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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第三章~異世界その1~
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1.異世界に行きました

「行って来る。」


 今村はいつものように家から出て自転車に乗ろう玄関から出ようとした所で地面の違和感に気付いた。そしてローブで浮き上がって地面を見ると召喚陣が浮かんでいた。


「何々?え~っとこの条件なら俺ばっちりだな。あと効果は浮かんですぐ発動だけど…まぁ手を加えれば後半日続くな…よし、コーティングっと…にしても渡りに船だな~」


 術式を解読してその周りも見た今村は勝手に召喚陣に情報を書き加えて学校に持って行った。











「おはよ。」

「お早うございます…先生それは…?」


 「幻夜の館」に着いた今村を朝食の準備をして待っていた祓は今村の横の地面にある召喚陣を見て当然の疑問を上げた。今村は事もなさげに答えた。


「異世界への招待状だな。」

「えぇ…?そ…それで…何で…?」


 とりあえず想定の範囲外の答えだったので慌てる祓。今村はいつも通りの状態で答えを返す。


「あ、普通なら呼ぶ側との魔力に釣り合わない者は呼べないのに何でって?近くに起こる俺が条件に一致する召喚陣は俺に来るようにちょいと世界改変してあるから。」

「ち…ちが…」


 ちょっとでも世界改変しているのはおかしいのだが祓の関心はそこではない。


「こっちの世界はどうするんですか…?」

「…え?知らん。…まぁ八年に一回は帰ってこないとアーラムが拗ねて俺がいる世界に侵略しに来るから帰るけど…」

「は…八年に一回って…そんな…私はどうすれば…」


 ショックを受ける祓に今村は少し考え込む。


「あ、そう言えばお前も能力者か…こっちの世界に向いてないと…で、心配なのか…」


 実際に祓が思っていることと全く違うが祓は今村がここに留まってくれるなら些細なことと判断してそれに便乗した。


「はい!ですから置いて行かないで…」

「よし、じゃあ行こうか!」

「…え?」


 いきなり言われたことが理解の範囲外だった祓に今村は端折りすぎたかなと思って付け加える。


「お前も異世界に行けばいい。召喚陣を弄ればいいだけだし…と言うことで俺は身代わりを作らないといけないな。」


(そこまで気にしないだろうし…大雑把なドールでいいか…)


 しばらく顔を見ていない両親のことを思い出しながらローブを伸ばす今村。速攻で作り終えると寿命を70年に設定して満足した。それでも祓が動かないので心配になり声をかける。


「…祓?」

「え?あ…行きます。」


 ようやく我に返った祓。そう答えると今村は頷いて召喚陣のロックを解き、文様を二重に重ねた。


「さて…理事長宛ての失踪届書いといて後は時間次第だな…祓。朝食無駄にしないように食べていいか?」

「え…えぇ。勿論です…あの…召喚陣ってそんなに簡単に書き換えれるんですか…?」


 今村は理事長宛てに一筆したためながら祓の問いに答える。


「呼ぶ側だと指定にはある程度力は要る。呼ばれる側は結構簡単に書き換えれる。」

「…それ…兄ぃ基準だよ…」


 呼んでもないのにアーラムが現れた。呆れながら今村に餞別として槍を渡す。


「えっと…兄ぃの『ジリオンランス』の劣化版なんだけど…」

「…一回だけの使用って所か。あー…『サウザンドナイフ』と『ミリオンダガ―』、あと『トリオンニードル』作んないといけないな…」


 そんなことをぼやきながら今村はアーラムの餞別を貰い、ローブに仕舞うと席に着いた。アーラムはそんな今村を見た後食事の準備をしている祓を見て微かに笑った。


「…で、召喚陣…というより時空を跨ぐすでに完成した術にその場で軽く干渉って兄ぃぐらいしかできないからね?僕だって準備要るのに…」

「まぁそんなことはどうでもいい。…餞別渡しに来ただけじゃないだろ?何の用だ?」


 僅かに呆れが混じる口調でそう言ったアーラムに対し、今村は実験室から道具をほぼ取り終えたので食事にかかろうとするとアーラムが少し慌てて付け加えた。


「僕の世界から移動ってなれば僕の所に当然通知は来るからね…念を押しに来たんだよ。いい?八年に一回は帰って来るんだよ?絶対だからね?」

「世の中に絶対など存在しない。」


 今村は傲然とそう言ってのける。そんな今村にアーラムはジト目をぶつける。


「…冗談だ。まぁ帰って来るよ。…週刊誌気になるし。今読みかけの本の続き気になるしな。」

「…僕本のついで?」

「あ!何か召喚陣が発動した!じゃあね!」


 今村に実に都合のいいタイミングで召喚陣が発動し、辺りは光に包まれた。そんな中アーラムが一つ今村に言う。


「兄ぃ!もう一つ伝言!こっちの世界から何人かもう向こうに行ってる!」


 今村に聞こえたのはそこまでだった。光が収まると辺りは一面草原で、今村達がいる場所は小高い丘になっていた。


「…よし、咄嗟だったがテーブルと朝食も持って来れた。朝飯にしよう。あ、後これ持っとくように。」


 だが今村には関係ない。手を合わせていただきますと言って朝食を食べ始めた。メニューは鮭の塩焼き、若布と豆腐の味噌汁、納豆、それとご飯だ。そのついでに黒水晶を渡しておく。


「えっと…ここは…」


 対する祓は流石に面喰っていて、水晶を受け取ったが余裕はない。辺りを見渡しながら今村にすがるような目線を向けた。


「…出汁変えた?鰹出汁?」


 だが今村は祓の求めている答えと全く違う事しか言わない。…実際、出汁は変えたのだがそういう事ではないのだ。


「えっと…囲まれましたよ…?」


 複数の気配を感じ取る祓。当然今村も気付いているだろうに何故そんなに悠長に構えているのか不思議でならない。今村の方は慌てずに完食した。


「…さて、じゃあ俺は召喚陣作った人の所に行くからまた後でな。」

「え?あ!ちょっと!」


 祓の制止も聞かずに今村はローブを羽のようにして飛んで行った。その光景を見て唖然としていると囲みの中から一人の男が出て来た。


「…初めまして美しき方。私はローゼンリッター全国総司令本部統括長を務めていますエルモソと申します。これより我が軍に入って、薄汚き逆賊の成敗にご助力願えませんか?」


 馬鹿丁寧な話し方をするエルモソ。残念ながらかなりのイケメンだ。周りを囲む兵士たちも皆タイプは違うが格好いいと言われる基準は満たしていると思われる。今村がここに居れば異世界補正だと嘆いていたことだろう。


「…正直今状況が呑み込めていないので…」


 そんなことは今置いといて、祓としては今村に付いて来たけれどもいきなり異世界に来てどうしたらいいのかもわからない。とりあえず今村を待つ以外に何もすることが出来ない状態なのでこの場に残りたいのが正直なところだ。


「…ならば我々の城で待たれてはいかがでしょうか?何もこんな辺鄙なところで待つ必要もないと思います。美しき方。あなたの待ち人は遠目でよくわかりませんでしたが飛んで行かれましたよね?ならばすぐに戻って来られるでしょう。ここに置手紙を置いて城に来られてはいかがでしょうか?」


 祓は早口に一気に捲くし立てられ混乱しているところにさらに混乱を持ち込まれる。そしてよくわからないままに男たちに付いて行った。今村から貰った黒水晶が静かに光っているのにも気付かずに…




ここまでありがとうございます!


 祓ちゃん知らない人に付いて行っちゃ駄目だよ~

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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