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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十五章~飛び立とう~
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16.彼の本質は何ぞや

500話です。ありがとうございます。

 戦闘直後から周辺にある世界を巻きこむような強力な攻撃が繰り出され、それは戦闘が続くにつれて更に凶悪化していた。


「『破壊宴戯』!」

「……『絶破』」


 「呪刀」を演武のように流麗に動かしながら大規模な攻撃を行う今村に対して竜神はその場からほぼ動かずに自分に降りかかる災禍だけを破壊して涼しげな顔をする。


「ちっ『滅竜災禍』!『破竜』!」


 その涼しげな顔に対竜の技を繰り出し、それすら軽く避けられ、返す刀で更に連撃を送り出した。


「『魔戦技』」

「ぬっ……流石に……『轟波衝』!」


(かかった!)


「『魔神撃』ぃ!」


 竜神が強力な技の連撃に防御に入ったところでわざとその一番防御している場所へと魔法をぶち込んだ。光が炸裂し、そして視界が開けた頃には竜神の肌が薄く光っていた。


「……痛かったぞ?」

「そりゃ、痛くしましたんでね。」


 さらっと言ってくれるがこれでもかなりの力を込めて撃った魔法だ。血の1つ、内出血でもしてくれてもいいものだが、視た所全くダメージとして残っている物はなさそうだ。


「さて、ほぼ能力を吸い出したところで尋ねようか……小童。主は過去に生き過ぎじゃ。我と共に未来を生きぬか?」

「俺はいつでも未来志向だが?」


 その答えに竜神はやれやれと言わんばかりに首を振る。


「主のそれは、未来のことを思ってやっているのではないじゃろう。過去の復讐のために、目的を達成するために、そのためだけに立てられた計画表だ。それは未来に生きているわけじゃあない。」

「あ~……説教はもう要らないんだが?ストレスが溜まる。」


 今村の言葉に竜神はムッとした。


「主が、いい加減に前を向いて歩けばいいのじゃ。何度も何度も説教紛いのことをさせるのは誰のせいだと思っておる。」


 今村は歳のせいだと危うく口に出し掛けて喉下まで出かかったそれを飲み込み別の言葉を選んで返した。


「勝手に人の人生を決めないでくれるかね。前を向いて歩けと言われても俺には俺の見えてる道があるんだよ。」

「破滅に向かう道は道とは言わぬ。終わらせんぞ、主も、我の世界も。」

「迷惑はかけてないと言うのに……」


 戦況は膠着している。やる気のない竜神に、勝ち目のない今村。今村は向こうから攻勢をかけてきた場合はすぐに切札を切ることに決めて出方を窺う。


「ここまで他人の生きざまに組み込んで来おって……易々とは死なせるわけがあるまい。」

「態々苦しんで死にたいわけがないだろ。簡単に、楽に死なせてもらうよ。そうじゃなきゃ世界の敵とかやってられないからな。」

「あの小僧が決めた世界の秩序など我には関係ないわ。主よ、こちら側に来い。我らと共に世界を滅ぼせば、主が正しくなるぞ?」


 今村はそれを聞いて笑った。それは邪悪で、そして諦めを含んだ顔だ。


「俺は間違っているんだよ。滅ぼされなきゃぁならん……それが俺の能力であり、本質であり、そして存在だ。」


 歪んだ笑みを消して臨戦態勢に戻る今村に対して険しい顔を続ける竜神。彼女はそのままの顔で今村にわからないように眼を変えた。


「小童の能力は例外じゃろ……何故、その能力でここまで死と滅びを選ぶ……例外なき世界は……っ?待て、主は……そうか……」


 今村に聞こえないように言葉を自己消化していく竜神。彼女はナニカの解析を終えると完全に能力を行使する姿勢から脱力した。


「おい、殺すぞ?」

「主になら殺されてもいいよ。」


 突然の宣言に今村は新手の罠かと警戒してその場から動かない。そんな今村を見て寂しそうに竜神は笑った。


「小童……いや、虚無の子よ。これ以上の接触は自害しかねんから諦めるが……その命、自愛してくれ。これ以上言及して、寝た子を起こす真似はせんが……我は祈ろう。再び会うは、契りの時よ。」

「それは二度と会わないという宣言ですか?」


 今村の返しに竜神は苦笑する。


「分の悪い賭けじゃのぉ……フォンの奴も、また運が悪い……」


 竜神の呟き、誰かの個人名と思われる部分が今村の耳に入ってきた途端に今村は激しい頭痛を覚えて竜神から目を離してしまう。その瞬間に竜神は今村の懐に入っていた。


「しまっ……」

「何もせんよ。……ただ、これを少し処理するだけじゃ…………うっぉ……」


 今村の胸板に小さな手を添える竜神。彼女はそれを済ませると辛そうな顔になり、そのまま今村を見上げて無理に微笑んで見せた。


「また、の。」


 触れる唇と、甘く交わされる唾液。柔らかな香りを残して竜神は跡形もなくここから消えた。


「……何だったんだ。破壊しに来たのか?」


 取り残された今村はわけが分からないまま大量に破壊してしまった世界の修復と、そして大雑把にそれを終わらせて大変なことになっているであろう自世界へと戻って行った。














「ばぁるじざまぁあぁぁぁあぁっ!にぎゃぁぁああぁぁあっ!」

「……何やってんだあいつ、元気だなぁ……」


 今村が自世界に戻ると滂沱の涙を流しながら突撃してきたるぅねがその勢いを「二倍返しの復讐法(ジ・ハンムラビ)」で返されて反対方向に吹き飛ばされて行った。


「お、世界の狭間に落ち……なかったか。」

「危な……い、よ……?」


 世界の一部を創造したらしいシュティが地面にへたり込んだままるぅねを救ったようだ。だが、その後は気にしないことにしたらしく、シュティは今村に尋ねてきた。


「あの…………竜、神……は……?」

「分からん。何がしたかったのか全く分からんが……もう来ない。」


 今村の言葉に無表情なシュティが少しだけ喜んだ雰囲気を纏う。だが、それでも彼女は無表情だ。


「あり、がと…………兄、様……」

「別にお前のために戦ったわけじゃないが……後、その兄様でもないんだが……いやもう別にいいんだけど……」


 通算何人目の義妹になるのだろうかとふと考えてすぐに嫌になって首を振る今村。そこに再びるぅねが今度はソフト目に突っ込んで来た。


「あるじしゃまぁ……るぅね、役立たずでごめんなさい……」

「ハッハッハ。最初から期待してないから安心しろ。」

「…………ごめんなさい……」

「鬼…………」


 泣き始めたるぅねを慰めつつ無表情から若干ジト目に変わったらしいシュティが今村を見上げる。その顔は不思議そうに自分の手を見ていた。


「……?あいつ、俺の体に何をしたんだ……?妙に、ある程度だがテンションが高いんだが……まぁいいか。高いなら問題ないし。」


 芽生えた疑問は後で考えるか、もしくはなかったことにして今村はこの世界の復旧を開始した。




 ここまでありがとうございました。予定では本編はおそらく後100話余りとなります。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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