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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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23.試験を受けます

「治せよ!ったく……この馬鹿弟子が……」

「あぅぅ……ごめんなさい……」


 女体化した原因はこの世界の神のようだった。だが、その程度であれば何とかなるようにしていた今村は目の前の聖女ことマキの頭を結構な勢いで叩く。余波だけで地面が割れたが当の本人は平気な顔で試験を受けに行く今村を見送った。


「ぅぅ……私が居た頃は精霊と人間は協力して……ううん……寧ろ、人間は精霊に頼って生きていたくらいなのに……この扱いの差は……」

「いいからさっさと試験に行くぞ。」

「みゃーたち試験官補佐ににゃったにゃ。」

「……私たち、補助……」


 マイアとレイチェルの二人が荷物を持って歩いていた男性職員二人に襲撃と脅迫を掛けて役目を奪って今村の後ろを歩く。


(……後で、学内での基本ルールを決めるか……今のこいつらと術を使わない俺だと戦闘してたらちょっとばかり学園生活が面倒になるし……)


 何故か異様なほどに強くなっている二人を見て今村は溜息をつく。彼は基本的に個人行動しかしない上、信者など出来るはずもないし、仮にいたとすれば気持ち悪いと考えている為、自分の加護についてなどの神々の信者への付与能力をほぼ覚えていないのだ。


 そんなことを考えて歩いていると比較的にすぐに試験場に着く。試験官は優男で今村を見るなり敵意丸出しで表面だけ笑顔になり口を開いた。


「……受験者ナンバー04430315。コネでこの学校に入学できると思うなよ?試験をしてやるからさっさと実技だ。何、いきなり最高学年に編入しようとする程の実力があれば簡単だろう?まずはクラフトから。お題は浮遊物だ。」

「はーい。『無斬』。『機械術』。」


 今村は材料を大量に斬り揃えるとナノサイズの粒子に指令を出して即行で空飛ぶ要塞を作り上げてニヤニヤしながら戦闘用に改造し始めた。


「ノってきたぁっ!Year!」

「ま、待て!待て待て!合格だ!」

「折角学業に関する物の建造物ってことで規制が緩いのに……最悪、創れって言った人の責任に……」


 大量の本を読んでその辺が詳しくなっている今村は不満気に小声でそう呟いたが試験官の言葉に従って次の試験に移る。


「次は魔法陣の解析、及び欠損の修復だ。くれぐれも「わーい楽しそうな物見っけ!」待てぇっ!いいか?さっき浮遊物に付けようとしていたような危険な術式を付けるのは禁止だからな?」

「大丈夫ですよ。法は犯さないように……「もっと一般的な学生が使う術式だけにしてくれ!」私の中では私が普通なんですが?」

「それはにゃいにゃ。」


 魔法陣を持って来ているマイアがそれだけはないと言う顔で今村にそう言いつつ魔法陣を宙に浮かせる。それを見て迷うことなく一番難しい術式の方へと行こうとした今村を試験官は止めた。


「あちらにしろ。」


 一番簡単な術式。マッチの炎が灯り続ける程度の術式が描かれた方を指す試験官に今村は歪んだ笑みで以て応える。


「……え?いいんですか?じゃあお言葉に甘えて……さぁ始めようか!『温度調節をこの世界に存在できる範囲内で自由自在に調節可能化。勢いをオイル切れのライターから超新星爆発レベルまで調節可能化。座標指定を抽象イメージでの補正。属性を斬。円。玉……』「待て!色々待て!いや、もう!待ってください!お願いします!」え~?まだ……「合格!次!」……ちっ……」


 まだまだ遊び足りなかったので今村は舌打ちした。試験官の方はほぼ私怨で今村を落とそうと思っていたのにあまりの規格外さに少し考えを改め始める。


 だが、目の前で学園の獣人系2大美少女のレイチェルとマイアにチヤホヤされている今村を見てその考えをドブに捨てた。


「次……これが出来なければ、お前がこの中央魔道育成総合学校に入る意味はないからな……?レイチェル魔力測定だ。」

「……今村さん……頑張って……」

「まぁ、最高学年に入るのであれば……少なくとも億は……」


 今村は魔力測定紙を握ってそのままセイから力を吸い上げる。


「んっ……く、ふぅっ!」


 セイの艶めかしい声が響く中、魔力測定紙は今村の魔力に耐えられずに燃え尽き、それを見て今村が魔力の吸い上げを止めるとセイの荒い息以外は何も聞こえなくなるほどの静けさが舞い降りた。


「……今のは、1000京まで図る紙だよな?」

「はい……これ以上は、流石に持って来て……」

「そうか……」


 沈黙が舞い降りる。


「レイチェル。何か細工を……?」

「……あの、ジャグルアミン先生も確認したと思いますけど……これ……」

「あぁ、いや。あんまり事実を見たくなかっただけだ……レイチェルを本気で疑っているわけじゃない……今日はいい天気だなぁ……あの鳥たちみたいに空を飛べばとても気持ちがいいんだろうか……」


 試験官は空を見上げてしばらく黙った。


「飛びたいなら飛ばそうか?」

「そういう意味じゃない……」


 今村の言葉に疲れたような反応を返した後、更にしばらく黙ってから試験官は切り替えた。


「よし。最後に的を破壊する……」

「レイチェル!全力にゃ!」

「……わか……ってる……」

「いいい……今村?充分に、本っ当に全力で自重しなさいよ!?100分の……いやそれじゃあ……1万分の1の力でやんなさい!」


 最後のテスト前に慌ただしくなる女性たち。試験官は契約精霊ですら全力で自重を促すほどの大魔術を行うつもりなのかと最大限の警戒をする。だが、その心のどこかでこの結界は神々でもなければ破れはしまい……という慢心もある。


 そしてここに来ているのは負の世界において魔の神を統べる大帝様だ。


「自重するに決まってんだろ?さっきセイの魔力大分喰っちまったし。あ、これ食べときな。」

「あ、うん……ありがと。いただきます……自重。してね?」

「勿論。結界が破れないようにギリギリの力加減はするさ……」

「え、それって、大丈夫なの……?」


 セイが不安に思い始めるところで試験場に新たな人々が現れた。それぞれが男である今村視点で見てもかなり格好いいと思えるほどの美男子が4人だ。


「……結界が非常に強まっていると思ったから何事かと思いましたが……」

「ったく。小僧一人の試験のために無駄な魔力使いすぎだろ……」

「レイチェルさん。マイアさん。何故ここに?そこまで全力で……」


 その4人が現れたことを受けて今村は歪んだ笑みを深めた。そしてセイが先程の安堵の状態から顔を引き攣らせる。


「え、ちょ……今村……結界が壊れないようにって……この人たちの魔力は勘定に入れてないよ……ね?」

「あぁ、今入れた……」


 今村の死んだ目と爽やかな笑みという異色のコラボを放つ顔にマイアが尻尾を立たせて叫んだ。


「に゛ゃーっ!みにゃさん全力で結界に力を込めるにゃ!」

「え?何が……」

「いいから……早くっ……!」


 ただ事ではない様子に現れた4人がよく分からないが……と言う態で結界に力を込める。そしてそれを見届けた今村はノーモーションでセイの魔力を行使してそれに彼固有の術式を加えた。


「クックック……これが呪われし化物の一撃だ……現在は呪力等をほとんど使っていない魔力のみの省エネモードだが……よく見るといい……さぁ、始めようか!久々にこのレベルでの攻撃を行おう!これが破壊だ!『呪死裂断』っ!」




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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