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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十七章~帰郷~
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3.今度は武術大世へ

「お父様。百合は大学に行ってきます。」

「……え?今から?」


 自宅に帰って大量の書類、1つ1つが百合の身長を優に超す山となっている山脈に取り掛かる今村を見て百合はいきなりそう切り出してきた。


「いえ、来月からです……お仕事のお手伝いをします!」

「いや、百合……お前まだ5歳……まぁ人間用の大学なら行けないことはないだろうが……自分の将来はもっと考えて決めた方がいいぞ?適当に生きてたらこんなことになるから。」


 凄まじいスピードで大量の書類を処理して行きながら今村はローブの1本で書類の山脈を指し、そのローブも仕事に戻す。すると電話がかかって来たので今村はそれに応対しながら二重音声になって百合と会話を続ける。


『Зто говорит Я. Мы хотели бы получить цены на Ваши продукты. 』

「で、だ。百合は何で大学に?」

「早め早めに行動したいからです。取り敢えず……という精神ですかね?」


 それに今村は頷いた。


『Мы согпасны купить по этой цене. До свидания.』

「大学に行った後のことを考えての取り敢えずの行動なら行ってもいい。」

「……はい。」


 二重音声が聞きとり辛かったが、一先ず百合は今村に納得してもらったと認識して部屋から出て行った。


「……あ~さっきの電話の奴面倒……行きたくないなぁ……」

「今村さんにゃんて言ってたのにゃ?」


 百合が出て行った後、今村の下に一匹の黒猫が近付いて来て、それは一瞬で小柄で巨乳の黒猫耳美少女へと変貌を遂げる。


「……まぁ、買い付けの話だ。あそこ魔力が少ないから一々言語を変えないといけないのが怠いんだよ……そろそろ俺の体にちょっと面白い物を作るからその後は楽なんだが……それより、変身魔術上手くなったな。これなら町を歩いても問題ないぞ?」


 今村の言葉に黒猫耳美少女はその豊かな胸を張って得意げな表情を浮かべる。


「みゃーは頑張ればできる子にゃのにゃ!レイチェルはまだできにゃいからお留守番にゃ!」

「……ま、今から行くところは両方とも留守番だが……」


 今村はそう言って書類をある程度したためた後、重要度がそれほどでもない書類を持って別世界へ向かう準備を始めた。


「にゃ!?みゃーも一緒に……」

「……これから行く世界は魔力とか一切ない世界で、武術が異常に発展してる世界の危険な所なんだが……俺は兎も角、魔術師のお前らも行きたいとは……随分と遠回しな自殺宣言だな……まぁいいけど……」

「みゃーは今村さんの言うこと聞いてお留守番するにゃ!」


 敬礼して来たマイアに今村は苦笑して手をひらひらとさせるとワープホールの中へと身を投じた。

















「はぁ、よっと「仁!」……何でもうバレた……まぁ確かにお前にも用は無きにしも非ずだが……」


 今村はその世界のどこかしらの上空に到着すると同時に斜め上の空から強い衝撃を受け、突撃して来た人物と一緒に着地した。


 そして無事着地したところで飛びついて来た神物に軽く怒る。


「……【精練された美】様よぉ……喧嘩売ってるの?」

「ううん?後、別にここだったらボクの名前呼んでいいでしょ?瑠璃って呼んでよ。」

「……ムカつくから嫌だ。」


 心底嫌そうな顔をして今村は立ち去ろうとするが、黒髪たれ目の滅世の幼馴染美少女に回り込まれてしまった。


「ところで、仁がここに来るってことは多分オロスアスマンダイドの回収なんだよね?」

「……そうだな。」

「採掘権ボクの家で買い取ったよ。」


 今村は溜息をついた。


「……馬鹿なの?お前、飛燕山でんなもん買って何に使うんだよ……」

「仁のお仕事のお手伝い。」


 当人の純粋無垢な眼差しの前で今村は二の句が継げなかった。


「あ~……取り敢えず、軽く鍛え直しにも来たから……」

「ボクの家の道場に行こ!」


 今村は無言で瑠璃の頭を叩いてその勢いのままに瑠璃の胴体を地面に半分程度埋めると溜息をつく。


「はぁ……俺も甘いなぁ……」

「……こんなことして、甘いって言うんだ……まぁいいけどね?行こ?」


 すぐに穴から出てきた瑠璃は今村の手を取って彼女が生まれた道場へと移動を開始した。





「……お、懐かしい顔だ。取り敢えず殴るか……」

「っ!」


 普通であれば理解できないようなことを呟いて今村は屋敷の横に広い門の上に立っている大男の頭上へと跳ね上がってその頭を殴りつけた。


「元気?」

「……たった今、元気じゃなくなったがな……何しやがる!」

「挨拶代わりに一撃くれてやった。」


 思いっきり殴られたことで頭から血を流して文句を言って来る髭の生えた大男は今村のふざけた返答に顔に血管を浮かび上がらせて笑った。


「そうかそうか……何十年ぶりか……ずっと音信不通だった割に、随分ご丁寧な挨拶をしてくれるじゃねぇか……お前がいない間……瑠璃さんがどんな思いで待ってたと思う?……俺からの返礼だ。受け取れ!『旋風斬馬脚』!」


 今村は普通にそれを避けて門から降りた。


「こいつとはちょくちょく会ってたけどな……」

「なっ……」

「あ、しーっ!それ内緒なんだよ……一応当主代理人で色々あるから……」


 地面に降りてそう返事をすると驚く大男。そんなやり取りの最中に今村の腕にべったりと寄り添いながら瑠璃が注意をしてくる。


 その様子を見て大男はブチ切れた。


「……許さん!」

「後でまとめて相手してやるから……」


 門の外に飛び降りて戦闘を続けようとする男のことを無視して今村は屋敷の敷地の中に入った。


「……ん?何か賑わってんなぁ……」

「うん。ボクの姪っ子が何か男の子を連れて来てね、皆で修業付けてるの。そしたら何か増えちゃって……」

「……瑠璃おばさん、か。くすくす……」


 姪っ子と言ったことで今村は瑠璃が伯母さんになったという事実を知り、笑う今村に瑠璃は笑顔のまま怒った。


「ボクはまだ若いからね?神化したのは10代だし……」

「俺はこの体になって一応40年……いや、この前死んだか……となると、20年弱くらいかな?」


 消滅騒動の際に一度死んで体を構築し直したのでこの体はまだ若い。そんなことを考えながら道場の方へと移動すると何だか怪しげな機器の中でトレーニングする男子高校生くらいの年齢の青年がいた。


「だじげでぇぇえぇっ!」

「無駄口を叩く余裕があるんだね。では後1分延長で……」

「……楽しそうだな。」


 思わず呟いた今村の一言により今村の存在に気付いた面々が一斉に振り向いてきた。


「てめ、」

「おま、」

「お、」

「よ」


 そしてその面々全員をのして今村は縁側に座る。その僅か数瞬遅れて機器の中でトレーニングしていた青年とその横で励ましていた女子高生が反応する。


「誰です!?」

「し、師匠!」

「……最強モードってのがあるのか……どれ。」

「仁、あんまり虐めたらダメだよ?」


 気絶させた全身黒で統一された道着と袴の男性から機器の操作らしきものを奪うと動きを最速にしてみる今村。瑠璃はそんな今村をやんわりと窘めるだけだ。


「瑠璃姉さん!その方は……」

「ん?ボクの将来の旦那様だよ。前から言ってたでしょ?」


 瑠璃の何の衒いもない言葉に死ぬ気で機器から脱そうとしていた青年と臨戦態勢を取っていた少女の動きが止まる。


「あっ馬鹿……」


 その所為で青年は怪しげな機器の一部分に巻き取られて大ダメージを負い今村はそれを止める。すると青年はすぐに復活してこちらに帰って来た少女と一緒に全力で驚愕の声を上げた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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