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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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29.去らばエクセラール

「おじじょうざばぁ~!」

「……ん?」


 封印術式を組み上げつつエクセラールの歴代神宝、「蒼炎のローブ」の解析を行い、尚且つこの世界の存続の為に様々な術式を施していた今村は誰も踏み入れることが出来ないはずの場所で聞き覚えのある声を聞いてその作業を止めて顔を上げた。


「……あれ?ちょっと暖かくなってる……-1万℃くらいかな?この場所だけもっと下げておこう。」

「うぇぇえぇぇん……生きてたにゃぁ……良かったにゃぁ……」

「心配……した……!」


 泣いたり怒ったりしながらこの場所に来た3人に対して今村は首を傾げつつ無視して術式の更なる付与に戻る。


「さて……どうしよっかなぁ……このまま単なる封印じゃ面白くない。歴代の素晴らしいエクセラールの神々のイメージを台無しにしたこのゴミ屑にはやっぱり罰が必要だと思う……あ、邪魔。退いて。」


 そろそろ仕上げに入る辺りで今村は手を止めて首を傾げる。ようやくこの場に辿り着いた白黒犬猫コンビと聖女様が抱き着いて来るのも完全に邪魔扱いして今村は封印術式を弄り始めた。


「ひゃ、100年近く経ってるんですよ……そんなあっさり……」

「あ、100年も経ってるの。へぇ。……流石にちょっと娘に電話でもかけないとダメだな。……ん?ゲネシス・ムンドゥスの時の流れがおかしい?俺に合わせられてる……」


 割と衝撃的な告白に対して今村は非常に軽く応じてゲネシス・ムンドゥスの時の流れの不可解な点について気付く。だが、今村に合わせられて流れているのはここ最近らしい。


「……ん~……エクセラールは元々かなり時の流れが遅い方なんだが……その中でもここは更に遅い。それと同じスピードでゲネシス・ムンドゥスみたいな軽い世界が

時の流れを遅々とさせるって……まぁいっか。一応異常はないか訊くか。」


 ローブの一端で連絡を取るとものの10秒で返信が来た。特に問題はなく大丈夫だが、向こうでは既に5年の歳月が流れたそうだ。


「ん~……流石に小学校の入学式には出てやらねば……つーか、七五三にも出るべきだったんだが……3歳の時を逃してしまっては仕方ない。次は7歳だし……代わりに何かそうだな。桃の節句辺りに今から帰ってお祝いしなければ。そうと決まれば急いで術式を……おっ。ナイスタイミングでこの世界の術式が解析終了……?」


 今村はこの時点で自らの体の異変に気付いた。そのついでに自らを抱き締めている少女たちの異変にも気付く。


「……何かお前らやけに魅力値が高くなってるな……成程。第1世界の高位神であるユルティムが犯そうとしたのにも納得。……それはそれとして、俺この外枠の魔力をかなり吸収してる……その所為で抑圧の力が弱まってるのか……つーか俺マジで化物様だ。凄い。」


 そう言って今村は笑って髪を一房動かし、ユルティムとセイが氷漬けにされている封印に触れさせる。


「さぁ、とくとご覧じよ。これが、世界に名だたるエクセラールの魔法を改良して出来上がった俺のオリジナル【魔導式】だ……クック……せ、【無垢なる美】はこんな便利な物を使ってたのか……ズルいな。」


 一瞬で書き上がる封印術式、それに意識のみを時折切り離して今村が最初に落ちてきた森にいる巨大な虫どもに憑依させることを加えた後、今村はくっついている3人のことを忘れて飛翔した。


「ふむ……加減が効かなかったらどうしよう?まぁいっか。直接教育はしたら変に育つからダメだけど流石にお祝い事は祝ってやらねば。早く帰るぞ。」


 そんな独り言を呟きつつ今村は神速で移動を開始する。3人娘たちはそんな今村にしっかりと掴まって同行した。











「ふぇぇ……お帰りなさいませご主人様だわん!」

「何これキショイ。」


 森羅万象破壊丸の下へ向かった今村を待ち受けていたのは中年のおっさんのメイド服姿だった。


「もぉ、そんなこと言ったら駄目だぴょん!」

「え、マジで何コレ。」


 今村は崩壊した城の門の近くで真面目な会議をしている森羅万象破壊丸の乗組員たちの方を見る。

 するとガチムチの黒光りする筋肉を緑の軍服に包んだ男が真面目な顔をして立ち上がり、今村の前に出てきた。


「ボス。俺は言ったんですよ……やっぱりうっきーが一番似合うって……それなのにこいつらは俺の話を聞かないで……!」

「お前こそ俺の話を聞け。これ何?」

「にゃん丸です。」


 真顔だった。今村は何も言わずに溜息をつく。そんな男に対してしがみ付いていたマキが挨拶をした。


「ジョージさんでしたよね?こんにちは。」

「うわっ……居たんだ……」


 今更同行していた面々に気付く今村。そしてふと思い当った。


「うっきーだの何だの言ってるが……あざとさならこの二人を見習え。この二人は俺が今まで見てきた中でトップ100に入るほどのあざとさを持っている……」

「……もう……それでいいにゃ……」

「……諦めた……」


 そう言いつつマイアとレイチェルの二人を前に出す今村。にゃん丸と呼ばれたメイド服のおっさんが涎を垂らして血走った眼になりそんな二人に飛びつこうとするのを森羅万象破壊丸の乗組員たちが拘束して今村に尋ねる。


「成程……語尾ににゃを付けて喋る黒猫耳&尻尾+ロリ巨乳……数え役満ですねこれは……」

「こっちも凄いわ。ジト目に無表情。寡黙系でさっきまでボスに抱えられていた時からのギャップ……フルコンボよ。」

「にゃん丸ハウス!」

「躾のなってない駄犬にはお仕置きが必要ね……」


 カオス状態になって来たこの場で今村は取り敢えずぜんぶどうでもいいことと割り切ってから森羅万象破壊丸に乗り込む。それを見て乗組員たちもすぐにそれに倣った。


「ボス!次の行き先はどこですかい!?」

「ゲネシス・ムンドゥス……まぁ飛んだ方が早いかもしれんがちょっと原神に対する挑発行為に近い物をやってしまったからな……戦闘、ステルス機能が万全のこれに乗って逃げたい。」


 原神寄りの神でも大幹部に位置する者が命じられるエクセラールの主神。そんな人物を普通に封印したことを思い出しながら今村は乗組員にそう言った。


「OK!ステルスを完全にするには少し時間がかかりますんで!」

「俺が創ったんだからそれ位知ってる。」

「HAHAHAHA!一応確認ってやつでさぁ!では少々お待ちを!」


 慌ただしく動き出した4人を見送って今村は彼らが会議の為に今まで使っていたテーブルセットに腰かける。


「あ、あの、お師匠様……」

「ん?」


 無駄にいい素材で出来ている椅子に座って本を開くとマキがおずおずと今村の方に近付いて来た。


「に、任務終了とありましたが……これからは……」

「……自由にどーぞ。やることないならレジェクエの本町にでも行けば?」

「はい……」


 しゅんとしてこの場から消えるマキ。今村はそんな彼女を見て男に戻らないのな……とだけ思いつつ本に目を落とす。


「あ、あの、今村さん……みゃーたちは……」

「何?」

「ど、どうすればいいのかわかんにゃいにゃ……」

「……何で俺に訊くの……まぁいいけど。やることないならウチに来れば?」


 今村はすることが無くて困っている様な二人にレジェンドクエスターズの社員として働くことを提案した。それを聞いた二人は顔に花を咲かせる。


「行っていいのにゃ!?」

「……別にいいけど?」

「お邪魔しますにゃ!」

「よろしくお願いします……」


 今村は何となく二人が考えていることが自分と違う気がしたがまぁいいかということにしてそろそろ準備が出来そうな森羅万象破壊丸に乗り込んだ。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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