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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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13.本命戦

「『夜霧大蛇よぎりおろち』あ~……技名言うの『六花むつのはな』面倒だけど……やっぱ言わないと問題が……『雷獣七星』……威力が、『八閃打』……問題『天泣雷脚てんきゅうらいきゃく』だよなぁ……」


 今村は序盤、地球で言うところのロシアのシステマに近い、足を止めない戦い方から入っていた。今回の戦いにおいて最初から入って来たのはあまり強くない名人たちで、あまり秘技を見せるわけにもいかず。かと言って、手を抜けないので他流派の技を使っているのだ。


 現在使用しているのは合気、柔術、空手となっている。


「ちっ……殺神拳のこういうやり方はあんまり好きじゃねぇんだが……相川!恨むなよ!」

「恨みゃしねぇよ。何、面白くなってきたところだしなぁ……」


 今村は活神拳の元同門である麻生田おうだに気を取られ、近くにいた敵から一撃入れられる。そしてそれに続いてかなりの攻撃がヒットした。


「ぅぐっ……中々、良い技じゃねぇかよ……」

「ぅぎゃぁあぁぁああっ!」

「腕がぁっ!」


 そのどれもが一撃必殺の技だったが、今村は化勁などを用いて弾き、一部は近くの敵にそのダメージを流し、それでも弾けなかった分は魔法で治した。


「く……魔術じゃ治し切れない辺り……やっぱり凄いな……『風雪羅掌』!」


 今村は笑いながら血を飲み下した。


 既に今村が動いている範囲は今村の血塗れになっている。普通は猛毒であるそれだが、今日の毒はそれほど強くなくここに居る面々程の存在値があればあまり効かないらしい。


「面妖じゃのぉ……じゃが、その魔素もいつまで持つやら……」

「はっ……テメェら相手なら永遠に持つよ。」

「言っておれ……」


 先日何度も痛めつけた殺神拳のサングラスをかけた男がそう言って再び少し距離をとるのを見ながら今村は内心で溜息をつく。


(実際、こいつらの相手程度ならまだ魔力は持つ……ただ、大ボスの二人が出て来る時まで回復しておきたいんだが……多過ぎて、減少しつつあるんだよ……)


 まだ瑠璃の父親である遊神は来ていないし、殺神拳のトップの【激甚なる者】も来ていない。その上、因縁を持たれた【激甚なる者】の息子である【苛烈なる者】すら来ていないのだ。


 その状態でこれは不味かった。


「『鋼鎖掌』……ちっ。もうキツイな……刀で行くか。」


 現状を鑑みてそろそろ素手の自流でない技がネタ切れになって来たので今村は癖が出て技の分析がされる前に別の戦闘スタイルに変える。


「さぁ、続けるぞ。」

「化物め……」

「言ってろ。『羅神一断』」


 実際に戦闘している相手が苦い顔で今村にそう言いながら下がる。代わりに別の人物が前に出てきて今村は軌道を無理矢理変えて横薙ぎにその人物を斬った。


(ちっ……こいつら、何でこんなに統率が取れてんだよ……)


 斬ったが、その隣の敵が斬った相手を引いて浅くしか斬れなかったことを受け苦々しく今村はそこから突きを放ってその敵と掴んでいる腕を刺しつつ内心で毒を吐く。

 そこから神速で流れるように腕を伝い、その男の胴を切り裂き、反対側の腕まで斬るとその勢いのまま一回転して周囲と僅かな時間だけ若干の距離をとった。


「はぁっ!『大円断』。」


 一度息をつくとその時には既に敵が迫っている。それらを斬り捨てると妙な間が空き、敵の視線がズレ、今村はその方に気配察知だけを向けて苦笑する。


「ぅぐ……にぃ、に……ごめ……」

「屑とはいえ、流石と言ったところか……この、化物が……」

「ようやくお出ましかい。待ちくたびれたぜ……クックック……」


 白髪巨体の老人、遊神。スキンヘッドに体中に傷を負った遊神よりは細身だが体中引き締められた老人、【激甚なる者】。

 そして、黒髪に群青色を少し薄めた色である薄花桜色の目をしており、細身の鍛え上げられた体を持つ絶世の美男子【苛烈なる者】が全員揃って今村の前に現れた。


「アヤメを連れてきたのを不思議に思っているのだろう……お前に人質が効かぬことくらいは我らも百も承知だ。よって、お前の、目の前で殺す。」

「……『禍彩一突』活神拳……それでいいのか?」

「……貴様を殺すこと、其の方が重要だ。それに、アヤメは何を言っても説得に応じなかったからのぅ……敵に回るくらいなら……動揺を誘うために散らせた方がマシじゃ……」


 遊神の苦々しげな言葉に今村は舌打ちしつつ周囲の敵を殺していく。因みにこの舌打ちは苦々しげに目でも伏せてくれれば殺せたのに……という物であってアヤメの身を案じてと言うわけではない。


「目の前で、死ぬ前に自殺したかったけど……体が、上手く……」


 アヤメがそう告げるがそれを遮って絶世の美男子である【苛烈なる者】が前に出て今村に告げる。


「瑠璃はどこだ?……勿論、無事なんだろうな?」

「八つ裂きにして捨てた。その辺の海でも探せば?まぁ魚の餌になってるだろうがなぁ……」


 今村の挑発に遊神と【苛烈なる者】がすぐに乗って今村に無言で襲い掛かる。それを受けて今村は邪悪に嗤った。


「『天燐鳳凰駆』!」

「『羅殺地獄貫き』!」

「連携を崩してくれてありがとよ……『常闇流し』」


 相手の勢いを流して周囲の敵にぶつけると今村は続けて刀を翳した。


「さぁ、本戦の始まりだ……持つかな?『白礼刀法 ()の型:白髪鬼』!そして……奥義一之太刀【一閃】。」


 神速の一太刀により、天地が裂けた。その余波によりこれまで戦っていた面々の殆どが脱落する。


「ぬぅっ……」

「ちっ……」

「二之太刀【双牙】ぁっ!」


 白髪を振り乱しながら今村は全てを破壊しにかかる。頑丈な世界が揺れ、一部が崩壊する中で空は暗くなり、放電が至る所で起きている。


「『数え殺し』と同じ系統か……?順に解放……」

「四之太刀『虚空』!」

「……というわけでもないか……」


 全てを寸でのところで躱した面々、そして何とか致命傷は免れた面々は合計して残り10名少しになっていた。


 その中にアヤメは含まれていない。今村の攻撃により解放される前に【激甚なる者】に殺された。


「……一応、これらは俺の必殺技なんだけどねぇ……」

「だろうな。……これほどの威力を持っておきながら普通と言われるとこちらの立つ瀬もない。」


 今村の苦笑いに飛燕山の黒尽くめの道着と袴を着ている男が応える。彼の服は既に躱し損ねた分で血塗れになっていた。


「……では、儂から行こうか……飛燕山の名人代表として流石に多対一を行うのは問題じゃからのぉ……」

「はっ!既にリンチしておきながらその言葉!流石代表様は言うことが違うね!死んでくれないかなぁ!」


 今村の煽りに遊神は無言で、そして真剣な目で今村を見据えた。


「相川 仁。……いや、今村 仁と言ったな。死ぬ覚悟は整っているな?」

「はっ……んなもんいつでもあるわ。ボケてんのか腐れ爺。さっさと防腐処理施されてミイラになって棺桶の中で永眠しやがれ。」


 そんな今村の煽りは既に集中している遊神の前では意味を成さない。静かに息を吸い込んだ遊神は今村に厳かに告げた。


「飛燕山、【氣征天原きせいてんげん】 遊神 はじめ。参る。」

「え?これ俺も名乗らないといけない流れ?……じゃー【世界の敵】にて【飽くなき娯楽の探究者】まぁついでにこの世界じゃ【本允坊ほんいんぼう】とか貰ってたかな?参るよ~」


 今村の気の抜けた返事と裏腹な猛烈な急襲によって今村と遊神の激闘が幕を開けた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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