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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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28.負の原神のお見舞い

「……マイア、後……えっと……?ら……いや、れい……?」

「……私、泣くよ……?レイチェル……」

「そうそう、部屋の中に入ってろ。」


 今村は世界が強引に割り開かれたところで目が覚め、怠い体を起こして結界を張らせていたマイアとレイチェルを部屋の中に招いた。


「……どうしたのにゃ?」


 内心レイチェルに勝ち誇っているマイアだが、今村はかなり状態が悪いのに起き上がっている様子を見て心配そうにそう尋ねた。


「……いや、面倒臭い客が来るだけだ……ついでに、輪をかけて面倒な奴らが来ることになる……ちょっと、先手を打たないとな……」


 今村はそう言ってため息をつきながら扉に掛けられていた術式を解く。これは解除式の物なので能力を行使しても特に問題はないようだ。


「……今村さん……まだ顔色悪いにゃ……」

「まぁな。……取り敢えずお前らは……耐えれるかな……?いや、一応こっちに来ておいた方がいいか……」


 今村はそう言ってマイアとレイチェルをベッドに呼び寄せた。二人は若干期待を持つという勘違いするも、すぐにこの人がそんなことを考えるとは思えないとその期待を打ち消した。


「……この防御陣で大丈夫かね……一応、ベッドにあるやつは最新式で構成してあるから原神の一撃にも耐えうる仕様なんだが……」

「いや、そんな物騒なことはしませんよ?」


 今村がマイアとレイチェルを隣に侍らせた格好になり、現状を憂いる言葉を呟くと扉が普通に開けられて部屋の中に赤髪の絶世の美男子と黄色の髪をした絶世の美少年。そして黒髪の普通のおっさんが入って来た。


「よぉ……何か用か?」


 今村はそれに続いて入って来た女神たちも見つつ、嫌そうに入って来た男たちに向かってそう尋ねる。

 そんな今村の態度に赤髪の美青年は肩を竦めた。


「何って、お見舞いですが?原神と戦われたと聞きましてね……」

「そーそー!真正面から戦うとか正気かな?って思いながら来たよ。」

「……取り敢えず、見舞い品じゃ。」


 男性陣の言葉を胡散臭いと思いつつ今村は見舞い品と称して持って来られた邪神の神核を受け取る。


「……誰のだ?」

「ん?悪魔神のじゃが……」

「しれっと何大物殺してんだよ……まぁいいけど。」

「いや……あやつ、原神に殺されおっての……」


 カトラスと同じ負の原神として名が高い【勇敢なる者】の対の戦闘神的な存在である【災厄の悪魔神】は以前、今村によって呼び出された後に【勇敢なる者】に殺されてしまったらしい。

 そして、その氣が完全に途絶える前に巨大な氣の逓減を察知した3柱が止めの前に割り込んで【勇敢なる者】によって瀕死になっていた遍く生に対して冒涜的な存在マリアンさん。そして、その対の神フーラーと悪魔神の亡骸を回収して逃げた後、これを生成したと言うことらしい。


「フーラーは?」

「まぁ、ギリギリ生きておったな……看病がマリアンの奴じゃから……その後はどうなったか知らん……」

「ふーん……いいや。頂きます。」

「は?」


 大体の話を聞き終えた今村は貰った悪魔神の神核を食べた。非常に硬いそれを噛み砕いた瞬間、気色の髪の少年はドン引きして言った。


「……こんな時、どんな顔をすればいいんだろ……」

「鏡を見たらどうですか?もう、笑うしかないんですよ……」

「うわぁ…………これは、ないのぉ……」


 負の原神すらドン引きさせながら今村は神核を噛み砕いて飲む。


「……喉越しはあんまり良くないな……味は……只管に苦い。」

「そんな感想訊いておらんのじゃが……」

「だ、大丈夫にゃ?これ、とっても危険にゃ匂いがしてたにゃ……」


 心配そうに顔を覗き込むマイアに今村は手に付着した神核の結晶の欠片をマイアに見せると訊いた。


「食べる?」

「いらにゃいにゃ!やめ……うにゃぁぁあぁぁっ!」

「次は、お前だ……」


 マイアが悶絶してベッドに倒れ込んだのを見て今村は笑いながら逆隣りにいるレイチェルの方を見てそう告げる。それを受けてレイチェルは涙目で両手を前に出して抵抗して来た。


「やめて、ほんと……お願い……っ~っ!っ!っ!苦ぁ……」


 だが、今村は無理矢理それを食べさせる。そしてレイチェルも倒れてベッドに沈んだ。それを見て負の原神たちが更にドン引きする。


「僕らは、食べませんからね……?そういう物を食べるのはカトラスさんだけで十分です……」

「親切の押し売り反対……!カトラスさんしか食べさせちゃダメだからね!」

「いや、儂も嫌なんじゃが……」


 ターゲットにされてはたまった物ではないと全員が腰を引かせる。そんな面々を見た後に今村はその奥にいるマキア、祓、アリスの方を見て尋ねた。


「食べ「いただきます。」……じゃあこっちに。」


 食い気味に反応してきたのは祓だ。しかも、訊かれていないマキアとアリスも今村の方へとやって来る。原神はざわめいた。


「嘘、だろ……?第1世界の大邪神の神核だぞ……本来なら、一目見ただけで発狂する……そんな代物が……」

「食べ……ました、ね……」


 今村に手渡されたモノを何の疑いもなく呑み込む祓。彼女はそのまま白目をむいた後に目を閉じて泡を吹いて倒れ、今村はそれを面白くなさそうに見た後に溜息をついて言った。


「それでお前らの基本性能が過剰に上がる。……まぁ、記憶の問題はそれで解決するよ。」

「「!」」


 今村の発言を受けて投げ渡された毒物……ではなく、神核を迷わずに飲み干す二人。彼女たちも祓と同じような末路を辿った。


「狂ってる……」


 そんな光景を見て驚きと呆れの混じった声を漏らす負の原神。そんな彼らに今村は言った。


「だろ?だから、遠ざけたかったんだが……お前らが連れて来るから……」

「いや、だけどねぇ……こんな馬鹿でかい愛氣とか見たらそりゃ、流石に愛なんてゴミ以下と思ってる俺らでも助けるよ……それに……」


 続けようとした黄色髪の少年、神谷に瀬目野が小突いて黙らせる。今村はそれに続く言葉を察して自ら口に出した。


「……俺からも縁が出てるって言いたいんだろ?」

「気付いてたのですか……えぇ、ナノにも満たない、本当に注視していないと気付かないレベルですが……それでも、驚いて恋愛神が報告に来ましたよ。」

「……暇なのかよ。……ま、早々に諦めないとダメなんだがな。ちょっと強力な遮断結界を張ってくれ。」


 今村の急な言葉に若干不審に思いつつも負の原神たちは頷いてすぐに結界を張る。しかし、今村は首を振った。


「もっと、強力に。術式遮断に特化して。」

「……?何ですか……?」

「これ以上やるとすぐに保てなくなるんだけど……」

「短時間で済む。」


 今村の言葉に従って最強レベルの結界を張る負の原神たち。だが、今村は溜息をついて再び首を横に振った。


「ダメだ。足りない……俺も協力できればいいんだが……生憎、【清雅なる美】たちのせいでな……」

「何が言いたいんですか?」

「……後日、話そう。」


 今村が諦めたのを見て負の原神たちは結界を構築するのを止めた。それを見て今村は告げる。


「今日の目的は、俺とこいつらの関係修復だろ?今回、こいつらが記憶がない時に俺を殺しに来たことは水に流すから、安心して帰ってくれ。」

「……何を考えているのか分かりませんが、この世界の方もそろそろ限界ですし、また後日……」

「は~……第3世界は脆いなぁ……じゃあね。」


 今村の言葉に対して若干の疑念を抱く瀬目野と話足りないと言う風に去って行く神谷。残されたカトラスも「修復、全部儂がやるんじゃな……」とぼやきながら今村に軽い挨拶をして出て言った。


 それらを見送って、今村は話そうとしていたこれからのことを少し考えながら今は回復をすることに専念するため、眠りに就いた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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