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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十六章~魔法大世へ~
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1.波紋

「ふむ。結局原因不明だな。」


 今村は様々な場所を巡って竜神が起きた理由を探っていたが手掛かりは得られなかったのでゲネシス・ムンドゥスへと戻っていた。


「みゃっ!」


(まぁ、怪しいのはミニアン・セイランコンビだが……今の状態であそこに居続けるのは理性が弱ってるっぽいから厳しいし……仕方ない。)


「ね、ねぇ……何で今クロノ投げられたの……?」

「何となく。」


 頭を撫でられてご機嫌だったクロノが急に頭を掴まれて壁に投げられ、涙目になりながら健気に今村の下へと戻ってくる。


「さて、何しよっかなぁ……戦争でもしようかな……」

「ぅぎゅう……えへへ……」


 抱きかかえられてご機嫌のクロノは先ほどのことをけろりと忘れたかのように今村とぴったりくっつく。そんな両者の様子を見ていた祓は今村の袖を引こうと無意識に手を伸ばし、それを意識して降ろした。


「何だ?この腐れロリコン野郎が、殺してやろうか?って思ったけどやめたのかな?」

「違います!わ、私も抱っこして欲しいなって……」

「お前今幾つだよ。別いいけどよー……」


 右側にローブで抱き止めるとその逆にフィトが現れて無言で貼り付き、そしてその後も別の女性がどんどん増えて行くのを見てアリに群がられる砂糖ってこんな気分なんだろうかと空を見上げた。


「……何が楽しいんだ?」

「一緒に居ること。」


 その後の答えは聞き流してついでに自らの体を燃やして群がって来ていた女性たちを全員燃やし始めた。それによりほとんどの面々が散り散りに治療のために逃げて行った。


「……あ~それはそれとしてそろそろ、いい加減に訊くべきと思うんだが……ここに残ってる面々……いいか?」

「何?」


 燃えたことすらもなかったことのようにして比較的能力の強い面々であるアリスなどが今村の質問に答えようと身を乗り出して近いと顔を顰められて凍らされた。


「で、……正直、非常に気持ち悪い質問になると思うんだが……お前ら、俺の何が好きなの?ざ「「「「「全部!」」」」」い……そうか……」


 財力や能力、もしくはそれに付随する何かかと尋ねる前に答えが返って来て今村は何故か落ち込むように顔を俯けた。そして何か決意を新たにしたかのように顔を上げると少しだけ笑いながら口を開く。


「でも、……具体的には言ってないってことは……本当は。」


 この後句読点なしで自分を褒める文章を嫌と言うほど聞かされて気分が悪くなるとそれを察したらしい一行が一応黙って気分がよくなるのを待った。


「……もう、言わなくていいからな?」

「えー……」

「面と向かって言う機会はあまりないですからこの際に出来る限り言っておきたかったのですが……せめてナンバー20までは言いたかったです……」


 手に持っているノートを見てそう言う祓に今村は祓は何かにつけてノートに書く癖があるなと思いつつ後でそれを別人の特徴に書き換えたいと思った。


「……どうするかなぁ……思いの外気持ち悪い……ちょっと全員退出。」


 今村の一言に従って全員出て行く。だが、天井裏に新たな訪問客が現れたので無言で棒苦無を投げた。


「あだっ!?」

「その声は……覚えてないからいいか。」

「あなたは覚えてないでしょうね。僕みたいな木っ端妖怪のことなど……僕の名前はさとりですよ……」

「思い出した。文化祭の時に俺の好みを暴露しやがった腐れだな!」


 今村は一気に天井にいる存在を捕まえに掛かった。天井裏に居たその存在は呆気なく捕まると今村の前にローブで拘束されて降ろされる。


「お前の所為で俺がロングストレート好きってバレてここの女どもの髪には個性がなくなった!」

「いや……それは言えば彼女たちはどんな髪型にでもするでしょうに……」


 少年の姿をした覚は表面上今村の言葉に苦笑しつつ、内心は怯えてこの場から逃げ出したい衝動に駆られている。それでも彼は言った。


「覚えてもらっていて光栄です。お久し振りですね。」

「覚の肉って美味いのだろうか?狒々(ヒヒ)とかの妖怪の一種って聞くから食うなら脳味噌かな?」

「ちょ、本当に勘弁してください!大事な話があるんです!」


 キッチンを用意していた今村は覚の必死な様子に巨大な肉包丁を台に置いて話をするように促した。覚は大きく息を吸って一気に言った。


「記憶が、なくなりつつあります。」

「……まだ残ってたのか。刈り取らねば……」

「違います!あなたの好みについてはなくなってます!やめて!」


 ハルペーのような湾曲した剣を出して何かを刈り取ろうとする今村から涙目になりながら覚は助けを乞い、何とか話そうと頑張った。


「ないな。……じゃあ何がなくなってんだよ。」


 一頻り調べ終わった今村は剣を仕舞って覚にそう尋ねる。彼は頭を切り開かれなかったことに安堵しながら先程のような失態を犯さないように気を付けて言葉を委細漏らさずに言った。


「あなたを慕っている乙女たちの、あなたに関する記憶ですよ。」

「やったぁ!」

「……いや、冗談じゃないんですよ?あなたの術式じゃない……厳密にいうとあなたの術式なんですけど……過去に何度も掛けたそれらや好意を消そうとした術式が絡み合って最悪の結果をもたらしつつあります。」

「よっしゃぁ!」


 覚は今村の反応に今どれだけ不味い状態なのかを懇切丁寧に、何とか伝わるように教える。


 今村の術式に合わせて各地の妬みや僻みなどがその術式に力を与えて促進していること。


 先程ここに居た「幻夜の館」でも有数の力を持つ者たちも合成の影響か、その術式に知らない内に蝕まれていること。


 それらの術式は日頃元「幻夜の館」出身の女性とごそごそして、ついでに内心を読んでいた覚だからこそ気付けたもので、ここに居る面々は基本的に他者の心を読まないので気付けないであろうこと。


 その他色々懇切丁寧に教えて、覚は今村に伝わったかな?と期待して今村を見上げる。そんな視線を受けた今村は覚に尋ねる。


「その話は、他の誰かにしたか?」

「いや、あなた以外にどうしようもないからまだ……」

「ふむ。取り敢えずまぁ……予想より悪い結果に陥ったらいけないからその対策は創っておくが……」


 今村はそこで言葉を切ると最近竜神によって壊された場所ではない新しい実験世界へと覚を連れて動き始めた。


「ぼ、僕は何にもできないですよ!?」

「……まぁ、ちょっと色々するんだよ。……お前は特に力を貸さなくていいが……意見だけは聞こうと思ってな。」

「……何を?ってうわぁっ!」


 覚の声が尾を引く中で二人は別世界へと飛んで行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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