦めるの早過ぎだろ……」


 この場にいる面々は今村を除いて誰一人として早過ぎとは思わなかったが何も言わなかった。そして百合が調合した香辛料を鍋に入れてから思い出したかのように手を叩く。


「そう言えば、私と結婚を考えるなら、お父様から全力で叩かれることを覚悟してくださいね?お父様、私の彼氏になろうとする方は一応全力で叩きたいらしいので……」

「死ぬじゃん。」


 真顔で即答してライアーは諦めた。そんな彼に今村は一応告げる。


「蘇生はするぞ?……まぁ最新の状態で全力と言うものは出したことないから確実に蘇生できるとは保証できんが……」

「ダメじゃん。」

「まぁ、多分大丈夫だと思うんだがなぁ……」


 そんなことをしているとマイアが盆を宙に浮かせて一切傾けずに全員の前に皿を出した。


「おぉ……これは、中々……」

「頑張ったにゃ……居ても、いいにゃ……?」


 皿の上に鎮座しているのは硬質で透明な虎。この場にいる審査員の中で今村以外が食べ方を全く想像できない小型の虎の像だった。


「流石、エクセラールの大魔法使い。緻密な傑作だねぇ……これまでのポンコツぶりが嘘みたいだ。」

「む、無視しにゃいで……」

「無視はしてないだろ……好きな所に居ろよ。俺は別に知らないし……」


 マイアは今村の横に正座した。そんな感じで揉めていると祓が次に料理を持って来た。


「これは……被せて来たか……」

「……と言うよりも、今の私ではこれが精一杯ですから……」

「えっ?これ、被せて……?えっ?」


 祓は透明なスープを持って来て全員の前に置いた。誰が見ても虎の像とは違うものだと言い切れるそれを見て今村は被せて来たという発言をし、祓もそれに頷く。


 そして、各々の料理が全部、運ばれてきた。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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