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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十八章~覚醒と創出~
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11.お世話係

 軽く1時間ほど話し合った結果、フォンは今村との恋人関係を自称することは禁止になり、「レジェンドクエスターズ」組織の部下として入ることになった。

 更に、今村からの一方的な暴力コミュニケーションまで受け入れることになり術式での子どもの生成を許可されることになる。


「…………やっと、ママになれる……」

「……恋人関係を否認しておいて子どもを身籠らせるってどうなんだろうな……まぁ神々にはあんまり珍しくないことだが……何か俺的にはアレな気がする……」


 性行為を伴わないことでも結構嬉しそうなフォンに対して今村はかなり微妙な顔になっていた。


(……正直こいつを隷属化しても扱いに困るからこの条件で別にいいんだが……何か釈然としない……懇切丁寧に俺のことを想っても無駄って説明しても鼻で笑いやがるし……)


 1時間の内、45分程は無駄、無意味、資源の浪費、視野を広げろという説教紛いの物だったが、鼻で嘲けるように笑われた。


 しかし、もう一度チャレンジしてみる。


「……お前、俺みたいなゴミのことはもう忘れてどっか別に……」

「……はぁ、じゃあゴミなら要らないでしょ?私にちょうだい。」

「俺にとっては大事だし。」

「私にとってはもっと大事よ。」


 視線を交差させることしばし、少しずつ近づいてくるフォンから離れて今村は溜息と共にぼやく。


「絶対飽きると思うんだよなぁ……どうせ要らなくなるんだから早めに切り捨てた方がいいって何回も言ってるのに……」

「ぐだぐだうっさい。仮に私があんたのことを好きじゃなくなったらそれこそ隷属化しなさい。そんな私、私じゃないから。」

「……と、言っていてもねぇ…………まぁ、出した『契制約書』は履行するが……最後通牒。後悔するぞ?それでもいいんだな?」

「早くしなさい。」


 フォンの言葉に今村は頷いてフォンに術を掛ける。


「……ん?」

「もう入った?」

「いや、ちょっと待て……あれ?これは……違うか……?」

「早くしてよ……待ちきれないんだから……」

「焦らせんな。じっとしてろ……」


 今村は目を六式魔眼に変えて色々視ながらフォンに術が掛からない原因を探して溜息をついた。


「何よ。」

「……神格が高過ぎるから性的接触がないとダメだってよ。……仕方ないか……キスしていい?それともやめる?」

「!ちょっと待ちなさい……」


 今村は嫌そうに、出来ればやめてほしいと言うニュアンスを込めてフォンにそう告げるが、フォンはキスと言う言葉に一瞬体をピンと伸ばして口の辺りに何かの術式を掛ける。


「よ、よし……どうぞ……!」

「いや、軽いやつだからな?」


 強く目を閉じて軽く唇を出してきて慣れてないんだろうなぁ……と思わせる顔をしているフォンに対して今村はこれでも恐ろしい程の美女に見えるんだから凄いよなぁ……と思いつつ顔を左に傾けて浅く口付けを交わす。


「ん…………」

「これで、一応大丈夫だが……どうした?」

「……すっごい。今なら世界を取れるかもしんない……」


 しばらく余韻に浸っていたフォンだが、少ししてそう言いながら目を開けるとその目は薄く金色の氣を纏っていた。


「取っちゃう……?」

「要らん。唯でさえ忙しいのに……」

「早くこの子にパパの後を継がせて隠居させないとねー……そしてそこから爛れた日常を……」

「……取り敢えず、安静にしてろ。俺の要素だけでも半端なく不安定な子どもが生まれかねないんだ。それに旧神なんか足したらそれこそどうなるか……」


 そう言いつつ今村は素晴らしく均整のとれたまさに美の結晶と言えるフォンの身の回りを世話するメンバーを誰にするか考える。


「……生半可な奴じゃ気を抜いた時に大変なことになるし……ここは仕方ないかな。多少畑仕事は別の奴に任せてるぅねに……でもなぁ……あいつアホだし……お前、身の回りの世話をする奴に何か要望ある?男がいいとか……」

「女じゃないとあんた絶対嫌がらせするから嫌。女で、そうね……今の子って貧弱みたいだからなぁ……私が素でいても普通にしてられないと、色々困るんじゃないかな?」

「だよな……」


 男ならまだいたのだが、女でフォンの相手を出来そうなのがいない。今、フォンに言われた条件であれば思い浮かぶ者は多々いるが、そのどれもが性格的な問題を抱えていたりしてお勧めできないのだ。


「……取り敢えず、フェアリーズのトップ層とかどうだろうか……でもあれはお菓子作りを生業にしてるからなぁ……他のこと頼むと高くつく……なぁ、世話係って馬鹿でも良い?」

「度合いに依るわよ。」

「……取り敢えず、候補を呼んでみるか……」


 今村はそう言って4人ほど呼んでみた。


「はーい!るぅねだよ!あるじ様呼んだ~?」

「…………む……ハニバニだよ、呼ばれた。」

「……桜花も呼ばれた!」

「……わたしもよばれましたよ!」


 今村が呼んだのは今村謹製の特殊魔導装甲人ゴーレムのルーネ、【血染め黒兎】ことバニー美幼女ハニバニ、【消血妖鬼】こと悪魔幼女桜花、【破壊魔導姫】こと魔女っ娘マホだ。


 そして呼ばれてないのに来たのが―――


「わ、たし……呼ばれてない……」


 【狂危きょうき凶瀾(きょうらん)恐厭姫(きょうえんき)】ことアルマだ。若干俯きつつも涙目でぷるぷるしている。

 取り敢えず、その面々を見てフォンが顔を軽く引くつかせる。


「何、これ……あんたまた碌でもないのを……」

「失敬な。こいつらは良い子だ。」


 今村の言葉に呼ばれた面々は喜び、今村の方へ駆け寄る。


「わーい!あるじ様に褒められたよー!」

「……今のは、ハニバニたちを褒めたの……!」

「む~……大体あんた、あにじゃの何?」


 外面は恐ろしいほど愛らしいが、内面は世界にとっての敵以外の何物でもない面々に旧神であるフォンですら引いた。


「化物じゃない……こんなの……」


 そんなフォンに【破壊魔導姫】ことマホが冷静に告げた。


「あなたもりっぱなばけものだとおもいます。それに、ひとしせんせーのほうがもっとばけものです。」

「そりゃ、そうだけど……」

「……まぁそれでいいよ。取り敢えずアルマは今から言う仕事には向いてないから呼ばなかっただけで別に忘れてたとか言う訳じゃないからな?」

「……ぅ……ぅん……」


 泣いただけでこの世界程度の強度であれば壊してしまうアルマのことを抱えて慰めつつ今村は他の面々に告げた。 


「さて、このフォンって奴は現在身籠り中。お世話してくれる?」

「んー……るぅねちょっと忙しいかな~……あるじ様の畑のお仕事あるし……でもやれと言われたら何でもやれるよ!」

「……ハニバニは…………ん~……何か、ちょうだい?……あ、良い事考えた。ハニバニも子どもほしいな。」

「お前にゃまだ早い。」


 本人的には妖艶にしなを作っているつもりだろうが、無理をしているようにしか見えないハニバニにそう告げると【消血妖鬼】こと桜花が手を上げて跳ねつつ今村に尋ねる。


「桜花は!?」

「もっと早い。……言うまでもない。」

「なにげにきずつきましたよ……?」


 【破壊魔導姫】が溜息をついて今村をジト目で見た後、ふと今村の言葉をどこか期待するような目をしつつ無言で待っている【狂危きょうき凶瀾(きょうらん)恐厭姫(きょうえんき)】に目を移して彼女には今村は何も言わなさそうだったのでそのまま放置して話題を変えた。


「……で、このかたのめんどう……いいですよ?そのかわり、あとでかるくじっけんにつきあってくださいね?」


 【破壊魔導姫】がそう言うと周囲の流れも変わったようだ。


「……む、抜け駆け……ハニバニもやる……お菓子巡りね。」

「じゃー私は戦争しに連れて行ってもらおうかな!」

「あ、る、るぅねの方が役に立つもん!あるじ様、れむれむ2号貸して!」


 話がまとまったところで今村は適当にフォンの世話係として4人を別世界に転移させた。そして、残った【狂危凶瀾恐厭姫】を肩車して空間の孤立を解除する。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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