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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十五章~飛び立とう~
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13.帰還宣言

「でもまぁ、それで俺に勝てるとか思ってないだろうな?」

「思ってませんよ?」


 今村は祓の姿を取った五行女神を相手に薄く冷笑を浮かべながらそう言って「αモード」に入った。その後ろで再び力の凝縮が行われて今村は溜息をつく。


「……はぁ、実行するのは良いが……陰陽神と天地は……」

「成功じゃの。」

「私になったみたいね……お姉ちゃん頑張るよ!」

「!?」


 声と共にサラとアリスが束縛術式を掛けて来る。それら自体に今村は別に驚きはしないのだが合体が成功したことに驚いた。


「……?どうやって……よっと。」


 彼女たちの全ての攻撃を軽く躱したところで今村は鑑定を開始する。視ることに専念している今村が攻撃を一切しない状態であるにもかかわらずに全ての攻撃を無効化されている状態に3人は内心で驚愕した。


 しばしの無言の応酬の後、今村の目が元に戻りこの戦闘の中で初めて自分から攻撃術式を使い、3人の束縛術や捕縛術を破壊した。


「成程ねぇ……天地神にマキアと白崎……で、陰陽神の方にはクロノが繋ぎとして入ったのか。ん~そのやり方は間違いじゃないんだけど……そんなに強烈に繋ぐと戻れなくなる可能性が非常に高かったんだけど、いいのかな?」


 攻撃とも言えない3人の攻撃を遊ぶように操作し直してぶつけたり反転して襲い掛からせたりしながら今村は揶揄するように嗤って尋ねる。


「いいよ。それで帰って来てくれるなら……置いて行かれないなら、何でもするんだから……!」

「ん?今何でもって言った?」

「ひとくん以外と付き合うとかは嫌!」


 つまらなさそうに舌打ちを一つすると今村は打って出た。一応大規模破壊術はスミスの世界に配慮して使わないことにしてビリオンソードを召喚する。


「でー、模擬刀・裏。まぁ殺してもいいんだけど、一応、君らの中にはまだ返し切れてない分のおまけがあるからこれにしてあげる。」


 そしてビリオンソードの形が変えられ、柄が毒蛇の形を模したファルカタになるとその剣を見て天地女神と化しているサラが全員に警鐘を出した。


「あれは概念を喰らう剣らしいぞ!皆気を付けよ!」

「おや、情報源は白崎の意識かな?まぁどうでもいいけど。」


 一層緊迫した空気の中、四方を覆っていた束縛用の罠や捕縛術式が一時的に消され、静寂が場を包んだ。



 先に動いたのは今村―――正確には彼が操る億を超える剣だ。その切っ先が壁になるほどの密集させた状態で3人を包み、そして圧倒する。


「……呆気ないな。あれくらいの能力があれば脱出も可能だっただろうに……」


 剣に覆われて球状の籠に囚われた面々への警戒を薄れさせることなくそう言って今村は剣を次々に柄の蛇が増えてハート形になった物と新しい物を入れ替えて行く。


「ん~本物より吸収量が少ない……やっぱりきっちりとした材料じゃないと難しいんだろうね……俺も理論上は創ってたんだが、それ創るくらいなら術式編んだ方が早いからなぁ……」


 そう独りごちつつ作業を続ける。


「うわ……吸収しきれずに破裂した……急げ急げ。」


 入れ替える。


「……あれ?」


 入れ替え続ける。


「おい……そろそろ……」


 在庫が減って来た。ここに来て今村は焦燥を覚える。


「10億……だぞ?パッと見で減るのが分かるって、おかしくないか?」


 そう呟く間に遅れた分だけ剣が砕け散った。砕け散った剣はご丁寧にハート形の柄の部分だけ空間に漂っている。


「気持ち悪いから破壊したいけど……今忙しいし……」


 周囲がハートまみれになって行くのを見て今村は近づいてきた分だけ破裂させて球状の3つの剣の籠を見る。だんだんこちらに近付いているようだ。


「どーしよっかなぁ……もう少し、付き合うか……?」


 今村的にはこれで決めるつもりだったが、ぎりぎり決まらないかもしれない現状を見て頷いた。


「まぁどうでもいいや。どっちにしろ恋愛しているという感情は現在進行でかなり喰ってるんだから問題ないだろ。それよりもこの戦闘廃棄物の方が問題だな。恋愛してない奴らに食わせて強制カップルでも作る……あ!良い事考えた!」


 かなり大きめの独り言を言った今村は周囲にあるハート形の蛇を集め始めた。


「一応調べないと……うん。カップル成就系で、結構な力がある。いいねぇ……悪用し放題……【凝縮】。」


 今村はその柄で作られたハートの物品をチェーンのようにして繋げてネックレスを作るとその先にハート型の柄をマイクロ単位まで凝縮して作り上げた結晶を加工して宝石のようにしてくっつけた。


「……取り敢えず、3対出来た。ん~……相馬死んじゃったしなぁ……まぁ俺が殺したんだけど。……あの滅私奉公ズの子どもたちの死体はどっか行ったし……」


 強烈な力を放つそのアクセサリを見ながら今村は誰に使うか考える。その間にも作業は止めないがビリオンソードの残りはかなり減って来ている。


「早く決めないと……仕方ないから姉貴とタナトス、イグニス、トーイで4つくっつけて、白崎と蜂須賀でもくっつけよう。そしたら……うん。6個だ。あ、でも蜂須賀結婚したらしいし……どうしよう?」


 一先ず4つの使い道は決定したのだが残り1対が手持無沙汰になる。そこで今村は決めた。


「じゃあ百合でも咲かそう。みゅうとクロノか、祓とマキア……もしくは祓と白崎でもいいな。シェンとフィトもありだし……何気にサラとヴァルゴもあるかもしれないんだよな。……一気にネックレスが足りなくなった。ベストカップルをどうするか……」


 一応もう1対出来上がった。みゅうとクロノ、そしてもう一組をどこにするかで今村は悩む。


「……どうするか。いっそのこと適当に放り投げて目が合ったやつと付き合わせるとか……は、流石に可哀想かな?つーか星に埋めて女神様光臨とか……あ、これでいこう。」


 方針が決まった。今村は攻撃に対する強力な反射陣を形成してこれからのことを考えて笑うとビリオンソードを刹那の時間だけ引かせる。


 その瞬間、唇に柔らかい物が―――猛スピードでぶつかって来た。


「痛っ……何すんじゃボケぇ……!」

「キス。大好きぃ……っ!大好きっ!ぷっはぁっ!あ~生き返る~……」

「……まぁいいけど。これでお前らの末路は決まっ……あれ?」


 陰陽神と化したアリスが神速でキスをしてきたことに不意を打たれた今村はそれを普通に許し、代わりに猛毒を送り込んだがアリスはいつものように何故か毒を無視して恍惚となる。


 そして今村は顔を引き攣らせた。


「……愛情が、増えてない?ねぇ?【愛氣】とか……一回、消してなかった?溢れ出してるそれは何?」

「愛情!合体したよ!」


 無言で残りの2柱、天地女神と五行女神を撃ち抜いて斃すと今村は残る陰陽神を見て睨む。


「これでも、まだ愛情とか戯けたことを言ってられるのか?」

「うん!」


 いい笑顔での即答だった。今村は苦い顔をする。


「だって、ひとくん居るから。ほら見て?二人とも別に苦しそうじゃないでしょう?最期にひとくんと居られて嬉しかったはずだよ?」

「……【白外法】」


 今村はサイコチックなアリスを無視して殺した両者を普通に生き返らせると機嫌悪く言った。


「……ゲネシス・ムンドゥスに帰ってやるよ。」


 何が何だか分からない五行女神の祓と天地女神のサラだが、帰って来るという宣言に陰陽神と化しているアリスと一緒に喜んだ。


 その喜びの中で今村は疲れたように呟く。


「もう少し、厳しめにしないとダメか。」


 その声は誰にも聞こえていなかった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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