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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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12.荒くれどもー

「……おっ。また雑魚エサ見っけ。大物釣れるかなぁ……?」

「ぴぎぃっ!ぷぎぃっ!」

「ぎゃっ!ぎゃっ!」


 今村は適当な獲物を発見しては木に突き刺して空の獲物を捕獲したり、傷をつけて地面に横たえさせ、陸の獲物を捕獲したり、釣糸で括って釣りをしたりしていた。


 その様子を見ていた黒猫娘たちは比較的ドン引きしている。


「もう釣りは無理かな……よっと。破鎚掌!」


 水面を割って確認を済ませると雑魚と銘打ったモンスターに止めを刺して黒猫娘たちに術を掛けさせ、持って来させる。


「……この辺の強い魔物は殆ど狩られたんじゃにゃいかにゃ……」

「…………ちょっと、哀れ……」

「この辺りはエキャルラットラパスの領地ですから助かると言えば助かるのですが……」

「雇用の問題が起きそうですわね……」

「知るか。弱肉狂食だ。」


 ある程度まとまったお金になりそうなところで切り上げて今村は全ての魔物を皆殺しにして町の方へと向かう。


「ねーどこ行くのー?」

「ん?町。」

「逆ー」

「……そうか。」

「そっち山ー」


 呪具がない状態で勘だけで進むと方向音痴なのかなぁ……と思いつつ今村は踵を返して町へと向かった。











「え……っと、その、え……?」


 冒険者組合にて、今村は組合所属証明書と顔、そして持って来た素材を事務員に何度も見比べられて素材を売っていた。


「全部で5000万ルーにはなると思うんだが。」

「す、すみません。あの、ウチにそこまでの買い取り能力は……」

「手形でもいいよ。」

「その、1000万ルー程度の取引が上限でして……それ以上の買い取りは本部の方に行ってもらわないと……」


 今村は面倒だなと思った。そこにこの都の公女であるエキャルラットラパスの公女殿下が割り込む。


「買い取り拒否ですか。……これは面倒ですわね。」

「も、もももも、申し訳ありませんっ!ですが、私の一存で決められる物ではなく……」


 組合所属証明書によりこの都の公女であると断定されているエキャルラットラパスの言葉に小市民は顔色を悪くしながら謝罪してくる。


「仕方ないなぁ……じゃあ嵩張るやつだけ売るか……」


 今村は強力な魔物の魔核やその他希少部位などを回収して雑魚モンスターの適当な部位をカウンターに残した。これに事務員は露骨に安堵した顔になる。


「はい!ありがとうございます……合計で990万ルーです!」

「……ん?一気に値下がりしたな。」


 今村の言葉に事務員は少しだけ止まって説明を入れた。


「あの、そちらの魔核が基本的にお値段を引き上げている物でして……全部回収されましたので……」

「でも、キリが悪いなぁ……やっぱさっきのも売ってキリのいい5000万とかにしておくべきかな……」

「い、1000万ルーで買い取りさせていただくので、それは、ご勘弁をお願いします……」


 こうして一気に金持ちに成り上がった今村は次に買い物に出かけようとするがその行く手を阻む一団が現れる。


「なぁ兄ちゃん。ちょっと荒稼ぎしてるみてぇじゃねぇか。俺らにも少し分けてくんねぇか?」

「俺はお前のような弟を持った記憶はない。……いや、ないけどもしかしたらあれだけ妹も増えたんだし……もしかして、弟なんだろうか……?今幾つだ?」

「あ?」


 一瞬訳が分からないことを言われて一団の中の代表格と思わしき荒々しい風貌をした男は首を傾げて次の瞬間にブチ切れた。


「訳わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」

「……自分の年齢すら分からんのか……どれだけ知能指数が低いんだろうか……仕方ない……馬鹿過ぎて仕事もろくにできない穀潰しの義理の愚弟に恵んでやるか。本当は自立を促さないとダメだからよくないんだけどなぁ……ほらよ這い蹲って必死に金を集めな。そのくらいなら低能でも出来るだろ?」

「てめぇっ!」


 魔力を込めて恫喝の構えに入る一団に今村は歪んだ笑みを浮かべるがその前に黒猫娘と白犬娘が相手側全体の魔力を優に超える魔力を体に巡らせて睨みを利かせる。


「糞っ……女に守られて恥ずかしくねぇのかテメェは!」

「ウチの世界だったら自称フェミニストの暇人どもが群れ成して抗議しに来るだろうなぁ……まぁ、取り敢えずアザトースとサンは……あぁ、えっと……名前何だっけ……そこの二人は引き下がってろ。」

「にゃ!?いみゃむらさんみゃーの名前覚えてないにゃ!?みゃーにゃ!みゃーの名前はマイア(みゃー)・リオノワールにゃ!」

「私……レイチェル……レイチェル・シェンブラン……」


 その名前に荒くれ一団たちの顔色が悪くなり、王族はマズイだの色々と囁き合いが始まる。そんなことお構いなしにエキャルラットラパスの3公女たちも一応確認とばかりに今村に自分の名前を知っているかどうか尋ねた。


「うん。当然知らん。」

「アメリアですわ!アメリア・ルナ・エキャルラットですわ!」

「イーヴィ・ソル・エキャルラットです……」

「ルーシー・イース・エキャルラットだよー」

「……あ、そ。」


 覚える気もないので適当に流して相手を見る。相手は王族や公族に刃向っていると知って土下座し、既に勝ったも同然の状態になっていた。


「面白くない……綺麗な半殺しをしてやろうと思ったのに……ほら怒れよ。絡んで来たのはお前らだからな?俺は悪くない。」

「め、滅相もございません!高貴なる方々とは思いもせず……」


 平伏状態の男の頭をブーツで踏み躙りながら今村は先ほど弟宣言をしてきた男を煽るが相手は乗って来ない。仕方がないので今村は舌打ちしてその男を解放する。


「面白くなーい。何か面白いことやって。」

「わ、わかりました……」


 目の前でオイどうする?などという会議が開かれる。その中の一人が実は……と言ってネタ帳を取り出し、漫才の打ち合わせが始まった。


「……あの、ロストワーズの1つ、『日本語ジャパナ』は知ってますか?あのスラングとかも……」

「まぁ大体は。」

「これでいこう!」


 漫才の内容が決まったらしい。風貌は荒くれながらも何気に教養のある人間なんだなぁ……流石エクセラールと思いつつ今村はコントが始まるのを見る。


 荒くれ男 「……はぁ。どうしよう……」


 別の荒くれ 「どうしたんだ?」


 荒くれ男 「……親に、エロ本を持っているのがバレたみたいなんだ……帰ったら机の上に置いてあった。しかも、年上系のだったからさ……気不味い……」


 更に別の荒くれ 「しかも大量に買い足されてオススメとか書いてあったらしいんだよ……」


 荒くれ2 「何だそんな事か。俺なんてしこってるところとかまさにマグナムを発射してるところを目撃されたことあるぞ!」


 荒くれ男 「お前、何で四股を……?しかもテッポウまで家でやってるとかお前のガタイだと家を破壊するだろ……」


 荒くれ2 「お前俺を何だと思ってるんだ?そこまで大量に撒いたりしないぞ?多少部屋は白くなるけどよ。」


 荒くれ男3 「お前塩まで撒いてんのかよ……」


 荒くれ男2 「流石に潮吹くまではやんねぇなぁ……やり過ぎは体に良くないしよ。」


 荒くれ男 「まぁお前みたいに鋼のメンタルを持ってる奴らばっかりじゃないんだよ……学生にとっちゃ親にエロ本見つかるって相当なことだぞ……」


 荒くれ女装 「あ、あんたおばさんから聞いたわよ!?その……えっちな本を大量に持ってるって!部屋の一部を埋め尽くすばかりの……」


 今村は噴いた。


 少し席を外し、遠くから「似合ってるって!」とか「うわ……指名されるレベルだ!」とか「金稼げるって!」とか「町で見てたら絶対声掛ける!」とか言われて女装させられていたらしい荒くれ女装が酷い恰好をしていたからだ。


 そして仲間たちの言葉の意味を理解したこと、そして案外乗ってしまっている男を見て笑ってしまった。


 その上、話が進むとその荒くれ女装は学園のマドンナ役らしく、これより酷い奴しかいない学校を想像するともう笑うしかない。


 荒くれ男 「さ、流石にそこまでは持ってないぞ!」


 荒くれ女装 「嘘よ!おばさんに言われて、見に行ったらベッドと同じくらいの体積量はあったわよ!」


 荒くれ3 「買い足されたんだろうな……」


 荒くれ女装 「そ、そんなにえっちなことがしたいなら……私ですればいいじゃない!」


 この後、きちんとしたネタが繰り広げられたがあまりのミスマッチであり存在自体が面白い荒くれ女装、そしてそんな荒くれ女装から荒くれ男を取りに来る謎の転校生……歴戦の荒くれ女装が出てくる変な劇を心行くまで堪能した。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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