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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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22.誘蛾灯のように

「はいマスター。」

『……もしもし?月美?……百合は元気か?』

「……えぇ。そうです。」

『……?ならよかった。……やっぱり俺は育児に向いてないらしいから……うん。俺がいない方がすくすく育つよな……』

「いえ、戻って来てもらった方が……」

『……いや。俺が育てたら、ダメなんだ……今、現にダメな子になったのと会ってるから……息子が……息子と久し振りにあったら息子が娘になってた……何を言ってるかわかんねーと思うが……ちょっと叫びたくなって来たから切る。百合はまともな子に育つように頼んだぞ。』

「え、あ……」


 ゲネシス・ムンドゥスのある一軒家の中で携帯電話に出ていた人物は切れてしまった電話を両手で持ってベッドに倒れ込む。そんな彼女の下に別の人物がやって来た。


「百合さーん?私のマスター直通の携帯電話を……」

「ごめんなさいお母様。少し借りてました……」


 5歳程度であろう少女は謝りつつ持っていた電話をやって来た人物……月美に手渡すと月美に軽く怒られる。


「ダメですよ?いつマスターから電話が来るかわからないのですから……百合さんが持ってる間は何もなかったですか?」

「問題はなかったです。」

「……履歴も何も掛かってませんね……ですが、これはもう扱ってはダメです。何故急に持って行ったのかは分かりませんが……絶対にダメですからね?」

「私もお父様とお話をしたいのですが……」


 目線を合わせて諭すように言って来る月美に幼い少女は異論を唱えるが無言で見られることで勢いをなくしていく。そんな彼女に月美は溜息をついた。


「マスターからそう言われればきちんと渡しますから。それよりそろそろ幼稚園に行く時間です。準備は良いですか?」

「はい……」

「よろしい。では、行きますよ?」


 そう言って月美は艶やかな黒髪の見る者をロリコンへと叩き落とす魅力を持った美少女の手を引く。そんな手を引かれた幼い少女、百合は前を向いた月美に見えない位置で頬を緩ませた。


(お父様は、私のことを一番に心配してくださった……私、見捨てられたりしてない……ちゃんと良い子に育てば帰って来てくれるはず……もっと、頑張ろう……)


 電話がかかって来た瞬間に呪具の概念体である月美に鈍化の術を掛け、世界の運行を改変し、自らの声と魔力波長などを全て月美の物へと偽って今村と電話して、機械自体に魔術で履歴の事実をなかったことにした現在5歳の天才はそんなことを小さな胸に抱いて彼女の通う私立雪嶺幼稚園へと向かって行った。












「……俺は子育てに向いてないのかもなぁ……」


 一方エクセラールの中央学校。一悶着あった後に元息子で現娘の可愛らしい美少女と存在を全否定されて滂沱の涙を流す精霊のサンドウィッチを受けている今村はベンチで黄昏ていた。


「聖女様……その、そいつは一体……?」

「控えおろう!ここに居るのを誰と心得る!?「そういうのいいから。」あっごめんなさいお師匠様!」


 何か試験を受けさせてもらえることになり、待機している間に集まって来たギャラリーたちを前に今村はやる気なく空を見上げていた。


「空は青いなぁ……」

「そうですね!」

「私の気分も真っ青なブルーよ……何よ……生きてちゃ悪いの……?」


 今は終わってしまったお昼の長寿番組の観客レベルのイエスマン?であるマギアス……ここではマキと言う名になっているらしいが。とずっと否定されたことでやさぐれているセイ。そんな彼らの下に更に何かが突っ込んで来た。


「いみゃむらさん!ぅにゃあぁぁぁあん!」

「……ふぅ……ここは自然が豊かだなぁ……」


 飛び込んできた黒猫美少女からそっと目を逸らして今村は近くに青々と雄大に聳え立っている何かの木を見てそう零す。


「やっと……見つけた……お礼も言わせないで……」

「あれ?あの石なんだろうか?」


 今度は白い犬耳の美少女が見えた気がして逆方向を向く。そこには巨大な石と共に面白くなさそうな顔をした獣人の男子生徒たちが並んでいた。


「ちっ……魔力値ナシの癖によ……」


 様々な悪意の感情の中で今村はここに来てやっと表情を緩めて微笑む。


「はぁっはぁ!楽しそうじゃねぇか!」


 勢いよく立ち上がった今村の周りに先程視界に入っていた気がする何者かたちが立ちはだかる。


「お師匠様のお手を煩わせるまでもありません。」

「……何?私の魔力量のことを馬鹿にしてるの?斬の魔法を……精霊の力を馬鹿にするなぁあぁぁあっ!」

「うっさいにゃ。邪魔にゃ。」

「……今、感動の再会中……」


 殺気だけで石が粉々になった。それは威嚇には効果覿面で悪意を持ち合わせて今村を見ていた男たちは逃げ出し、今村はしょぼんとしてベンチに座り直して俯いて頭を抱えた。


「どうかしました?」

「逃げるなぁあぁぁぁっ!今村、追わせてよ!あんたがいないと私魔法使えないんだから!早く付いて来て!」

「にゃんにゃ?あんた、空気読めにゃ。にゃんか今村さん困ってるにゃ。」

「…………どうしたの?」

「うっぎゃぁあぁぁぁああっ!何で、俺はぁぁああぁぁっ!とりあえず邪魔だボケナスどもがぁっ!」


 心配して来た少女たちを今村は吹き飛ばして叫んだ。それに非難の目が集まって来るが当の本人たちは空中でそれぞれがそれぞれの方法でバランスを取って今村の所に帰ってくる。


「「「どうしたの?」」」

「どうかしたのでしたら、ボクが全力で何とかさせていただきます!」

「どうもこうもこの様だよ!折角人が休暇がてら遊びつつ能力を高めてるのに何で集まるのかなぁっ?喧嘩売ってんの?まずアザトース!」

「みゃーはマイアにゃ!」

「名前言えるようになったんだねおめでとう!どーでもいいわぁっ!」


 殆ど変らない低身長ながら更に豊かになった胸を張って答える黒猫美少女ことマイアに今村は指を指して何か怒り始めた。


「突撃してくんな!死ぬわ!」

「だって、今村さんが3年も行方不明だったからにゃ……」

「外枠行って来たら多分時間軸がこことずれてたんだよ!んなこたぁどうでもいい!飛びつくな!」

「にゃ……はいにゃ。」


 マイアはしゅんとした。今村はそれに追い打ちをかける。


「出来れば近付くな。OK?」

「……みゃー心配したにゃ……少しくらい……!出来れば……わかったにゃ!」

「……全力で出来ないとか言って来そうだな……まぁ、今の所実害はそれほどないからいい……次、……誰だっけ?あーこの辺まで出て来てる……」

「酷い……私、レイチェル……」


 大分傷付いたらしい白い犬っ娘ことレイチェルは先ほどとは違う意味で涙目になって今村に抗議する。


「OK把握した。……お前には特に何もないな。あ、スノーワイト草は役に立ったかね?」

「うん……お蔭で、ママ……元気になったよ……」

「そう。良かったね。」


 後で総括して言うことはあるがレイチェル個人には何もないと今村は次の標的に移る。


「マギアス!お前、何があった!?えぇい腑抜けんな!スリスリするな!取り敢えず離れろ!」

「はっ!」

「過剰反応もするなぁっ!やり辛いわぁっ!」


 跪く聖女様に今村は怒鳴る。そんな光景に周囲が殺気付くがそれは3人の女子のそれを上回る殺気で押し留められた。


「えぇと、どうしたらいいですか……?」

「一先ず経緯を。そして、あぁ……報告を聞こうか。ここに来てからの。お前の活動の成果を。」

「はい!」


 そして今村は試験官が来るまでマキの説明を聞き続けた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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