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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十五章~飛び立とう~
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6.ヒノヤギハヤ行きの艦内

「……おかしい……」


 幻夜の館ではトップクラスの女性たちによる会議が行われていた。そして今回は誰が司会と言う訳でもなく順番に意見の出し合いから始まっていた。


 そして出た結論は「嫌な予感がする。」だ。


「上手く仕事を別の所に移せたから久し振りにこの世界の仕事を気にしないお休みで好きなことをしてると思うんだけど……」

「反応が、途絶えてますよね……」

「い……一応、それっぽい反応は……ある、と思うんです……けど……」

「何か~変なの~」


 アリスと祓の言葉に対してこの中では桁外れな能力を持っている五柱神であるシェンとフィトが不安気な顔でそう言い、シェンから続ける。


「ぅ、動かないんですよね……殆ど……」

「でも~他に反応はないし~……仮にね~動いてないのが~式神でも~この世界から~外には~出てないはず~……」


 フィトとシェンは「木」と「金」を司っている為、木製もしくは金属製の何かが動けば些細なことでもすぐに探知できる。前回の疑似記憶を植え付けられ知らない人と恋愛させられた恐怖体験からそれをいつでも使っているのだが、動きがない。


「この世界から外に出たのは……今の所申請があったのは一隻、お姉様が乗っている物ですよね。」

「密出世は他でもない仁さんの手でここに伝わるようになってますしね~他のが出た可能性は少ないですよ~」


 一行はこの世界から密かに出て行くのであれば今村は独りで出て行くだろうと言う予測の下、一先ず危険なことがなさそうであればと今からは少しだけ放置することにして会議を別の話題にして進行して行った。
















「ヒノヤギハヤは火竜神の創造した世界だ。基本的に殆どの物が火で構成されていて、ここで言う通貨は炎エネルギーを蓄積するサネルモって……まぁ簡単に言えばカードみたいなもので払う。」

「……説明はありがとう。それと、後ろの人たちは到着と同時に殺してもいいかしら?」


 今村は白崎にこれから向かう場所の説明をしていると白崎は一応話を理解した後に後ろの面々に綺麗な顔に恐ろしい笑みを浮かべて今村に尋ねた。


 因みに白崎の言う彼らは「もうすぐ着くぞ!」「おーもうすぐ着くか……つく……よし!到着まで餅でも作らないか?」「HAHAHAHA!これから炎の世界に行くからって今から寒くしなくてもいいんだぜジョージ!着くからもち米をついて作るなんてよ!」「まぁ、そう言わないで上げてよマイケル。丁度今私たちの着陸に際する最終確認も終わったところでやることもないわ。ボスのお許しがあれば餅つきやってもいいんじゃないかしら?」


 と言う茶番を繰り広げた後一度今村の方を見て好きにしろと言われ、今は杵と臼を持って来てもち米を蒸している。その会話の流れの時点で白崎は会話の終着地点を察していた。


「それじゃ蒸し上がったところで始めましょう?」「「「「そーれぺったんこ!「こっちを見ないでくれるかしら?殺すわよ?」ぺったんこ!」」」」


 有言実行で白崎は全員を撃ち抜いて食べ物を粗末にしたらいけないと言ってから彼らの口の中にあっつあつの米を捻じ込んで今村の前に戻って来た。


「……今村くん、何で止めないのかしら?」

「お前、呼吸を今すぐ止めろって急に同僚に言う?」

「呼吸をするようにディスらないでほしいのだけど……」


 移動中ずっとコケにされて何度も半殺しまでしたのだが彼らが懲りる様子はない。あまり気にしていなかった……わけでもないが、好きな人の前で胸がないと連呼されるのは本当にストレスがたまる一方だ。


「……今村くん、この体の……その、胸って……大きくできないのかしら……?」

「無理。これを完全体に設定してある。まぁ俺が本腰入れて頑張ればやってできないことはないんだが……やっぱ無理!お前はそのまんまでいいと思うぞ。バランス的に。」

「……せめてコロルに負けたくないのだけど。いや、欲は言わないわ……ただ、せめて……せめてクロノちゃんよりは胸囲が欲しい……」

「アレは病気だし……」


 クロノは健康体だ。ただ、追及を逃れるために変な返しをしておいた今村は内心でクロノより小さいのか……と思っておく。クロノは成長を逐一話してくるので今村は彼女のサイズを知っている。


「……まぁ、うん。別にいいと思うよ?」

「今村くんにはわからないのよ……持てる者と持てない者の差が……80の大台に乗りたい……」

「八つ当たりは止めてやれ……」


 悲しげな声を漏らしつつ再生中の後ろの面々に指からレーザーを放って回復を妨げる白崎。そんな彼女を今村は止めつつそろそろ着く頃かと艦外を見る。


「胸、ねぇ……どーでもいいけどなぁ……」

「そう言いつつ時々チラッと見てるじゃない……」

「視界の中で動いてる物が接近して来たらカウンターを入れる癖があるから仕方ない。」


 今村は曲がり角で人とぶつかりそうになった際に何はともあれ拳を握って殴るモーションに入っているのを何度か見たことがある白崎はその中でも実際に攻撃を加えられた人のことを思い出す。


「……それでサラさんは急に殴り飛ばされてたの……」


 サラは最初殴らなかったが、目の前でやたらアピールして来ていた(本人は恣意性を否認)のが鬱陶しかったので白崎の前で殴り飛ばしたことが何度かある。因みにマキア(本人は故意に行ったと得意げに証言)の方が数的には多い。


 そんなことを思い出しつつ今村はもう今では過去のことだがなぁ……と思いつつ少し笑って応えた。


「いや、必要以上に近付かれたら……まぁ軽くだったら我慢するがしつこかったら殴り飛ばす。あいつらはそれに引っ掛かっただけ。」

「何か遠い目をしているけど……そう言えば、この密旅行っていつまでするのかしら?」

「ん?俺はエクセラールに行って目的を熟した後に次の居住世界が見つかるまでだな。お前は飽きたら帰っていいよ。」


 ここに来てようやく白崎は今村がゲネシス・ムンドゥスに帰る気がないことを知った。


「……え、それって……不味いんじゃ……行方不明に……」

「HAHAHAHA!まるで君の胸の内部のようにかな!こ……」


 流れるような動作で密かに復活していたマイケルの額を撃ち抜くと白崎は今更の事実に頭を抱える。


「わ、私だけ降りるなんてできないわよ……まず間違いなく手掛かりとして発見された上に吊し上げられて八つ裂きにされるわ……」

「お、そんな事より着いたぞ。」


 今村は呑気に外の世界を白崎に見せる。先程の暗く何もないように思われる空間がいつの間にか明るくなり、様々な乗り物、また何だか用途不明の物質が多く並んでいる光景が目に入った。


「じゃ、ヒノヤギハヤへ……行きますか!」


 白崎がいろいろな悩みに頭を抱える中、今村たちは元気に燃える世界の地面へと降り立った。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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