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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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27.お見舞いだ

「……外、大丈夫かにゃ……?」

「…………どっちにしても、私たちは動けないから……」


 今村の部屋の前室で遮音などの諸々の結界を張っている白黒犬猫コンビは外の轟音の中で不安気に会話をしていた。

 彼女たちは自分より強い存在をあまり見て来なかったのだが、今回はほぼ全員が自分と同等以上の存在で、戦闘の行方が分からないのだ。


 二人が不安を紛らわせるために会話を続けようとすると爆発音と、屋敷の外枠が崩れる音が二人のいる場所にまで聞こえてくる。


「……そろそろ、結界のレベル上げるべきかにゃ……?」

「居場所がバレるのは好ましくない……でも、危ないから……」


 戦闘の段階が上がるたびに、二人は眠っている今村を起こさないように、そして自らの身を守るために結界に力を注ぐのだった。










「……何か、無駄に強いんスけど……あ~もう、消し飛ばしちゃっていいッスかね?しつこいし……」


 外にいるキバはイライラしていた。現在、月美はイヴに負けて全員の相手をしている状態にある。

 そんなキバだが、相手は絶世の美少女達で一応主の身を案じている者たちのため、ある程度手心を加えているの。その所為で決まらないのだ。


「強い……ちょっとイヴさん。アリスさんに代わって下さい!色々大赤字ですけどもう手がないんで!」

「……?あの子は私より弱いわよ……?」

「あの人にしかできないことがあるんですよ!早く!」


 五行女神である祓が全力で頑張っている間、コンマ1秒にも満たない時間で天地女神のマキアが陰陽女神のイヴにそう言って交代を促す。

 イヴはあまり気が進まないようだが今村の為だと割り切ってすぐに入れ替わりにかかる。その間にマキアは召喚陣を使っていた。


「んお?……え、何?」

「…………ここは……?」

「ぅおっ!何だあの化物は!?」


 現れたのは銀髪に銀色の目をした「星海神」イグニス、黒髪黒目の「武威神」タナトス、そして金髪茶目の「創造神」ことトーイのゲネシス・ムンドゥスの人間界の3男神だった。


 そんな彼らにマキアはアリスの口から命令風にお願いをするように言ってその内容を続けて耳打ちした。


「……え、でも……この子たち弱いけど……」

「大丈夫です。外付けで……」

「なら……」


 祓の方も結構押され気味なので手早くアリスは言われたことをまとめて3人に告げた。


「あなたたち、合体して。」

「「「はい、喜んで!」」」


 どこかの居酒屋のような返事と笑顔で応じた3人はアリスを血走った目で性欲を溢れんばかりに見る。そんな雰囲気にマキアがすぐに気付いた。


「アリスさんと合体じゃないですよ?3人で……」

「え……俺らそんな趣味はないんですけど……」


 どっちにしろ変なことを考えている3男神に対してマキアは防戦一方になっている祓のことを見てすぐにアリスに言わせた。


「早く!ご褒美、あげるから。」

「「「やろう!」」」

「同意貰いましたからね!『蠱毒術』悪意のサーキット!」


 同意を示した瞬間にマキアは3人に呪いをかけて合体させた。その次の瞬間には3人は鈍銀色の髪をした茶色の目をした絶世の美青年へと変貌する。


「……おっと、敵が増えたッスね……ペース上げるッスよ!」

「先輩!下がって!もう時間稼ぎは良いです!」


 マキアの言葉に止めを刺されかけていた祓が勢いよく後退する。その代わりに3男神が突っ込んで行った。


「はぁ……はぁ……っ……マキアさん、これで……?」

「ちょっと色々伝手があるんで呼びますね……えーと、日馬くんの魔界帝の合体も出来そうだから……うん。」


 マキアは時間稼ぎの為に貸しのある者たちを呼んで合体させてキバに当たらせる。


「……でも、無駄じゃ……」


 鎧袖一触とばかりにキバにやられていく面々を尻目に祓がそんなことを言う。しかし、何気に健闘している上、回復をする班になど分かれているのでそうそうやられることはなさそうだ。


 そんな小康状態を見て取ったマキアはこれで良しとばかりに人を呼ぶのを止めて陰陽女神のアリスと五行女神の祓に話を始める。


「……いいですか?やはり、合体をしないとここは突破できないと思うのでこの場で儀式を始めたいと思います。幸い、イヴさんのところをアリスさんの名前に書き換えるだけなのでそこまで時間はかかりませんから……」

「……抱き合っていればいいのね?」


 アリスは話を進めるためにマキアにそう告げる。そんな彼女にマキアは頷いて答える。


「体に刻印は済ませてあるので、ぴったりとくっつ……」


 マキアが終わりまで話をしようとしたその時だった。空間が割れ、そこから何者かが現れる。


 その瞬間、世界が死を告げられた。この場にいるキバ、そして陰陽女神のアリス、天地女神のマキア、最後に五行女神の祓以外の全員がその場で白目をむいて倒れた。


「……あんたら、何ッスか?」


 現れた3人組にキバが最大限の警戒を払いながらそう尋ねる。尋ねられた3人組の先頭にいる黄色の髪をした男は軽く笑った。


「瀬目野。そこで寝てるお人に用があって来ました。」

「俺は神谷。同じく……あれ?今は名前なんだっけ……まぁ副会長に用があって来たよ。」

「儂は「そんなことより、通して貰いましょうか?」……儂は一応カトラス……なんじゃが……」


 恐ろしい程の威圧を放ちながら悠然と進む3人。そんな彼らにキバは敵意を露わにして唸り声を上げる。


 だが、


「ほぉ、いい素材……だけどまだ甘いなぁ……ぎこちなさが拭いきれてない……取り敢えず、攻撃して来たからには覚悟出来てるよな?」

「死んでね?」

「なっ……ぅがぁああぁぁぁっ!」


 キバの一撃は軽く受け止められた上にその触腕を取られてキバは伝って来た雷によってその場に崩れ落ちた。


「……行くしか、ないです……ね。」

「マキア、その合体はいつ……」


 圧倒的な力を見せられて女神たちは怯むが、今村の下に行こうとしているその動きを見て無理矢理体を動かした。そんな彼女たちのすぐ側に赤髪の少年がいつの間にか来ていた。


「っ!」


 驚いて距離を取ろうとする面々にその少年は軽く笑いながら宥める。


「ま~ま~……落ち着いてよ。あの人のこと好きなんでしょ?見たらわかるけど、一応確認。」

「……あの人って、ひとくん……?」

「ぶはっ……い、いや……あの人をそんなふざけた名前で……うんうん。その……ひとくんのこと好きなんでしょ?」


 アリスは笑われて若干不機嫌になるが今村のことが好きなのは事実なので頷いておく。すると、彼は更に笑った。


「じゃあ、付いて来なよ。あの人のお見舞いで……ちょっと、面白いこと考えたからさ……」

「神谷くん。ある程度ならいいですが……あの方を怒らせないようにしなさいよ?今のあの人は大分……いえ、かなりおかしな状態ですから……【勇敢なる者】と正面切って戦い、引き分けという……」

「分かってる分かってる!俺だってまだ死にたくないし!」


 愉しげな彼らに、一応、会うと言うことは達成できるということを鑑みて女神たちは頷く。


「……おい、あの子たちの目……隙あらば儂らを殺そうとしておるようにしか見えんのじゃが……」

「そんなのいつものことだろ爺。」


 合体の手続きを済ませ、何かあった瞬間に、目の前の標的を殺すことが出来るようにして3人は大人しく目の前を先行している負の原神、3柱衆に黙って付いて行った。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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