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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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27.そろそろ帰ろう

「よし……これならいけるはず……」


 今村は3日ほどの経過を経て、魔法などにより骨格から変わり、押しも押されぬ美少女達に成り上がった元虐められっ娘のユカと元虐めっ娘のジュナを見て微笑んだ。


「……あ~やっと終わったの?じゃあドラゴンでも倒しに行こうよ。」


 今村の発言を受けてここ最近は窓際で梅こぶ茶や昆布茶、緑茶に時々白湯などを飲んで老人かな?と思えるような生活をしていたセイが今村の発言を受けてとんでもない事を言ってのける。

 そんな彼女に今村は軽く返事を返しつつ、次にやるべきことを果たしにかかった。


「いや、先にこいつらを馬鹿弟子……もとい、聖女様の所に送り届ける方が先だ。いや、呼んだ方が早いか。マギウスー「はい!」さぁ括目しろ!」


 呼ばれて教室のドアをから勢いよく飛び出て来た聖女様に今村は万全のメイクをして綺麗なドレスを身に纏った二人を見せる。


「……?これが何か?」

「まぁ、取り敢えず小一時間ほどこいつらと同席してから外で散歩デートをした後、食事、そしてまた合流という流れになる。」

「はぁ……わかりました……?」


 今村が何を言っているのかよく分からないが、取り敢えず聖女様であるマキは命令に従ってその通りに行動する。


「じゃあその間に……まぁセイがドラゴン倒したいって言うから仕方ない。狩りに行くか……マイアかレイチェル。暇なら案内してくれない?嫌なら言って。」

「狩りまくるにゃ。」

「……いつから、同行しないと思ってたの……?行くよ……?」


 聖女様と虐めっ娘及び虐められっ娘がデートする間に今村はドラゴンクエストに行くことになったようだ。


 そんなこんなで方向性が決まったところで一向は別れて行動することになった。











「……おぉ~魔素が濃い……俺ここにしばらく住もうかな……」

『我が領域を犯すのは何者だ……』


 道案内を受けてドラゴン狩りに出かけた今村たちは途中であまりの魔素の濃さに今村以外がドラゴンがいると言われる山の火口付近にまでは近付けず、麓で待機していた。


「あ、どうも。今村って言います。ちょっとお邪魔してますね。」

『……う、む?何を言っているのだ矮小なる者よ……我が領域を犯しておきながらそこに居座ると?』


 強靭な四肢に比翼を持ったドラゴンが今村を威嚇するように魔力を溢れさせてそう言う。そんなドラゴンに対して今村は若干気不味そうに口を開いた。


「いや~……ドラゴンと思ってたんですけどねぇ。龍っぽいしなぁ……本流じゃないみたいだけど……」

『あんな愚か者と我を同格と見たか……ならばその節穴の如き目を抱いたまま己の愚かさを後悔し、死ね!』

「……あ、正当防衛だ。じゃあお前が何であっても関係ないわ。」


 迫りくる漆黒の炎を前に今村はそう言って呪刀を抜いた。そしてそのまま炎ごと目の前のドラゴンを切り裂く。


『な……馬鹿な……』


 深い手傷を負ったドラゴンが驚愕の声を上げてたじろぐ。そんなドラゴンに対して今村は笑いながら肩に呪刀を担いでゆっくりと近づいた。


「あー……ドラゴンだったかぁ……ちょっと長生きしただけの……こんな魔素の溜まりに溜まった空間で仙氣があるから勘違いしちまったよ。失敗失敗……こんなのがバレたらマジギレされるわ……」

『お前……一体……?』

「ま、化物の一種だと思っていてくれ。それじゃ、正当防衛ってことで死んでくれるね?【白礼刀法・五の型】『畏圧重刃海いおえなみ』」


 今村の鋭い刀舞によって微塵切りにされたドラゴンは取り敢えず様々な材料と一緒に捏ね合わせられて火口のマグマによってハンバーグにされる。


「お~魔力が豊富だし、栄養価抜群。美味いし、いいね~俺しばらくここで過ごそう。」


 そして今村はこの場でしばらく暮らすことを決める。


















「……帰ってこにゃいにゃ……」


 一晩が経過しても帰って来ない今村にマイアたち麓駐留組が不安気に魔素が濃い山頂を見上げていた。


「……魔素が濃すぎて今村がどうなってるのかわからないわ……」

「……魔力の探知も出来ない……」


 契約精霊のセイと白犬娘のレイチェルも不安な顔で山頂を見上げる。因みに今村は現在、巨大なドラゴンの鱗を使ってその上に乗っているドラゴンの挽肉で直径1メートル程の巨大ハンバーグを作ってティターンハンバーガーを作っていたりする。


「やっぱりみゃーたちも行くべきかにゃ……?」

「無理よ……精霊の私ですら近付けないのにあなたたちが行けると思えない。行けても精々六合付近が限界よ……」

「……別の場所に案内すれば良かった……」


 レイチェルは自分の選択ミスに歯噛みする。彼女は今村に危ないことをして欲しくなかったので近付けない場所へと行き、予定ではピクニックのようなことをして帰るつもりだったのだ。


「……皆さんこんな所で何を?」


 この場でどうすることも出来ない無力感に苛まれていた一行に少し幼い声が掛けられる。その声を聞いた瞬間、白黒犬猫コンビはその場に跪いた。


「せ、聖女様?」

「何故ここに……」

「……何故って……お師匠様が後で合流って言ったのに1日経っても帰って来なかったから匂いを辿って来たんだけど……あ、そんなに畏まらなくていいよ?」


 軽く獣人族の嗅覚を凌駕することを口にする聖女にマイアとレイチェルは引きつつも現状の経緯について話す。それを聞いてマキは頷いた。


「じゃあ行って来る。……あ、もし僕が帰って来なかったら死んじゃったってことだから。その時はお師匠様によろしくね?」


 目の中に狂気と見えるナニカを宿しつつマキは軽く笑いながらそう言って山に登ろうとする。だが、その一瞬で頂上付近から魔素が掻き消えた。


「……何か美味しそうな匂いがしてきましたね……」

「にゃ……?にゃんにゃ……?高笑いが聞こえるにゃ……?」

「っっっ!い、今村の魔力が……」


 異変に気付いた面々は一先ず今村の無事を知り、安堵するがそれと同時に今村の変化に気付いて反応が分かれた。


「あ、お師匠様の魔力が戻って来てる……ん~大体僕の10倍くらいかな?」

「また今村さんは非常識だにゃ……」

「……あの人だから、仕方ない……」


 だが、精霊の方はそうはいかない。


「お、おかしいでしょ!?何でそんな普通に……」

「いや、そういう人だから……」

「多分まだまだ集めると思うにゃ。」


 精霊はその答えに驚きのあまり絶句し、山に登ろうかどうか相談する一行を前にようやく意識を取り戻して反論してきた。


「はぁ?……今、視えてないの?あの禍々しい魔力が……あれ以上なんて……」

「禍々しい?格好いいじゃないですか。」

「にゃ。」


 首肯する一行に精霊は再び何も言えなくなり黙る。そんなことをしていると山頂から小さなハンバーガーを持ってきた今村が降りてきた。


「よぉ、10日ぶり。」

「……あ、こっちだと1日ぶりです!」

「む、そうか……契約が切れてないわけだ。」


 今村が自分の体に結びついている魔力糸を見つつそう言うと精霊は悲鳴のような物を上げて全力で平伏した。


「ご、ごめんなさい!」

「ん?……あぁ、そういう……まぁ気にするな。そういう精霊とかは多くいるから今契約を止めれば……命だけは見逃そう。」


 精霊は今村が何を言っているのかはよくわからないが、逃げ出したい一心でその申し出を受けて全力で逃亡して行った。


「……さて、もう少し巡ってから帰るか……マギウス。お前の任務は終わったから好きにしていいぞ。……それと、自分の好きな性別になれる札をくれてやる。何度も使えるから好きに使え。じゃあな。」


 そう言い残すと今村は宙に舞いあがり、邪悪に嗤った後に小さく、それでいてよく通る声で術を形成した。


「『ドレインキューブ・セオイアル』。さぁ、魔導大世よ。その有り余る力を貰い受けようか。」




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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