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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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18.中央学校・ファーストコンタクト

 結局面倒臭かったので今村はルノワール家の厄介になることは止めた。マイアがかなり引き留めてきたが虚を突いていつの間にかいなくなっていたと感じるような動きを見せた今村はさっさと学園に侵入していた。


「さて、ちゃっちゃと書類関連を済ませますかね。」


 無駄に広すぎる馬鹿みたいな校内で今村は適当に彷徨いながら事務室を目指してうろうろする。


「また行き止まりか……このボケが……死ね屑……」


 棟の数が500あるらしいので地図をパッと見ただけではよく分からない。その所為で今村は何度も行き止まりに出会い、10を超えた辺りで理不尽な怒りを壁にぶつけた。


「ふぅ、いかんいかん。そんなこと言ったら駄目だね。悪口雑言吐かれても頑張れ壁!さて、次はこっちの方に行ってみるか……」


 そんな感じで適当に動き回っていると今村はここに事務室などの需要がある建物はないと一目で分かる人気のない場所に来てしまった。


 そしてそこで面白い物を発見し、口の端を吊り上げ邪悪な笑顔になる。


 虐めの現場だ。今村は笑いながらその現場に近付いて行く。次第に喧騒が大きく聞こえ始める中、主犯格の女が虐めをしている途中で今村に気付く。


「売女の屑娘はお使いの1つも……何よ?」

「問おう。それは、虐めか?」


 今村のど真ん中直球の質問に主犯格の女が顔を険しくさせて今村の方を向いて喧嘩腰になって濃い、人によっては不快感を覚えるであろう紅を引いた口を開いた。


「はぁ?何言ってんのアンタ。燃やすわよ?」


 主犯格の女がそう言うと周囲の取り巻きがその虐められている本人の肩に手を回して厭らしい笑みを浮かべつつ発言を促す。


「ユカ、あんたも虐めなんかじゃないって言ってあげぎゃぁああぁっ!」

「本人に無理矢理言わせるのはナシね。」


 そんな少女は神速の一太刀で腕を切断して不意に肩に回した腕がなくなったことを認識した瞬間、普通にくっ付けた今村を恐怖の視線で見る。


 肩に手を回した少女の切断された一瞬で迸った血が虐められていた少女の首に付着するのを目撃して怯んだ隙に今村はバレないように虐めの現場にいた記憶をなくそうと取り巻きの一部が組んでいた術式を乗っ取って虐めグループに記憶改竄を行っておき、少女たちに言った。


「先に言っておくが、魔力とかそう言うの関係なく細胞結合レベルで斬ってくっつけたから証拠類は一切ないぞ。」

「頭おかしいんじゃないのこいつ……校内に不審者が紛れてるって先生に報告しに行くわよ!」


 足早に去って行く少女たちを見て今村はこの世界ならやっぱり腕の一つや二つ落としたくらいじゃそこまで問題としてとられないなと頷きつつへたり込んでいる少女を見る。


「……まぁおかしいのは事実だが、困ったときは先生頼みなんだなぁって辺りが小物臭いよなぁ……さて、逃げ遅れた君はどうすんの?」


 逃げて行った女子学生たちを完全に見送った後に最悪、乗っ取った術式が上手く行かなければ来たばかりの学校を崩壊させなければならないかなぁ……と思いつつ今村は虐められていた少女にそう問いかける。


 気付けば彼女は黙って失禁していた。それに気付いて今村は気まずくなるが気付かれたことに気付いた少女はその始末を魔法ですぐにやってのけた。


「ぁ…………ぁの……危ない人ですか……?」

「まぁそうだねぇ……大まかには間違ってないな。大丈夫かい?」


 おどおどしている彼女が立ち上がるのを見て今村はあわよくば道案内を頼むことにした。その為に軽く気遣っておくと彼女は超逃げた。


「……ふむ。まぁ目の前で人の腕を斬った後に笑いながら自分で危ない人間認定したら普通そうするだろうな……まぁいいや。どうせバレないし。仮に上手く行かなくても整合性のつかない現実なんてこの世界じゃすぐに白昼夢でも見たことにされるだろ。痛みも感じる暇はなかったはずだし。」


 痛みというよりただ一瞬だけ腕が取れたことに驚いて叫んだ既に顔を忘れかけている虐め学生をそんな感じで完全に忘却しつつ今村は適当な男子学生を捕まえて道案内を頼んだ。











「悪いね。ありがと。これでジュースでも飲んでくれ。」

「あ、どうも~この学校広いっすからね。帰りに気を付けてください。」


 好青年に連れられて事務室に来ることが出来た今村は謝礼代わりに適当に銀貨をその青年に渡して事務処理の手続きをする。


 簡単に言えば募集要項や学校へ入るにあたっての特例審査などの部分を見て今村のように色々不明な人間でも入れるルートを探すのだ。


 そして導き出されたルートは3つ。


 1つは背後に組織を付けること。もう1つは極めて優秀な頭脳を持つことを証明すること。そして最後が優秀な魔導師であることを証明することだ。


(……金にはあんまり困ってないらしいな。)


 事務室の雰囲気などから買収するにはかなり巨額の費用が掛かりそうだったので今村はこの3つのルートに設定し、どれで入るか考えながら外に出ると地面を軽く蹴り、そこから何度も宙を蹴ると空に駆け上がる。


(バックに何かつけるのは……最終手段にするとして、優秀な頭脳はちょっと無理かな。今研究してるやつが忙し過ぎて他に手を回す暇はないし、今の研究分野が終わったらそもそもここに残る必要がないし。)


 そんなことを思いながら今村は黄金色のチェーンで繋がれた計測器を見てここに残らなければならない最低時間を見る。


(まぁ、普通にやれば1年だったのが……現在やってる魔力省エネ状態だと結構進行が早いな。残り約10か月か……アレ?そう考えると今の魔力省エネモードだと後10日程度になるのか?)


 最低限度だとかなり早めに用が済むことが判明した今村は予定吸収値を修正してもっと魔力を手に入れることにした。


(……この世界の魔力回復値は結構すごいなぁ……俺一人と半分くらいの魔力量だと思ってたが……計測時点で飽和してただけで実際はもっとあったのか。もっと吸っても問題ないな。って、そうじゃなくて今は学校に入学する方法だった。)


 限界まで吸ってみることにした今村は気を取り直して入学の方法について考えた。そして思い当たったのは『机上の空論・精霊魔法の終焉』というこの世界に来て読んだ本だった。


(……世界の終わりの外枠にて何人たりともは入れないその場所に取り残される精霊の女王か……あの本の内容じゃ外枠とか言う地帯は表層部の時点であらゆる術や概念体が凍りつく実験とデータを延々と述べて精霊王も過去にはいたかもしれないが現在は死んだっつー話だが……)


 本の内容はその後は術式の否定など精霊魔法の否定を多岐に渡って行う物だったが、今村は存在自体の否定をひっくり返す材料を持っていた。


 というより、道に迷って勝手に外枠の中に入ってしまっただけだが……そこにはスノーワイト草などが群生している空間を見つけたのだ。


「まぁ、何かあるかもな。火のないところに煙は……そんなに立たないし。往くだけならすぐだしタダだから行ってみよう。」


 そんなことを言いながら今村は高速で空を駆けて行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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