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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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15.残りの呼び出し処理

 エキャルラットラパスの3大公家のそれぞれ誘拐された公女たちが類稀なる美しい美女となって家に帰って来たことは夜が明けた時点ですぐにエキャルラットラパスに広まっていた。


 その所為でエキャルラットラパスの三大公家であるソル家の誘拐されていた3女のイーヴィ・ソル・エキャルラットは非常に浮かない顔をして客の応対をさせられている。


「まさにあなたは私の太陽のようだ……その慈愛の微笑みに私の心は焦がされている……」


(……そろそろ今村さんが来る時間だから帰って欲しい……)


 イーヴィはそんなことを思いつつ窓の外を見る。今来ている相手は連合国の結成に伴い同盟した隣国の王子だ。先程からイーヴィを見て一目惚れした後にずっとこの調子で一向に帰ろうとしない。


 だが、仮にも隣国の王子なので無下にすることも出来ず、イーヴィは曖昧な笑みで柔らかに躱すだけだ。それを自分に好意的な姿勢だと思っている王子は更なる攻勢をかけて来る。


「そろそろ、次の来客がありまして……」


 定刻になった。窓の外に黒いローブの男の姿を認めたイーヴィは王子を追い出しにかかるが王子はそれを爽やかに笑って拒否する。


「太陽のような君に寄り添う私はあなたから……」


 王子の言葉など最後まで聞いていられない。イーヴィは下の様子を見ながら門番と2、3の言葉を話した後にすぐに踵を返してどこかに行き始めた黒いローブの男を少し驚きながら見て、王子に本気で帰って貰おうと彼女的には強く言った。


「あの、本当に、私に来客の方が……」

「……私と君の愛の語らいを邪魔する無粋な輩は誰だい?私が行って、話を付けようじゃないか。」

「本当に、帰って下さいませんか……?」

「君が私との婚約を認めるならば……」


 イーヴィが立場も忘れてこの男を吹き飛ばしたいと思った時には既に窓から見える範囲には今村の影も形もなくなっていた。






「……舐めてんのかな?人のこと呼び出しておいて……」


 門番にお嬢様は現在来客中のため取り次げませんと言われた今村は3分待って本屋に帰っていた。5回目の会計を済ませた後に再び来店してきた今村を見て店員は店長を呼んで今村の応対が始まった。


「……えぇと……?何かお探しですか?」


 膨大な量の本を買っているので特に何か特定の物を探しているのではないだろうが一応こう訊くしかないと思った2代目の若い男の店長が今村にそう尋ねると今村は真顔で答えた。


「面白そうな本、全部。」

「……じゃ、ジャンルなどは……」

「基本何でも。……あ、魔術式の映写集とかは要るけどニンゲンの映写集とか風景の映写集は除外。それ以外なら何でもいい……それこそエロ本でも面白いなら持って来て。」

「…………畏まりました。」


 色々言いたいことはあったが口に出すには何とも言い難い物だったので店長はそれを受け入れて今村は自分でも本棚の本を選びながら店長がオススメを探して持って来るのを待った。


(……次は間隔短いんだよなぁ……40分後だからあんまり選別する暇はないし、仕方ない……)


「こ、これなどいかがでしょうか?」

「少ない……あ、いや。そうですね……」


 今村は店長が持ってきた本を選別し始めた。










 30分後、今村は最後に呼ばれたイース家の方まで本を読みながら頭で術式の構成を組み直して歩いて行った。


「あっ!今村さーん!」

「お嬢様、はしたないですよ……」

「む……今回は追い返されないのか……ちっ……」


 今度は10分前でも待ち受けられていたので今村は舌打ちをする。そんな今村を訝しげに見てルーシー・イース・エキャルラットは首を傾げる。


「呼び出したの私なのに、追い返さないよー?」

「……他2件は門前払いだった。」


 今村が門番に碌に説明もせずに彼らの職務を熟すための言葉を額面通りに受け取って勝手に帰っただけの話だが、ルーシーは頬を膨らませた。


「酷いですねー!ま、ま、お茶でもどーぞー!」


 ルーシーはかなり軽く怒ると今村を屋敷の庭へと案内し、そこに準備されていたお茶のセットの所まで連れて行った。ティーセットを前に今村は額面通りお茶を頂くことにする。


「うん。いただきましょう。」


 そう言って今村はルーシーの隣に控えている無表情のメイドから紅茶を淹れてもらい、飲む。流麗な動作から淹れられた紅茶は微量ながら遅効性の強烈な媚薬の味がした。


「どうかされましたー?」

「……まぁいっか。」


 だが、どうせ効かないので無視して飲み続ける。それ自体は美味しい紅茶なので本来であれば殆ど無味であり、極々僅かだけ甘い媚薬の味がかなり甘い状態だがそれも砂糖みたいなものだと思えば特に問題はない。


「クッキーも、どうぞー」


 ナッツとチョコレートのような物が入った大きなクッキー。程よい甘さのそれからは極々僅かながら香ばしい精力増強剤の味がした。今村は胡乱な目でメイドを見るが彼女はすまし顔だ。


 そんな今村の様子を見てルーシーがわずかに腰を浮かせて今村に尋ねる。


「どうかしましたー?」

「……別にいいんだが……」


 今村はルーシーにそう答えてどちらも別に術式が作用しなくても体質上の問題で効かないので普通に食べたり飲んだりする。そんな今村を見てイースの主従コンビはテレパスで会話をしていた。


(や、やばいよぉ……こんなに飲み食いされたら……私壊れちゃうぅぅ……)

(大丈夫です。最悪の場合は私が劣情の残りを引き受けます。なぁに、若い頃性女帝オールイーターと呼ばれた私が居れば大丈夫ですよ。)

(……どんな若い時代を過ごしてきたの……)

(因みに知識で成り上がりました。単なる耳年増です。)

(ダメじゃん!)


 そんな主従コンビの顔色を見ながら今村は用件は何か切り出す。しばらくグダグダした話と遺伝の話、そして形質転換や発現などのやたら生殖系の学術的な話が続けられた後、不思議そうな顔で今村はメイドに尋ねられた。


「あの、ムラムラしませんか?」

「は?何?セクハラ?」

「……成程、ガチホモ……?」

「何暴言吐いてんだこのボケ……言う必要もないと思ってたが……一先ず。何考えてるのかは知らんが媚薬系なら解毒したからな?」


 今村の言葉にメイドが無表情に憤慨すると言う器用なことをやってのけて今村を怒る。


「お嬢様の勇気を踏み躙るおつもりですか!」

「テメェこそ俺の人権を踏みにじるつもりか。」


 今村の冷静な返しにメイドは口調だけ不機嫌さを滲ませて続ける。


「お嬢様はこの準備に昨日の内に両親を魔力言語で説得して、まっっったく乙女らしくもない鬼畜の所業をやってのけた後にアホみたいにくねくねしながらベッドで乏しい性知識に火をつけて悶えていたんですからね!」

「……ねぇ、それは言わなくても……」


 メイドの言葉にルーシーが意気を消沈させて袖を引いて黙らせようとするが、メイドは止まらない。


「何か色々間違えた妄想を抱きながらも、優しくされるのと獣のように求められるのはどちらがいいか真剣に考えて一睡もしてないんですからね!」

「ヤチルの馬鹿!」


 メイドとルーシーが喧嘩を始めたので今村は付き合ってられないとばかりに無言で「暇じゃないので帰ります。」と書面をしたためて高速移動し、本屋に帰って行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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