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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第三章~異世界その1~
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6.計算違い

「…何?エクシリオが落とされた?」


 今村が落とした城、エクシリオ城の北にあるポルトン城。その城主室で壮健な体つきをした男が虚ろな目をした裸の女を侍らせて入って来た女性騎士に訊き返した。女性騎士は問いに対し跪いたまま答える。


「はっ!エクシリオ辺境伯夫人が直々にいらっしゃって居られますので間違いないかと。」

「…そうか。ではあの女も戴くとするか…」


 下卑た笑みを浮かべるポルトン城城主のポルトン卿。女性騎士はその前にと進言する。


「ですが革命軍と称す凡人どもの軍勢を打ち破るのが先かと。現在イディオタ卿やバスラル卿も出陣しております。」


 女性騎士の進言に露骨に嫌な顔をするポルトン卿。舌打ちして指示を出した。


「ちっ…奴らに功を独占させるのは気に入らん。出陣準備を済ませておけ。俺は…少しエクシリオ辺境伯夫人…いや、トルぺと話をして行くとする。」


 ポルトン卿は下卑た笑みを浮かべて女性騎士に近付くと口づけを…交わそうとしたところで首から上だけ後ろに落ちた。


「はっ!しまった!これでは今村様に怒られる…」


 女性騎士は先程までと全く違う言葉遣いになると慌て始めた。


「あぁ~…折角大きな仕事を任されて頑張って褒められようと…いや、まだ何とかできるかな…?このアホの顔を胴体に括り付けて魔力糸まりょくしで操ればいけそうな気が…行けそうだな。全く。この体はすべて今村様のものと言うのに汚い顔を近付けて…」


 ぶつぶつ言いながら女性騎士は色々死体に細工を始めた。




 同時刻。エクシリオの西、バスラル城。その城主の部屋にも報告が入っていた。


「何?エクシリオが革命軍とか言うのに落とされたか!これで我が領地も広がるな!すぐに兵の準備をせよ!明日の明朝に攻め込むぞ!がっはっは!」


 エディオタ城にも同じ報告が入っていた。


「…ふむ。エクシリオがねぇ…ククッ…バスラルのとポルトンのに遅れないように、でぇも戦いはなるべく控えめに…ぎりぎりの所をねぇらって…ククッ」











 そして夜は明けた。


「…おっそ!はよ出ろ馬鹿ども…」


 今村はすでにエディオタ城の近くに潜伏していた。今村の烏の目には城下町で略奪しながら進行している敵兵の姿が見えている。


(…たかが4000を城から送り出すのに何時間かけてんだよ…それに自分の町から略奪って馬鹿にもほどがある…)


 今村は最初の兵が城を出たのを見計らってエクシリオを発ったのだがまだエディオタ卿は出てこない。イライラし始めた今村は暇つぶしにこの略奪されている奴らに滅茶苦茶な魔力付与を始めようかなと思っているとようやく殿にエディオタ卿が現れた。


(…周りに人がいねぇ…真面目に馬鹿だなこいつら…まぁいいや。さっさと行け。城は貰っておくから…)


 今村は城から離れて行くエディオタの兵士たちを見送った。


「…お?タナトスの方は早いな。あそこだけ指揮が別格に上手いからもう奪い終わったな…けど…ん?あれ…生きてるか…?」


 別の所にいる烏の目を通して別の城の奪取を見ている。そしてタナトスの役割は終わったが今エクシリオに向かっている元ポルトン城主の様子がおかしいことに気付いた。

 だが、作戦的には特に問題はなさそうだったのでまた別視点に移す。バスラル城の奪取も終わったようだ。


「んじゃまぁ仕上げ行きましょうか。」


 今村は手勢が少なくなったエディオタの侵略を速攻で行った。












「…でさぁ…城落とした後でうちの城に着く前に追いつくってどういう事だよ…」


 あまりの指揮官の無能っぷりに今村はかなり別の意味で疲れた。しかも背後からの接近なので目の前には殿となっているエディオタ卿が輿に乗せられている。思わず衝動的に打ち抜きたくなるが今村は我慢した。この後に色々な作戦があるのだ。

 だがその作戦は烏から届いたバスラル軍の動きによってぶち壊された。


「…着いて陣形も整えずに特攻って…どんだけ…あぁもうここまで馬鹿が相手とは思わなかった!もういい!かかれ!」


 今村は後ろからエディオタ兵の後ろから攻め込んだ。当然一番近くにいるエディオタ卿は真っ先に討ち死にする。

 それを見たエディオタ兵は混乱状態に陥って今村軍の格好の餌食になる。


「弱い!…ってか武器ろくに扱えてねぇ!」


 周りにいる敵軍の貴族兵が剣に振り回されているのを見て今村は愕然とする。その上、弓も装飾が派手なだけで弱い弓以外の実際に使えるものは引けていない。


(…これでどうやって戦うつもりだったんだ…?)


 最早呆れしか感じない。戦闘にもならない蹂躪を終えると今村は強行軍でエクシリオに戻る。その途中でバスラル兵の家紋が入った一軍が追い立てられているのに遭遇した。


「とりあえず迎撃!」


 今村の命でアルテミスや普通の矢が飛びまくる。そして目の前に出て来た一軍は殲滅された。そしてバスラル軍を追い立てていた一団に遭遇する。


「…えっと?誰が指示した?」


 今村が鍛えた軍だった。今村は責任者を呼ぶ。すると顔に傷を負った男が前に出て来た。


「所属、階級、名前。」

「はっ!第三軍部隊長 パトリオタです!」

「メモ取った?」


 今村は隣にいたルカに尋ねる。ルカはばっちり頷いた。


「勿論ですお師匠様!」

「じゃあいい…ってあぁ?何でお前ここに居るんだ?」


 西の攻略の指揮を執っていたはずのルカが当然のように今村の隣にいるのを見て今村は疑問の声を上げる。


「頑張りました!あっちの指揮は大丈夫と思います!」


 丸投げをしたのか…と思った今村はすぐに烏の目を通す。すると祓が先頭に立って指揮をして城下町の安定に努めていた。


(…まぁこの分なら大丈夫か…後でルカは祓に土下座させるけど。)


「よし、じゃあ全軍退却!」


 今村の命令で全軍がエクシリオに戻って行った。











「お帰りなさいませです!」

「…ルゥリン…」


 帰って来るとルゥリンが元気いっぱいに出迎えてくれた。今村はげっそりとした状態でルゥリンに尋ねた。


「これ…俺要るかな…?正直弱すぎて…」

「お師匠様が強すぎるだけですよ!一応彼らは真正面から戦えば強いんですから!」


 今村の問いに答えたのは隣にいたルカだった。だが今村には疲れの原因の一部である彼女の言葉は落ち込む要素にしかならない。


「…将は兵を率いてなんぼだろ…武力誇るのはせめて不意打ちにも対応できるようになってからにしろよ…それに兵を真正面で戦わせるって…アホ?」

「アホって…普通そんな卑怯な戦い方しないですよ…真正面で…」


 今村の戦い方はルゥリンには不満のようだ。だが今村に言わせてもらえば馬鹿正直に戦って死ねば何も言えない。それを踏まえると真正面で戦うなんぞ馬鹿極まりない。


「…兵は詭道なんだよ。まぁいい。正規軍には期待していいよな?」

「…エルモソは強いです。数少ない兵法書と言うものを読んでいますから!」

「……何個ぐらい?」

「?兵法書と言ったら…孫子の兵法書しかないですよ…?」


 今度こそ今村の期待は完全に打ち砕かれた。




ここまでありがとうございます!


 

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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