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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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14.本屋と訪問

 翌日。


 太陽が昇り切った頃にそろそろ宿の人が来るから起きてほしいなとそわそわしているマイアとレイチェルが未だに眠っている今村に声を掛けようとした瞬間、今村は目を覚ました。


「……ん?」

「おはようにゃ。」

「…………おはよ……」


 今村は挨拶をされた後に目を細めて誰か確認し、少し首を傾げた後に頷いた。


「あぁ、おはよう。……あっ。そうだそうだ……確かアザトー「みゃーにゃ。」そうそうマイア。」

「…………私はレイチェル……」


 どうやら彼女たちのことを忘れていたようだ。この辺は超適当なので今村は首を倒して伸ばした後に胸を張り肩周りをほぐすと今日の予定を思い出す。


「今日は……一日術式の解析にあてがう「エキャルラットの3人たちに呼ばれてるにゃ……」……そう言えばそうだったな。お前ら偉いな~」


 突っ込みを入れれば撫でてもらえることを学習したマイアが今村の予定を修正して今村に褒められるのを見てレイチェルは無言で拗ねる。だが、今村相手にそんなことをしても無駄だ。


「さて……何時からだっけ?」

「ルにゃ家の人が最初でこれから2時間後にゃ。」


 言うか言わないか悩んでいる間に先んじて全てマイアに言われてレイチェルは更に拗ねた。その視線の先には褒められているマイアがいる。


「…………私も、撫でて……」

「別にいいけど……手短に。」


 今村は3公女たちに呼ばれたので行くが、その後をどうするか考えた。


「取り敢えず、君らはどうするんだ?」

「みゃーは魔力量が増えすぎちゃったからちょっと使い方を変えたり色々して覚えて来るにゃ。」

「……私も。」


 単独行動が決定した今村は術式の解析を行いながら同時に目についたことを適当にしてこの後を過ごすことに決めた。










 宿で軽い身支度をした後に、昨日行ったルナとかいう人の家がどれだったか思い出さないとなーと思いながら宿を出て今村は町に繰り出した。


「……あの大きな3つの家のどれかだからまぁ……10分前に着くように移動すれば大体大丈夫だろ。」


 そんな感じで適当に行動方針を決めた後に今村はルナとか言っていた人は誰のことだったか考えながらふらついて本屋を発見した。


「おー……この匂いはいいな……」


 普通の本、そして魔力が込められたインクの本たちが多く並んでいる街角の古書店で今村は軽く頬を緩めながらその中に入って行った。


「いらっしゃい……」


 入ってすぐの所にある窓口で本を読みながらやる気なさそうに挨拶してくる眼鏡をかけた中年の賢そうな男を無視して今村はどんどん見て回る。


(やっべぇ……美味しそうな本がいっぱいあるわ……この店ごと買い占めてもいいかな?いや……しっかりと吟味しなければ……)


 学術、術式指南、魔術史、体系書、分類学、最新の研究報告の他にも単純娯楽や恋愛、雑学など様々な本が所狭しと並んでいるのを見て今村は涎を垂らしそうになりつつもどんどん本を見て行く。


(立体魔術投影書とか……おっ。こっちは実物召喚書か……つーか変な本がいっぱいあるな……あ、絶版になってるの見っけ。)


 どんどん本を持つ。ローブで本を持って歩く姿はまさに簡易型の移動図書館のようになっていた。


(一回、本を買って収納するか……)


 だんだん周囲の客の目が奇異な物を見る目に代わって来た上、店員に報告するかどうか悩む素振りを見せてきたので今村は一度選ぶのを止めて入り口付近の店員の所に戻る。


「……っ?……あー……いらっしゃいませ……」


 本から顔を上げて二度見された今村はその店員の前にあるマカウントを通して合計支払金額を確認して全額を現金で払う。


「ありがとうございまし……」


 そして店を出ると思った店員が今村にそう声を掛けようとして店の中に戻るのを見て声掛けを途中で止めるのを背後に聞きつつ今村は本を収納してまた本選びに戻る。


(……こっからここまでは、要るな……あ、同じのが2冊混じってるからそれは退かさないと……学術系はこんな感じで良いかな。)


 次に娯楽系の本を買おうとしたところで今村は時間を気にする。そろそろ時間になりそうだったので今村は2度目の会計の為にその場から立ち去った。




「……フム。15分前に着いてしまった。さっさと用件を終えて本屋に帰らねばならんな……」


 帰る場所が本屋になった今村は迷わずに行けたおかげで少し早めにルナ家の豪邸に着いた。ちょっと早いので入るかどうか悩んだ今村は屋敷の門前で空気椅子を使い、先ほど買ったばかりの本を読み始める。



 そして開始5分。門番から声を掛けられた。


「おい、そこのお前。ルナ・エキャルラット家に何か用があるのか?」

「10分後に来るように言われたから待機中です。」

「……来客の方でしたらお名前を言ってください。お屋敷の中で少しお待ちいただくので……」

「今村です。」


 今村の返事に門番から警戒心が現れた。


「お嬢様を誑かしているのはお前か……」

「違うが……お呼びでないなら帰るけど?」

「財産目当てのどこの馬の骨とも知らぬ男が……帰れ!「うん。」帰らぬのならば私を……え?」


 今村は門番の物言いに軽く殺意が生まれたが今は読書中だったのでどうでもいいことと割り切って言われた通りに本屋に向かって帰って行った。


(……次は1時間後にソル家か……怠いな。こんな感じでさくさく終わればいいんだが……にしてもこの本は興味深いな……大嘘吐きなんかじゃないぞこれ……)


 そんなことを考えながら去っている今村の後姿を門番は拍子抜けした顔で見送り、帰らなかった時の対応とどうすれば合格だったのかを思い返しながらやはりお嬢様はダメな男に引っ掛かったんだな……と溜息をついた。


 その10分後にそわそわした屋敷のお嬢様が何度も屋敷の扉の前で外の様子を確認するのに気付く。


 そこから更に10分、15分と経過するごとにそのお嬢様から元気が失われていくのを門番は黙って魔力で見つつ、己の職務を果たす。


 しばらくしてお嬢様……アメリア・ソル・エキャルラットは門番に直接尋ねてきた。


「この辺に黒いローブを着た男の方は来てませんでしたか?今村さんというのですが。」

「その特徴に当たる男でしたら不審な様子を見せておりました上、気骨も見当たりませんでしたので追い返しました。」


 アメリアは烈火のごとく怒り、両親に秘密裏にその男の排除を依頼されていた門番はその日限りで罷免とされた。





「いらっしゃ……いませ……」


 門番にアメリアが怒り散らしていた頃、今村は再び本屋に戻って来ており店員から軽く引かれていた。


(失敬な。しかし、ここは立地が悪いなぁ……中央区から離れすぎだろ……まぁ現在進行形で俺が大量に金を落としてるから潰れる心配はないけど。)


 再び現れた今村に先程からずっといる客がまた来たのかとぎょっとしつつその手に更に増やされている本を見て半笑いになっているのを無視して今村は更なる本を求めて物色していく。


(いや……文化とか慣習、それに世界の体系が異なると色々な本が出ていて面白いよなぁ……)


 今村はご満悦でしばらくの時をそこで過ごした。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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