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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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25.都合のいい女

 都合のいい人を探して今村は校内を精霊と一緒に適当にうろついていた。当然監視役として学校から選抜された最高(笑)のメンバーがやって来るがその当人はデート感覚で同行している。


「今村さん。にゃに探してるにゃ?」

「都合いい女……何か言葉にすると俺最低みたいだが……まぁ事実か。」

「……?にゃんかよくわかんにゃいけど、みゃーは今村さんやしにゃうよ?今村さん限定で、都合良いおんにゃににゃるにゃ。」

「……俺にだけじゃ駄目。マキにとって都合のいい女を探している……」


 今村がマキに直接尋ねた結果、彼女の理想の女子像は結構アレだった。


 まず、自分より背が低いこと。そして、守ってあげたいと感じさせるようなあどけなさを持った子。胸は大きい方が好みらしい。性格は甘えん坊で浮気は絶対にしない。最後に自分にだけちょっとエッチな子がいいらしい。


 要するに一途でちょろく、都合のいいロリ巨乳ということだ。


「……ちっ。魔法が使えれば簡単に改変して生み出してやるんだが……んな面倒なニンゲンいるかよ……まぁ条件に合いそうな奴を探してそれっぽくするが……」


 舌打ちしながら今村は校内をうろうろする。その途中で絡まれたり妬みの視線を受けたりするがそれらに対しては睨み潰して殺気をぶつけ、失禁して失神させるだけで済まして今村は広い校内を巡る。


「……何かデジャヴ。」


 そうしていると校内の裏側で虐められている女の子がいた。そしてそれを取り巻いているのはどこかで見た顔だ。


「……ん~……おい監査官。ああいうのは止めないでいいのか?」

「みゃーは今、最重要任務中にゃ。」

「……あぁもうかったるい……オイガキども殺してやるからさっさとこっちに来やがれ!」


 八つ当たり気味にその一団に声をかけると全員が剣呑な表情でこちらを見た後に凍り付いたように固まる。


「ちゅ、昼夜の悪夢……」

「誰のことだ?」

「……ちっ。あんた……この学校に……行くわよ!」


 逃げるようにして去ろうとした女子学生たちを今村は逃がさなかった。殺気で全員を射竦めると一瞬で間を詰め、その全員の顔と体を見てメモを取る。


「な、何だい!?」

「……俺的に悪人だったら、何してもいいから……まぁ、胸はあるし顔も素材はそこそこで悪くは……ないな。正しいメイクで詐欺れる。」


 今村は誰の目にも映らぬ速さで一団の中の一人の顔に指先で触れて氣の流れを操り血流を弄ってからその場から崩れ落ちさせた。今村がこの場の誰も視認できない速さで元いた場所に戻ると同時に少女は地面を濡らす。


「ジュナ!」

「あ……ぅ……気持ちいいよぉ……」


 恍惚な顔でそういう小柄な女子生徒に一団がそれを庇うように囲んで今村に敵意を向ける。


「変態!ジュナに何をした!?」

「今村ぁっ!?女の子に何したの!?」

「俺が何かしたように見えんの?特にそこの非難してる契約精霊。お前、俺と魔力共有中だろうが。」


 今村は一応訊いてみる。仮に、何かしたように見えるであればもう少し早く動かなければならない。そして運動能力だけで動いていたつもりだが、魔力を使っていたのであれば術式の改善をしなければならないなどと思いつつセイに尋ねるとセイは困ったように口を開いた。


「……あんたなら何が起きても不思議じゃない……魔力を一切使わずに殺気でその子を……その……ぃ……せた……とか!」

「ドマゾかよ。」

「そうかもしれないでしょ!」

「ち、違うよ?」


 ジュナと呼ばれた娘にドマゾ疑惑が上がると庇っていた一団が微妙に距離を取り始めた。殺気で射竦められた面々からしてみるとド変態にしか見えなかったのだろう。


「あ、あんたら、ジュナがドマゾでも、私たちは仲間じゃないか……?」

「疑問形なんだなそこは……自分たちもドマゾ仲間って断言してやれよ。」

「あたしドマゾじゃねーし!あんたなんかにイカされたりもしねーよ!」

「……くっ殺さんなの?まぁどうでもいいや。仲間じゃないならそこのまだ恍惚としてる奴を置いてさっさとどっか行け。」


 一団のリーダーらしき人物はうっとなった。今村が今言っている仲間という言葉がドマゾ仲間という意味に取れてしまい、素直に手を出すのには躊躇われたのだ。


「ナージャさん……私のことは良いですから……逃げて……」


 ジュナと呼ばれた子は献身のつもりでそう言ったが、その言葉は決定的な一言になった。


「ドマゾかよ!」

「ジュナキモい……」

「行こ行こ。」


 虐められたいと勝手に翻訳した一団は文字通り普通にジュナを置いてどこかに去って行った。案外乗りの良かった一団のリーダーを見送って今村はその地面を濡らしている子どもと虐められていた女子生徒をまとめる。


「……虐められた奴。」

「ぴっ……あ、あの、私、殺しても、楽しくないですよ……?虐めても、喜びませんよ?」

「別にんなことしねーよ……」


 今村はセイとその少女を並ばせる。虐められていた少女はセイよりも大分小さいが、胸と尻の発達だけは著しいトランジスタグラマーのような体形をしていることが分かる。


「な、何ですか……?痛いのは、嫌です……何でもしますからぁ……」

「……まぁ割と最低な質問するけど、いい?お前処女?」

「はっ、はひぃいぃっ!根暗でチビなので、まだ、です……」


 今村はへたり込んでいるジュナと呼ばれた少女と現在目の前で怯えている虐められっ娘を見て頷く。


「これなら、行けるはず。今君何でもするって言ったよね?」

「え、あ……」


 虐められっ娘の少女は何を考えたのだろうか。取り敢えず碌な目に遭わないだろうと考えて悲観的になり、泣きつつも痛い目にあわされたくないと言う一心で頷いた。


「……まぁいいや。経緯はどうであれ協力してくれるならいい。そっちのは多分余罪がいっぱいあるだろうから拒否権なしな。」

「あ……はい……」

「マイアはこの二人を俺のクラスに編入する手続き……」

「やってるにゃ。」

「凄いなお前……」


 今村は先ほどから黙って書類を作成しているマイアに少し驚きつつ基本的に部屋の中が余りまくっている自分用の教室に二人を連れて移動して行った。
















「はい、初回授業はメイク講座から~!」

「ちょ、何?何で私拘束されてるの!?」


 教室に帰った今村はマイアが適当な部屋から調達して来た席に虐められっ娘のユカと元いじめっ娘のジュナを座らせてセイを拘束してメイク道具を大量に出した。


「はい。基本的にメイクの力は偉大だからね。すっぴんで世界を惑わすレベル位の奴ら以外は大体メイクした方が可愛く魅せられるよ。んで、メイクした方が微妙って言う奴はメイク術が微妙なだけ。可愛いは造れるっ!」

「あんたメイクとかしてるの!?適当にやっても……」

「……ちょっと昔……ある馬鹿の結婚式のために全力で頑張って覚えたことがある。きちんと優勝したから安心しろ。」


 セイの言葉にそう言ってからまず最初に今村が行ったことは虐めっ娘の方であるジュナの濃いメイクを剥ぎ取ることだ。


「ぎゃーっ!」

「お前のはメイクがくどい。それと化粧水とかで肌を整えるのをあんまり……そうだな。多分毎日1度程度しかやってないな?」

「た、高いし……勿体ないじゃん……」

「甘い!お前らはまだ若いから実感がないだろうが……今はチュートリアルっつっても分かんないか?肌に対するダメージは殆どないように見えてるだろうがな?後10年もすれば即行で劣化するぞ!それに、ファンデのノリが違うからこれからは毎日化粧を落とした時、風呂上り、そして化粧前に使うこと!」

「それより私の顔がどうなってるのか気になるんだけど!?」


 説教紛いのことをしながら適当にメイクをされているセイがそう叫ぶので今村がそちらを振り返ると彼女は隈取のメイクをされていた。


「……あ、間違えた。今のナシナシ。」


 今村は適当な瓶を出してその液体を一滴布に垂らして顔を拭き、それらを全部落としてからメイク術講座を開始した。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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