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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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21.甚大なる被害

「『白れ「グヌハハハハ!フヌギュガバッ!」」


 今村が死の覚悟を決めたその瞬間、目の前に全身を筋肉の鎧で覆われた巨人が現れてユーシアの攻撃によって徐々に炭化していく。


(キマイラ!よっしゃぁ!)


 今村の楯となっている者の正体は陰陽女神にやられていた……キマイラだった。彼は今の今まで修復に勤しんでおり、現在はそれを終えて今村の命令に従って今村とユーシアの間に割り込んで来たのだ。


 それにより、今村に1秒のゆとりが生まれる。


「森羅万象破壊丸っ!」


 その一秒。今村にとって値千金では利かないその1秒が得られた今村の反応は早かった。すぐに彼の戦艦を呼び出し、それと同時にるぅねと乗組員を召喚する。


「ん~にゃ~も~……ハッ!あるじ様の血の匂い……あぁぁぁるぅうぅうじぃいいぃさぁあぁまぁぁっ!?酷いけがだよ!すぐに……」

「邪魔だ退け。気を抜いたらこれでも一瞬で殺られる。テメェら!一気に全力で動かせ!るぅねは相手を殺すことだけに集中しろ!」


 艦内が慌ただしく動き始める。るぅねは今村のことを心配していたがそれよりも先に目の前の脅威を何とかしなければならないと今村の命に従った。


「ゴミが……ゴミがぁぁああぁっ!役立たずめ!貴様ら……おめおめと負けておきながら今度は俺の邪魔をするか!」


 今村を殺したことを確信したはずが、目の前に巨大な戦艦が、そしてその前に完全に炭化しつつもなお再生しようとしているキマイラに激昂しているモニター越しのユーシアを見て今村は血を吐きながら笑みを溢す。


「さぁ、こっからは最悪でも相討ちだぜ……油断してくれてありがとうよユーシアくん!」

「気安く俺の名を呼ぶな!」


 怒りと共に放たれた強烈な一撃。それは森羅万象破壊丸に甚大なダメージを負わせる。しかし、今村は焦らずに乗組員に尋ねる。


「被害を。」

「ストックの世界の障壁の内、8000万枚が破られました。」

「……上々。修復をしながら急いで攻撃準備を。」

「了解。」


 ユーシアが負わせたはずの傷はその直後に森羅万象破壊丸から消えてなくなった。


 ユーシアが知る由もないが、それは過去にレジェンドクエスターズが改革している世界の中で、正の神が統治している世界に肩代わりされている。今の一撃だけで100万程の世界が滅亡した。


 その報告を聞いた今村は攻撃の原因の追究をさせることにしつつも目の前の敵を見て痛む胸のことを無理矢理無視して笑う。


「さぁて、信力が減っているのに気付くのはいつ頃かな?」

「あるじ様……攻撃準備が整ったよ。」

「撃て。全力で。全弾撃ち尽くす勢いで撃て。」


 るぅねは非常に心配そうに今村を見ながら頷いた。彼女のミニマムな記憶でもこの一撃を撃つ度に現状の今村の能力であっても寿命がかなり減って行くことは思い出せたが、今が無ければ先もないと仕方なくその命令に従って撃つ。


「ごっほ……ぅえ……チッ……これはダメだな……死ぬかもしれん……だが、まぁ……あいつのこんなに悔しそうな憤怒の顔を見れただけでもいいわ……」


 そう言いつつ痛覚をマヒさせる作業を進行させてユーシアの顔を見て微笑む今村は異変に気付く。


 今村を逃げられないようにしていたユーシアの封印結界が何者かの攻撃により外側から破壊されかかっているのだ。


「……ミニアンなら厄介だな……流石に敵がこれ以上増えられると……いや、だがあの顔は……」


 超過密な弾幕の前で血涙を流さんばかりの激甚な様子を見せるユーシアを見て今村は少なくともユーシアの味方ではないと判断してこれを好機とばかりに攻め立てる。


 しばらくの拮抗。表面上はそう見えるが、次第に森羅万象破壊丸が押され始めた後、結界の一部が破損して内部結界にその何者かが近付くことで今村はその相手が誰かを知り、弾幕を薄くする。


「気付きおったか……悪運だけは強いゴミが……」


 そう言い残して退却していくユーシアを今村は笑いながら見送り、彼が流した血でこの世界への侵入に関する術式を弄って相当な力を籠めなければ来れないようにして一気に気を抜いた。


「あ……やべ…………」


 その瞬間、体から力が抜け、その場に崩れ落ちる。慌ててるぅねが駆け寄るもその顔にも今村は霧状の血を吐いてしまう。


「てんこーはくゆ!あるじ様!ごめんなさい!えいっ!」


 そんな視界が霞んで死に瀕している今村をるぅねは問答無用で再生用の神仙培養液の中に突っ込んだ。


「……お、ぃ……てめ……」

「しゃべっちゃダメ!どーみーる!」


 まさに問答無用のるぅねは今村に彼女が持っている中で最強に強烈な麻酔をかけて強制的に眠らせにかかる。ユーシアとの戦いで抵抗する気力もない今村はすぐに液体の中で眠りに就いた。


「しゅ、シュティちゃんを呼ばないと……シュティちゃんの血は凄い回復薬だから最悪全身の血を抜いて……あるじ様ぁ~死なないで~!待っててね!」


 恐ろしいことを言いながらるぅねは今村の持つ世界へと戻ろうとしてあることに気が付いた。


「はわっ!でも、るぅねがいないとこれ動かせない……ど、どうしよ……あるじ様どうしたらいいの!?……そのあるじ様が大変なんだよ!うにゃぁっ!」


 一人でパニックになっているるぅね。そんな彼女の下に滅世の美を持つ幼い少女が現れた。


「お兄様!……っ……酷い怪我……」

「あるじ様のいもーとさん……?」


 現れた【無垢なる美】ことセイランが感情を発露して封印の一部が解け、乗組員たちが全員気絶する中でるぅねは涙目でセイランにそう尋ねる。


「いえ、お嫁さんです。ですが今はそれは置いておきましょう。回復を……あの、この戦艦……墜落し始めているのですが……」

「……【勇敢なる者】との戦いでもぎりぎりだったから……乗組員の人達が騙し騙しやってたんだけど、みんな魅力に当てられて気絶しちゃったし……あ、それより。ちょっとの間だけあるじ様のこと任せるよ!」


 全て放り投げられたセイランを後にしてるぅねは自世界へと飛ぶ。セイランはるぅねが用意している機器の使用方法が分からないので一先ず壊して今村を取り出した。


「っ……!これは……私でも厳しい……」


 存在値だけでもかなりの大怪我だと判断していたセイランだが、実際に見て予想をはるかに上回る怪我だと知り、血相を変える。そんな彼女たちの下に新たな人影がやって来る。


「【無垢なる美】様!仁は……」

「!【精練された美】……よくやってくれました。【清雅なる美】。こちらに来てください。」

「は、はい……っ!こ、これは……すぐに治療に入ります!」


 【精練された美】こと瑠璃、そして永久に姫である【清雅なる美】の到来でセイランに少しだけゆとりが生まれた。


「【清雅なる美】さん……お願いします……」

「勿論です……【白外魔法】……」

「……お、ってぇ……何だ……?」


 【清雅なる美】の魔法が始まったところで強制的に眠らされていた今村が目を覚まし、目の前で叩き壊されている機器を見て動きを止めた。


「ぅぎゃぁあぁぁっ!な、何で……はぁ?はぁあぁぁあ?誰だオイ、これ何で壊されてんの?え、何?これ何?はぁ?オイ……俺がこれにどれだけ……」

「まだ危険水域ですから寝ててください!」

「ちょ、ま……こ……」


 血を吹き出しながらも無理矢理立ち上がって吐血しつつ叫ぶ今村を【清雅なる美】が否応なしに寝かせ、大規模な治療が始まった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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