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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十五章~飛び立とう~
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1.お仕事……!

 今村の休日明け、「幻夜の館」に帰って来た今村を見て一先ず安堵したレジェンドクエスターズの面々は会議を行っていた。


「……では、先生が今回の凶行に至った理由は……仕事がしたくなかったということが最も大きいと考えますか……?」

「……普通に嫌がられてる気もする……けど、それは頑張るから……」


 もっと負担を軽くする。家には呼ばれてない限りあまり行かない。大勢で急に押しかけないなど様々な対策を取ることとして、一行は葬式のような雰囲気の中で話を進めていた。


「ひとくんの仕事量……最近、私の所の仕事は別窓口で独立してるからわからないなぁ……」

「その件に関してはお姉様から情報を頂いてます。何でも忙殺するための量で人間……それどころか普通の神でも無理な量だと聞いています……」

「む……?仁は結構楽に……」


 サラの言葉に大袈裟な溜息と共にモニター映像で映し出されているマキアが顔を上げて発言する。


「バカですねぇ……他の世界の機密事項とか色々あるのに私たちが居たら先生も仕事が出来ないでしょう?その程度のことも分からずに家に入り浸ってるから私たちにも迷惑がかかるんですよ!」


 映像越しのマキアが入り浸っていた7人を見下すような視線で睨む。彼女は止めたが他の面々は聞き入れなかった上で今回の惨事が起きており、巻き込まれて憤慨している。


「でも……」

「でもも何もないですよ!」

「お、お兄ちゃんに訊いて来る……」


 何かを言いかけたクロノはマキアに怒られて会議室から出て行った。それを止め損なってマキアは再びイラッとくる。


「いつまで経っても子どもですねぇ……あ~もう。皆さんも皆さんで干渉し過ぎです。簡単に術に陥落する程度の実力でそんなにアピールしても無駄に決まってるじゃないですか。そんなんで落とせるならウチ(・・)の裏にいる人たちも苦労してませんよ?」


 言うことを聞かない面々にマキアは説教を始めた。とばっちりを喰らった仕返しであり、自分も上手く行かない八つ当たりでもある。そんなことをしているとクロノが会議室に帰って来た。


「……何しに行ったんですか?」

「お兄ちゃんに、『仕事楽しい?』って訊いてきた……殺されたいのか?って言われた……『嫌なの?』って訊いたら当たり前だろうがって言われて、やりがいもなければ楽しくもないって続けられた。」


 書類の山脈で覆われた執務室の中でこいつ喧嘩売ってるんだろうか?そう思った今村は悪くないだろう。


「それとね、クロノがね、お兄ちゃんと一緒に居られていいよね菫ちゃんズルいよって言ったら菫ちゃん喧嘩売ってるなら買うわよ?って怒ってクロノをぱんちしたの。」


 菫は白崎の名前だ。彼女はその処理能力の高さと見通しの高さから今村と同じような業務をしており、少し異世界に行っている間に作られている書類の高さを見て現在は地獄を見ている。


「……そりゃ、ブチ切れて八つ裂きにして殺されなかっただけマシだと思ってくれませんかね?あなたたちが自分の分だけやって今みたいに遊んでる間に私たちはあなたが知らない男と遊んでた間に貯めてた仕事のせいでずれた分全部やってるんですから!」

「……納期は守ったし……」


 アリスの呟きにマキアの映像の向こう側で何かが圧し折れる音が聞えた。


「デスマーチ!デスマーチなんですよぉ?先生みたいに事前申告があって、自分の分の仕事を先にやって、代わりの人を呼んでからならまだしもですね!勝手に休んで、その間の仕事を押し付けて!それをこっちでやってたら終わったと言われて新しい仕事を押し付けられたこっちの気分分かりますか!?先生と半月も会ってない……」


 最後の方は疲れた独り言のようになって消え行く。


 レジェンドクエスターズは基本ホワイト企業です。ただ、トップ付近になると処理能力と仕事量がおかしいためトップに余裕を持たせるために仕事を肩代わりすれば仕事量が激増する。


 アリスたちはある程度の地位で昇進を断り続けているのでその辺の事情を知らない。そんな彼女たちを見てこの中では良く働いているマキアがぼやく。


「先生にゆとりを持ってもらって会いたいのに……どっかの馬鹿達が先生の仕事の邪魔ばっかりするし……我儘だし……」


 此処まで来てようやく6人に悪い事していたんだなぁ……という罪悪感が芽生え始める。反省していない1人はフィトであり、彼女は会議中も全部眠っている。


「……わかった。じゃあ、昇進の話受ける……」

「私も薬学課の課長になります……」

「妾はやっぱり地獄課かの……まぁ、向こうのトップなのにこちらでいつまでも平をやっているのもおかしいといえばおかしいからの……」

「私は天界課ですか~……」

「わ、私、ここに来てまだ短いんですけど……第3世界、統括局局長になってもいいんですかね……?」

「クロノお仕事貰ったことない……」


 会議室内がワイワイし始めて来た。殆どがその能力の逸脱具合から他に強く出られないことを良い事に仕事が増えるから嫌だと昇進を断っていたのだがここに来てようやくやる気を出してくれたようだ。


 マキアは等しく全員に絶対地獄を見せてやると内心で嗤った。


「クロノはどうしよう……マッサージとか?お兄ちゃんが喜んでくれることしないと……」

「勉強でしょ。真面目にやりなさい。」

「フィトちゃん、起きて。お仕事するよ。」

「………………………………………………ん~?何~?」

「お仕事。やるよ?」

「え~」


 クロノとフィトは仕事をしていないので困った。それにマキアが微笑みながら手を差し出す。


「私の所で面倒看ますよ。」

「クロノだってお兄ちゃんの役に立つよ!」

「ん~と~……話が~わかんない~」

「仁さん、仕事忙しいからね……記憶とって、私たちが邪魔できないようにして、自分の仕事できるようにしようとしてたんだって……だからね、仕事を少なくすれば、もうあんなことないって……」

「じゃ~頑張る~」


 フィトも前回の記憶を盗られる事件は非常に、初めて泣きそうになってどうしたらいいのか分からない状態になるという嫌な出来事だった。再発防止のために出来ることがあるのなら頑張るのに異議はない。


「じゃあ、ひとくんから仕事を奪うぞー!」


 全会一致でそれは決定した。










 その扉の向こうで、


「……へぇ、俺から仕事を奪うねぇ……面白くなって来たじゃん。全員で俺の椅子を奪って俺だけ都落ち……望むところだ!この前の侵入者を入れて……官民一体の事業を進めるか。ちょっとミスして……乗っ取り大歓迎だ……!責任問題で辞任してやるぞ……!」

「仕事がなくなるなら……今から工作して少し仕事が増えるくらいの手間は……惜しまないっ……!」


 執務室に籠りっきりなのは気分も悪くなるので気分転換のようなもののために別部署に終わった分の書類を運んでいた今村と白崎が別計画を立て始めていた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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