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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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7.暴虐中

「あ、あの……」

「何でこの馬鹿たち地図持ってねぇんだこの屑が……社会のゴミめ……」


 今村は馬車などを漁っていたが結果的に地図がないことが判明し、文字通り死体蹴りをして男たちの死体を遥か彼方に蹴り飛ばしていた。


「す、すみません!少しいいですか!?」


 そんなご機嫌斜めの今村に勇敢に話しかけるのは虎人族の男の子だ。今村は彼が必死になって話しかけようとしているのに気付いて死体蹴りを止める。


「何?」

「あなたは、誰……いえ、まずは、助けていただきありがとうございます!」

「おー。気にすんな。で?」

「僕はティグリス王国第2王子のゴルト・ティグリスと言います。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいですか?」

「ユーフラテスだ。」


 何となくそう答えて今村は撤回する。


「やっぱりモルコ・ブギーマンだ。今日はそんな感じだし。ん~でも術がないし最近呼ばれ慣れたやつがいいかな今村で。」

「……えぇと、今村さん。でよろしいですか?」


 今村は頷いた。そして本題に入るように促す。


「聞けば、今村さんも人里の方に行きたいと言う事でしたよね?途中まででいいので、この森から出るまでご一緒させていただいてくれませんか?」

「着いて来れるならいーよ。」

「ありがとうございます!」

「いや、感謝される筋合いはないな。」


 夜が更けてきたので今村は今日はここで野宿することに決めた。取り敢えず手近にあった木を伐って木材と木のネジを作り、ネジ以外はイカレた力を以て無理矢理くっつけて小屋を作る。


「よいしょっと。」


 地下に杭を打ち込む音に怯える子どもたち。巨大な木を4~5本伐って結構立派な小屋とその中の家具を作り上げた今村は頷いてその中に入った。


「ふむ。まぁまぁかな。術があればもっと綺麗にできるんだが……まぁ充填中だから仕方ない。」

「凄いにゃ……」


 そんな感じで納得して寝ようとした今村の後に続いて別の子どもが小屋の中を覗いて来た。その姿を見て今村は幼いころの芽衣の姿を思い出す。


 黒髪、黒目の黒猫耳に黒尻尾の可愛らしい女の子が尻尾をゆらゆらさせながらこちらを見ていたのだ。


「入りたいにゃ……でも怖いにゃ……」


(全部聞こえてるけどこいつあざとい口調だなーアザトースとでも呼ぶか?まぁやめておこう。邪神になってしまう。)


 それはさておきと今村は外にいる猫娘に声を掛けるために戸を開いた。


「入りたきゃ入れ。」

「にゃ!」

「ただし俺のベッドには近づくな。寝ぼけて切り刻む可能性が高いからな。あっちのベッドなら可。」

「ベッドにゃー!」


 ベッドは伐った木の葉っぱを強烈な殺気を浴びせて枯らし、そこに住んでいる者たちを皆殺しにした後、その葉っぱを切り崩してしまった馬車の天井の布で包んだ物だ。


「うにゃうにゃうにゃにゃ……ふみゃ……ふぅ……」

「寝んの早いな……」


 外にいる面々がちょっとだけ戸を開けて羨ましそうに猫娘を見ている。今村は虫が入って来るので止めさせた。


「あの……僕らはいいですが……せめて女性陣にはそこの空いてるベッドを貸して貰えませんか?」

「空いてる分は別にいい。……あ、盛んなよ?」

「そ、そんなことしませんよ!」

「うるせぇ八つ裂きにすんぞ。」


 寝る気になった今村は若干不機嫌そうにそう言った。そしてベッドに入って眠りに就く。


(……あんまり寝心地よくないな。明日からは持って来たカプセル式ホテルにしようかね。)


 そして、ベッドは期待外れだったのでそう決めた。











「あー……あんまり良い眠りじゃなかった……」


 今村が目覚めたのは昼下がりだった。体温を跳ね上げて体に付着していたゴミや不純物などを燃やして身支度を済ませると既に起きていた子どもたちを連れて街道に出るために動き出す。


「……何か今日は虫けらどもが多くてキショイなぁ……」

「ひっ!アレはキリングホッパー!災害きゅ……」

「複眼的思考が求められてるけどさぁ……実際に巨大な複眼見るとマジ気色悪いよな……」

「デススラグ……都市害きゅ……うん。一々騒いですみません。」


 さっきから出てくるのはむし、ムシ、虫、蟲……虫ばかりだ。いい加減無視していきたいのだが、奴らに怯えと言うものはなく、殺すしか方法がない。


「キモいなぁ……刀が穢れる……」


 そう言いつつ今村は蛭の化物を斬撃で斬り殺した。基本的に刀は斬撃発生装置のように使っているので汚れてはいないが、気分的に嫌だ。


「まだ真っ赤な熊さんとかの方が可愛かった……つーか美味しかった。」

「もしかしてタイラントベアー……いや、もしかしなくてもそうなんでしょうね……うん。食べたんですか。」


 ティグリス君は諦めの境地に入っていた。彼は、王族としての教育をずっと受けていたので天災級、災害級、都市害級などの危険な魔物たちのことをよく知っているのだ。


「……このままだと僕らこの森から出る前に魔力の溜め過ぎで大人になるかもしれませんね……どうしよ。」


 殺していった魔物どもの殆どの魔力は今村に吸い上げられているが残り滓が子どもたちの中に入ってくる。そしてその残り滓だけでも十分すぎるほどの量なのだ。


「帰って僕と分かられなかったらどうしよ……」


 そんな心配をしていたティグリス。それに対して今村は全く気にしていないどころか溜息を一つついて言った。


「飽きた。もういっか。」


 そう呟くと地面を蹴った。地上にはクレーターが生まれ、その中に土砂と子どもたちが流れ込み始める。


「ま、魔晶結界!」

「お、重い、にゃ……」

「落ちないように下にも結界を!」


 子どもたちは頑張って土砂崩れの中で耐える。今村は空高い場所でどちらに何があるのかを超適当に確認すると地上を見下ろして刀を抜く。


「……あんまり強いのもアレだが……この世界って結構規格外だからなぁ……これ位はやっておくか。『金神斬波』」


 そして予想落下地点から森の端まで一直線に刀を振り抜く。そこからは全ての物が消し飛び、巨大な地割れが出来上がっていた。


「うむ。綺麗な切断面だ……土砂崩れも起きていない。」


 満足気に自由落下をする今村。この辺りの雲には乗れないのかなどと考えつつ地上に戻ると子どもたちが土砂と戦っていた。


「何やってんだ?そりゃ。」


 子どもたちが必死で呑まれまいと抗っていた土砂類を一突きで消し飛ばすと今村は割った大地の中をのんびり歩いて進み始める。対する子供たちは超全力で走り今村を追う。


「お、何か面白い化石見つけた。」

「はーっ……はーっ……」

「このペースで行けば半日で森を出れるな~」

「にゃ……にゃーは、部屋のにゃかの子猫だったにゃ……」


 時折何か変なのを見つけたり敵を惨殺したりすることを休憩として子どもたちの半日の異常マラソンは繰り広げられた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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