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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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24.恋愛感情による思考誘導

 ちょっと分割することになったので章題が変わりました。

 試験の結果。文句なしで合格と授業の免除を受け取った今村は当然の如く監視対象になった。


「……だぁかぁらぁっ!授業を受けないのに何で学校に来てんだよ!俺は!学園生活を寄越せと言っているだろうがっ!」


 今村は荒れていた。


 監視対象という名だが、監視できるほどの実力を持った選抜メンバーたちは顔見知りな上、学校のトップ付近を牛耳っているらしい馬鹿息子の弟子が強権を振りかざし今村用の特別教室を作ったことで全っ然学園生活とは言えない何かを送らされているのだ。


「……まぁ、それはさておき。」


 そんな今村は急に落ち着く。術なしの「百蘭冷棄却法」での鎮静化をして考えるのは娘になってしまった息子のことだ。別に中性だからどっちになろうともいいのだが、本人はどう見ても女状態なのに男状態と同じ感覚で周囲と接しているのが問題となっている。


 現に、先日試験の際にやって来ていた4人の男たちは全員マキにベタ惚れでいるにもかかわらず、彼女はミリ単位で意識していないのだ。それにもかかわらずマキは一般的な女子としては過剰なスキンシップを取っており、それが彼らを更に堕とし込んでいる。


「……これなら最初っから女として育てた方が良かったよなぁ……でも拾った時に当人が男って言ってたしよぉ……」

「何に悩んでるの?」

「マ……キだ。アレの育て方間違えたかなぁっ「そんなことありません!【魔神大帝】様の素晴らしい教育があってこそ今日の僕があるのです!」……」


 セイと二人きりだった教室に問題のマキさんが突入してくる。何で聞こえてからノータイムでここに来れているのか不思議だが、今村はまぁ魔法の世界だし仕方ないで済ませて無視する。


「ちょっとアリアとか呼んでみよう。」

「え?お姉様を?」


 今村はまず最初に別に術式を使わずにアリアと普通に呼んでみる。すると薄いグレーで軽くウェーブをした長い髪をしたタレ目で柔和な印象を受ける病的なまでに白い肌をした神秘的な雰囲気を醸し出している美少女が降ってくる。


「ごぜ「そういうのいいから。」……でも……」

「そんなことよりこいつを見ろ。」


 何の術式も使っていないのに現れたアリアから多少引きつつ今村は目の前にいるミニマムなプラチナ色の髪をした美少女を指した。


「……?また妾の人を増やしたんですか?」

「……色々言いたいことがあるが、まず俺は妾も何も本妻もいないからな?それとこれはお前も知ってる奴だ。」

「……もしかしてマギウス?」


 すぐに当てたアリアに今村は驚き、マギウスことマキは頷く。


「はい。お姉様。色々あって女の子になりました。」

「あら、そう。……お父様の妾になるため?」

「……アリア。ちょっと話があるぞ?」


 今村は笑顔でアリアの頭を拳で挟んで減り込ませた。


「うぅ……それで、これがどうしたんですか……?」

「ちょっと会議を開こうと思ってな。アストーとかは潜入が下手だから今回は呼ばないが……マギウス。今はマキになったが……こいつの性別をどうするか。と言う問題だ。」

「僕はお師匠様の言う通りにしたいです!」


 マキは元気よくそう言った。今村はそれを無視して空を仰ぎながら梅こぶ茶を啜っている精霊の方に尋ねる。


「セイは?こいつ男にするか女にするか。」

「ふぇ?何で私に訊くの?好きにすればいいと思うわ。」

「分かった……」


 最後に残った昆布を食べつつ新たな一杯を作っている精霊から目を逸らして今村はアリアに同様の質問をし、それを受けたアリアは逆に今村に尋ねる。


「お父様はどうお考えですか?」

「……俺?こいつの素の精神体が近い方になって欲しいが……お前どっちの方がいいの?このままだと性別が固定化される術式が何か発動してるから今の内に決めておいた方がいいぞ?」

「僕は……一応、男です……けど……」


 そこで不意に区切ってマキは今村の方を見上げ、顔を頬に染めて俯いてもじもじし始めた。


「あんだよ。」

「……お父様とシテみたいと……」

「死ねよ。」


 今村はノーモーションでアリアの頭を梅こぶ茶を飲んでいる精霊の力で撃ち抜いた。アリアは目に涙を浮かべるものの特に怪我はなくその場に残る。


「……その、変……だよね?僕……男……男なのに、お師匠様に抱きつくと……お腹の奥がね?何かきゅって……」

「……取り敢えずお前俺に抱きつくの禁止。もしくは死刑。」

「えっ……」

「何で意外そうな顔してんのかわからんのだが……まぁそれは置いておこう。そうだな……アリアを見て、股間が疼いたりしない?」


 今村の問いに先程撃ち抜かれた頭を摩っていたアリアが飛びついて今村の方にやって来る。


「おおおおおお、おお、お父様っ?」

「落ち着け。ただの確認だ。……お前らは一応姉弟……?今は姉妹?まぁどっちでもいいが血が繋がってないから、そう言うこともあり得るだろ?」

「そ、そそ、そんなことより、お父様は……その……」


 視線が股間に向かっていることに気付いて今村は呆れて苦笑した。


「俺はしない。」


 その一言でアリアは冷や水を掛けられたかのように大人しくなって、やさぐれた。


「……いーんですよーだ……どーせ私は魅力ないですから……」

「ん?」

「お父様……やめてくださいよ?一般的な魅力があるかどうかで言ってませんからね!?」


 ん?だけで今村がやりそうな行動を予知したアリアはやさぐれた後にすぐに立ち直って今村に食って掛かる。


「今村さーん!ご飯食べに来たにゃ!」

「ちっ……マキ、お前またこんな所に……」

「……私も、食べる……」

「マキさん。こんなところに……勝手に出歩いてはダメですよ?そろそろ自分の立場と言うものを……」


 そんなことをしていると白黒犬猫コンビとマキをターゲットにしている男たちが現れて今村たちの教室の人口密度が一気に跳ね上がる。その瞬間にアリアはこの場から離脱していた。


「ちっ……観察対象様はおモテになることですねぇ……マキ!まだお前の分の仕事は終わってねぇだろ?とっとと帰るぞ?」

「えっ、あっ……お師匠様!また後で!」


 マキはそう言いつつ赤髪の男に手を引かれて教室から去って行った。その際に無言でこちらを睨んでくる青い髪をした男に今村は歪んだ笑みを浮かべて見送った後にマイペースに弁当を開ける白黒犬猫コンビに尋ねた。


「……これは勘だが。あいつら、かなり地位と権力と金、そして魔力を持ってる奴らだろ?」

「にゃ?……まぁ、そうにゃ。みゃーたちは今村さん一筋3年であんにゃのどうでもいいからよく知らにゃいけど……」

「王族の人と、宰相の一族の人……マイアは無知すぎる……」


 白犬、レイチェルの言葉に黒猫娘のマイアが食って掛かるが、今村はそんなことはあまり気にせずに馬鹿息子にかけられた術式のことを思い出した。


(……女体化。そして……あの術式には恋愛感情の傾斜による性別選択への思考誘導させる術式が入ってるからなぁ……それがなければ現状はあいつの素の考えって納得できるが……少し、男で固められすぎて女になる意思が高過ぎる……)


 現在、魔力を置いて来ているのでそこまで詳しいモノは視れない。解呪など更に出来る物ではない。


(ちょっと、女でもあてがって中和させるか……目の前の3人は……これまでの経験上碌なことにならなさそうだから……何か都合の良い奴いないかね……)


 そんなことを考えつつ今村は白黒犬猫コンビから押し付けられる弁当類を感謝して食べることにした。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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