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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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13.魔術式の解析

「やはり青春ラブコメは良いんだ。大正義だよ。傍から見ると。」


 後の劇団『各個笑い』の初回コントを堪能した今村はお捻りを出してからご機嫌でエキャルラットラパスのお屋敷に全員送り届け、それを終えた後の宿の中でそう言った。本日は普通に町の中にある宿だ。


「にゃ……いみゃむらさん……あぁいうのがタイプにゃのにゃ……?」

「殴るぞ?アザトース……」


 深刻な侮辱を受けたと今村は黒猫娘を捕獲してアームロックを掛けるが黒猫娘は痛いのは痛いがそれはそれで密着できて嬉しいとして、あさっての方向に怒り始めた。


「みゃーはみゃーにゃ!覚えてほしいにゃ!」

「マイアだっけ……」

「そーにゃ!」

「……私、レイチェル……」


 色々あって同室になった二人の名前主張を適当に聞き流して何か疲れた今村はマイアを解放し、ベッドに腰掛けると二人に学園青春ラブコメの傍観者になるために大きな学校を尋ねる。


「中央学校にゃらいっぱい学生が来るにゃ。」

「…………同意……」

「中央学校ねぇ……じゃあ、そこを目的地に設定して……どんな奴とどんな奴がくっつくかなぁ……」


 ベッドに仰向けになって今村はじゃらりと黄金色のチェーンで繋がれた計測器を見てざっとここに居なければならない最低時間を見る。


(……思ったより魔力の集まりが早いな。まぁここじゃ全く消費してないから当然と言えば当然だが……普通にやれば後、1年程度か。)


「にゃに見てるにゃ?」


 そんな今村の上にマイアが跨ってこちらを覗きこんでくる。柔らかい感触と暖かな体温が伝わって来るのを今村は感じてふと思った。


(……そう言えばこの程度じゃ弾き飛ばさなくなったなぁ……)


 少し前であれば無駄に密着してくる奴は問答無用で弾き飛ばしていたのを思い出しつつ今村は目の前の黒猫美少女を見る。


「にゃ?」

「あざといな……これでもかって言うぐらいにあざとい……」

「みゃーがにゃにかしたにゃ……?」


 今村の発言に猫耳をぺたんとさせて尋ねてくるマイア。今村はその抱きしめたくなるような顔に対して強靭な理性で通常通りに接する。


「あざとくても……このルックスだったら行けるんだよなぁ……まぁいっか。何見てるのかって言われたらいつ頃自分家に帰るかっつーアレ。何つーんだろ……取り敢えず時計的な?」

「いみゃむらさんってどこから来たのにゃ?」

「……私も、気になる……」


 マイアのことを羨ましげに見て部屋の中をうろうろしていた白犬美少女も寄って来た。近付いてくる両者の顔に今村はきちんと端的に答えてあげた。


「家。」

「……そうじゃない。」

「どこの辺にあるのにゃ?」


 両者の突っ込みを受けて今村は少しだけ考える。


「……色々説明が難しいな。取り敢えず別の世界で、最近の住まいは第3世界に置いてある。」

「第3世界……有名にゃのはゲネシス・ムンドゥスとかかにゃ……?」

「お、普通の人間なのにこの辺まで知ってるとは……凄いな。正解だ。」


 まさか当てられるとは思っていなかった今村は思わずマイアの頭を撫でて正解を褒める。


「ふ、にゃ……にゃぁ~ぅにゃ……」

「…………ずるい……もう1問……」


 全ての術を切っているのにもかかわらず撫でられてやけに喜ぶマイアを変な目で見ているとレイチェルが更に前に出て来てキスしかねないばかりの距離で要望を押してくる。


「……いや、特にないけど?」

「…………厳しい現実……」


 しょぼんとして尻尾を降ろしたレイチェル。その横でマイアが勝ち誇った顔をする。


「すっごい気持ち良かったにゃ~」

「……むぅ。」


 イラッと来たらしいレイチェルが今村から離れて戦闘意思を見せんとするかのように強烈な魔力を体に巡らせるのを見て今村は首を傾げた。

 その様子に気付いたレイチェルは戦闘態勢を解除してベッドから離れて迎え撃とうとしていたマイアから目を放し、今村の方を振り返って首を傾げる。


「どうしたの……?」

「いや、発動までの効率が悪い上に時間がかかり過ぎだよなぁって思っただけだが……」

「…………そう……?」

「結構速いと思うにゃ。」


 レイチェルの戦闘態勢に対応して同じく臨戦態勢に入っていたマイアが今村の上に再び跨ってそう言うが、今村はそのマイアを退かしてちょっと言ってみる。


「魔力借りるぞ?」

「にゃ?借りられる物にゃのか知らにゃいけどどーぞにゃ。」


 今村はマイアから魔力を吸収し、立ち上がってその量に驚く。


「うわぉ。凄いなお前。」

「えへへ……にゃんか褒められたにゃ……」


 同時にこの魔力で術式を使おうとして今村はそれの術式のコードの複雑さに更に驚かされた。


(……載せられる分量はかなり多いが……その分、必要ない所に大量のコードが入ってるな……簡単な術式に関しては単純オーダー式の簡易プログラムを作ってアルゴリズムを埋めた方が早いし、複雑な術式に関してはオート化し過ぎて逆に融通が利かなくなってる。)


 ということで単純な術式の方をやってみた。


「『ダンシングフレア』」

「にゃー!可愛いにゃ!」


 現れたのは炎の小人たち。それらが小さな火を囲って空中で踊っている。マイアはそれを見てその頭を撫でようと触れて爆ぜた。


「に゛ゃ……」

「バカか?いや、でもよく耐えれたな……『キュアモーラル』」


 仮にも自分が使った魔術で一般人が生きていたことに驚く今村はマイアをすぐに治してベッドに横倒させる。


「ふみゃぁ……汚れちゃうにゃ……ごめんにゃさい……」

「……それより俺はベッドの匂いを嗅ぐのをやめてほしい。そこ俺がさっきまで寝てた所なんだが……」

「?今日は寒いから一緒にここで寝るにゃ。すーはー……」

「…………熱い……」


 爆発音とともに後ろを振り返るとレイチェルが丸焦げになって黒犬になっていた。


「……お前も馬鹿なの?いや、見てた分だけお前の方が馬鹿なんじゃない?……はぁ取り敢えず『ダンシングフレア』を解いて『キュアモーラル』っと……」

「…………今日は、仕方ないから一緒に寝る……」

「何が仕方ねぇんだよ……」


 まぁそれは別にどうでもいいことにしてそれよりもとこの世界の術式系統について考え始める。


(……確かにこの効率じゃ大規模な破壊活動は少ないだろうな……どうにかして今俺が使ってる術式とこの術式を合成できないものか……取り敢えずはモジュールを合わせるところから開始しないとな……)


 今村はそんなことを考えながら二人にあてがう予定だったベッドの方に移動して警告を発した後に魔力を返し、普通に一人で眠りに就いた。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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