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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十四章~さぁ、動き出そう~
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23.イイ事ワルイ事

 半日が経過した。雲の周りは屍累々で、その更に外はおろおろしている美少女達が、そして雲の中心では壊れた人たちがいた。


「はぁ。まぁシューティングと思ってもいいんだが。殺戮ねぇ……まぁ楽しいからいいんだけどさ。」

「にゃーん♪」

「えへーご主人様ぁ~」


 中の面々はこんな感じでコスプレ劇場を繰り広げていた。魔銃を手にして周囲の敵を屠り続けている今村はテイルコートに合わせた服装。セイランは猫を模した服。ミニアンはメイド服だ。


「んー……あ。『サウザンドナイフ』『ミリオンダガー』とか配備してみるかな。『破壊宴戯』」


 今村の両手はミニアンとセイランを撫でたり愛でたりで忙しいので無手の技で周囲を滅ぼす。周囲のことは気にしない。後のことも気にしない。


(あ~後で滅茶苦茶後悔するんだろうな~まぁそれは後の俺に任せよう。)


「はぁ……いいなぁ……こういうの……毎日してほしいなぁ……」

「それは無理。」


 上目遣いのミニアンのお願いをきっぱり斬り捨てる。ミニアンは頬を膨らませて抗議の目をしてくるが前頭部を撫でるとふにゃっと顔を緩めた。


(……俺の手って何だろう?基本血に塗れた穢れた手なんだが……こいつらマタタビに酔った猫みたいになるなぁ……血に酔ってるのかな?)


 ナデポ二コポの類の術は持っていないはずだがどうも変だ。


「せーらんもぉ……なでなでもっとぉ……」

「飽きた。」


 そして急に飽きた今村は立ち上がると雲を捏ねて椅子にし、その上に座ってから調べものを開始する。


「……その冷め方、どうにかならないかな……」

「うっさいなぁ……」

「せーらんもぉ……」

「邪魔だなぁ……」

「君は鬼かい……?」

「もっとたちの悪い化物だ。」


 ミニアンの質問にそう答えると適当にケーキでも与えておけば黙るかなとお菓子類と紅茶を出して何か空腹感を覚えたので全部自分で食べた。


「……あ、まぁいいか。ほら。」

「うん……ありがとう。」

「わぁい!」


 その後、黙らせるために準備したんだったと思い直してもう一度別の食べ物を準備する。今度はかりんとうだ。

 随分ランクが……と思わないでもないがこれはこれで美味しいので何も言わないミニアン、そして普通に喜んで食べるセイランを尻目に今村は『笑える 画像』で検索を掛けて遊びを続ける。


「……にしても、外の奴らは暇なんかね?」

「あっ。」


 まとめられている画像を見ていた今村は不意にそう言って顔を上げ、雲の周りを見る。そこでようやくミニアンがセイランに何をさせに来たのか思い出して声を上げた。


「仁、外の子たちに記憶に干渉する魔術を掛けただろう?それで……」

「俺は、オフ。」


 ミニアンに何か言われる前に今村は何もしないことを明言した。それに対してミニアンは頷く。


「うん。その件に関しては僕らの方で治したんだけど……まぁかなり気に病んでるみたいだからお休みが終わったら謝り……はしないだろうけど、あんまり気にしないように言っておいてくれるかな?」


 ミニアンは今村には悪いことをしたという意識はなく、むしろ良い事をしたと思っているのを察知してそう頼んだ。だが、今村は唸った。


「折角【最悪】の術式で頑張ったのに……だるーっ……」

「まぁ……君は良いことしたと思ってるけど、全っ然、むしろまさに最悪なことをしてるからね?僕らはそれくらいじゃ責めないけど……」

「えーむしろ責めて顔も見たくないって言って二度と会わない位した方がいいと思うけどなぁ……ついでに賠償金まで付けるぞ?お得じゃね?まぁこれ以上頭使うと全世界復讐委員会名誉アドバイザーの仕事になるから言わんが……」


 比較的最低なことをしている自覚はあるので復讐の手をきちんと使わせて取れる分だけ持って行かせる気はある。だが、今は働く気はない。


「……僕らにとっては会えないっていうのは本当に死活問題だからね……?特に非道い上書きをされてた7人に関しては君に浮気って見做されてないか不安で死にそうになってるんだから……」

「えー……浮気ねぇ……別に始まってもないものを何と言えと……それに、キスの1つもしてないからなぁ……1ミリも面白くない……つーか今はどうでもいい……」


 そこまで行って今村は今更ながら首を傾げた。


「あれ?解いたの?」

「……いや、君……僕の会話……」

「あ、メンド……あー……働きたくないなぁ……うわー何で解いたの?」

「いや……それは……愛の奇跡って現象で呼ばれたから……」

「えー……」


 やる気の欠片も見当たらないダメ男のようなリアクションを取り続ける今村にミニアンは困る。そんなミニアンの袖をセイランが引いた。


「……どうしたんだい?」

「いえ、こういうお兄様もいいなぁ……と。養ってあげたいです。」

「……君、存外ダメな方向に行ってるからね?それ……まぁ本当にこれが素なら僕も養う方向で考えを改めるんだけど……」

「……お前らを何がそこまで駆り立てるの?」

(お兄様)。」


 端的な返答に今村はやり辛そうに溜息をついて椅子から降りて寝転がりそのまま転がって叫んだ。


「あーっ!ナイフ持ってこーい!」

「え?」


 急に叫んだ今村の前には鋭い光を放つナイフが現れる。今村はそれを噛み砕いて咀嚼すると飲み下した。


「……何がしたいんだい?」

「別に言ってもいいけどさぁ……ペナルティが発動するから嫌だな……あーやってられないなぁ……そろそろいいんじゃない?」


 今村のペナルティという発言からの流れでミニアンとセイランは話の流れが変わったことを敏感に感じ取って首を振る。


「嫌です。」

「嫌だよ?何を寝ぼけたことを……僕らはまだ何にもしてないじゃないか。恋人としても認めてくれない、結婚だってしてくれない。」

「認めた後結婚したらさぁ……逝ってもいいの?」

「……いいと言うと思うのかい?ダメに決まってるだろう?」

「お前ら我儘だなぁ……」


 今村は寝返りを打つ。その顔はどこまでも怠そうな顔をしていた。それを見て先程までの楽しかった気分を一転させて悲しげな顔でミニアンとセイランは今村を諭しにかかる。


「……あーそうだな。」


 だが、今村は聞いていない。何となく今晩のメニューを考えてご飯と何かの調味料でいいかとやる気のない夕飯のメニューを決めて立ち上がる。


「…………分かってくれたかい?」

「まぁ……流石にご飯と調味料だけじゃアレだから……卵もかける。」

「……何の話をしてるんだ!いいかい?僕はね……」

「お帰りなさい。」


 保護掛けているのに説教を受けるのも面倒になったので今村は結界を適当にして原神に、特に【勇敢なる者】に見つかるのも時間の問題にするとミニアンとセイランはすぐに帰る体制を整えた。


「僕はぜぇったいに諦めないからね!」

「またね~」


 説教途中でイライラしつつも所々本人に対して惚気るという変なことをしていたミニアンと言うべきことをミニアンが言っているので気を緩めて甘えん坊モードになっていたセイランは屋敷に帰って行った。それを見送りつつ今村は息をつく。


「…………あの、ひ、仁さん……」


 結界が緩まったこと、そして世界を滅ぼすほどの美貌を持った二人の滅世の美少女が去ったことで第3世界トップの神々が動き、そしてそれに気を取られた次の瞬間には今村が育て上げたこの第3世界トップレベルの神々に結界なしで囲まれている状態になったからだ。


「……はぁ。」


 今村は再び息をついた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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