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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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8.活神拳とは

「あぁ~強かったなぁ……いい感じだった。素晴らしいね。技の研鑽。武術も進歩しててかなり吸収できたよ。あ、瑠璃たちも協力ありがと。」


 死屍累々。だが、今村が最後に戦っていた面々は全員で今村に総攻撃をかけることで今村から逃げ出すことに成功していた。それを受けて裂傷を負っても今村は笑っている。


「心配させて……もう少し怪我してたら八つ裂きに出てたよ……」

「いや、怪我するつもりはなかったんだが……甘く見てたな。久し振りに大怪我した。本当に強い強い……クスクス……『白雫詩』」


 笑いながら白魔法で一瞬で回復する今村を見て瑠璃は嫌そうな顔をする。


 一応、対峙していたが手出しすればそいつから敵にするという宣言により瑠璃は何もできなかった。アヤメは今村が多少の傷を負った時点で出て、今村に倒されている。


「いや~舐めてた。武術と魔術を混ぜて戦ってたから技の練習台位の気分でやってたらこの様だ。最高だね。」

「ボクは神核止まるかと思ったけどね……一打必殺の技だったんだよ……」

「殺された程度じゃもう死なないし、消滅の術も生半可なやつじゃ効かなくなったから多少心に弛みが出来てた。戒めなければ……」


 そう言って今村は頷く。その瞬間だった。後ろの扉が破裂する。


「……おぉ、しまったな……」

「色々と言いたいことはあるが……取り敢えず、まず言うことは逃げるな!」

「瑠璃!」

「うん!」


 今度やって来たのは今村がこの道場に来る度に気絶させている遊馬少年の師匠であり、今村の元同門の人々だった。


 そして彼らは今村に合体技を繰り出してくる。


「うおぉ……何か凄いなお前ら……」


 そんな彼らに対して今村は瑠璃と阿吽の呼吸で組んで逃げ出した。


「逃がすかぁっ!『悶虐地獄砂塵蹴り』!」

「『破壊神裂円刃』!」

「お前ら活神拳なのにそれ殺しに来てんだろ……まぁいいけど。逃げる!」


 駆け落ちみたいだな~とか考えながら今村に協力する瑠璃の手を引いて今村は道場の大広間から逃げ出し、玄関口で瑠璃の父親に道を塞がれた。


「ぬっはぁあぁぁあっ~!逃がさんぞ……特にその手ぇっ!瑠璃のぷれてぃな手を握るなんぞ1000年早いわぁっ!」

「……ふむ。流石に分が悪いが……まぁ面白そうだし一戦しても……でも試運転で微妙に不具合が生じかねない状態だったしなぁ……やっぱ逃げて修正しないと……見つけた不具合はさっさと直さないとどこがダメな構文か忘れるし……」

「ごちゃごちゃと五月蠅いわぁっ!」


 瑠璃の父親の順手での正拳突きで道場が半壊した。今村は危機を察して事前に瑠璃をお姫様抱っこの状態にし、正拳突きの勢いを利用して空を舞う。


「……さて、逃げるか。瑠璃、俺の家どっち?」

「えへ……えへへへへ……お姫様抱っこだぁ……」


 塀の上に飛び乗ったところで今村は瑠璃に家の場所を尋ねるが、瑠璃は締まりのない笑顔で首に手を回してくるだけで答えてくれない。


 その一瞬で追いつかれた。


「逃がすかぁっ!殺してでも止める!」

「瑠璃!そんなのパパがいくらでもしてあげるからその男をぶっ殺して戻って来なさい!」


 この状態で捕まったらメンテナンスをするのに邪魔になるので今村は仕方なく適当な方向へ飛びながら追ってくる面子に言う。


「ちっ……つーか活神拳……お前らそれでいいのか?」

「活神拳とは元々一殺多生を術として人を救うためにあり、我らが飛燕山では殺しを全否定などしておらぬ!気に入らない奴は殺す!故に!儂はお前を殺して瑠璃を救うのじゃぁああぁぁあっ!貴様は活神拳のことなど気にせず安心して死ぬがいい!」

「何つーことを……あんたらそれ殺神拳と変わらねぇじゃん……」


 瑠璃の父親の宣言に今村は呆れる。この言葉を遊馬少年が聞いたらどんな顔をするだろうか。


「パパ邪魔!やっぱり仁にやられた時に殺してれば……」


 そんな今村から渋々降りて並走している瑠璃は苦々しげに彼女の父親に対して物騒なことを呟く。だが、彼女の父親はその程度では凹まない。


「そうかそうか!瑠璃も久し振りにパパと一緒にお風呂に入りたいか!」

「あんた耳……いや、頭おかしいんじゃないの?」


 斬撃や衝撃が飛び交う中で今村は既に逃げ出す算段も方向性も決まってはいる物のどう撒いたものか……と思案する。一先ず今も自分たち追って来れているのは2人だけだ。


「闘るか……」

「じゃあボクが毛利君を殺してくるね。」

「……せめて倒すにしろよ……まぁよろしく。流石に遊神さんの相手をしながら他と戦う余裕はあんまりない……とでも言うと思ったか?『神・行方不知』!」


 そして疲れるが一番手っ取り早い方法を選択し、瑠璃を連れて研究所へと舞い戻った。











「……あ、瑠璃連れて来る必要あったかな……?まぁいっか。瑠璃だし。お前はそこそこ信用してるから他の奴らにはこんな所があるって内緒な。」

「うん。……ここがどこかも分かんないけどね……」


 研究所について今村は今更なことを思いつつソファに腰かける。対する瑠璃は今回の帰郷に当たって持ち込んだベッドにダイブした。


「すー……」

「匂い嗅ぐのとか止めてくんない?一応魔術で体の汚れは落としてるが時々風呂に入ってないまま寝ることが……」

「?それがいいんじゃ……何でもない。」


 今村も気にしないことにして地上に出た目的の7割は達成したことを確認しつつ新しく持ち込んでいる巨大なカプセルに入った細胞を見る。


「……名前何にしようかなぁ……ウザ……キモ……ゴミ……?」

「ねぇ、それ何?」


 瑠璃は今村の視線を追って枕を抱き締めたままベッドから立ち上がった。今村は後ろを振り返らずに答える。


「最近ぶっ殺した強めの敵で、サンプルを採取する暇があった奴らの細胞を合成して培養してる。あ、後強くないけど突然変異を起こすからドイスっていう前世の俺を殺した遠因の奴も混ぜたな。」

「……それで、何してるの?」


 今村の言葉を聞いて少し引きつつも瑠璃はそう尋ねた。今村は培養液の中にあるコードに思考入力で操作をしてから軽く笑って応じる。


「強い奴を創ってる。」


 目的は告げない。大きな要因としての目的は自らのトレーニングのために制御できる最強の人形が欲しかったということだが細かい要因まで口を滑らせると瑠璃だけでなく原神まで呼ばれかねない事態になるからだ。


「ふーん……トレーニングの為?」

「まぁそうだな。後、最近ウチのペットたちが合体したいって言ってたから安全に合体できるように実験を兼ねてと言う意味もある。」


 猫さんやサーベルライガー、狼、スライム、熊、アンドリューサルクスや巨大なネズミなど多種多様の動物たちが最近進化の最終形態まで行ってしまったがまだ強くなりたいと言っていたことを思い出して今村は理由にそれも付け加えた。


 そして瑠璃はそれ以上追及してこなかった。


「……今日は一緒に寝ようね?襲わないから。大丈夫。今日は我慢できる……はずだから。」

「……俺が襲われる方なんだな……普通お前みたいな魅力の塊みたいな美少女が同衾したら襲うとかは俺の方が言うべきなんだが……まぁ、我慢できなくなったら言ってくれ。叩き出してやる。」


 拳を鳴らした後に右手を左手に打ち付けて今村は好戦的に笑うが、瑠璃が嬉しそうにベッドを整えて横になって隣をぽふぽふ叩くのを見て溜息をついてから風呂に入ると言って出て行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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