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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二章~最初の一年後半戦~
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11.ツアー終了

 フェデラシオンミグラテール決闘場。ここには現在決闘を見ようとする人間が大勢いた。見かけ上の戦いだが、この場で結婚相手が決まるので見物人の人気は高いのだ。

 そんな決闘場は現在闇竜バルバロスに強襲されていた。


「ええいっ!誰か儂を守れ!」


 混乱するこの場で大公は怒鳴った。だが皆逃げ惑うばかりだ。その中で逃げもせずにぼうっと竜を眺めている人がいた。


「…このまま…全部…」

「コロル?あなた何やってるの?」


 祓だ。居場所を奪われ、信じていた人に裏切られ化け物扱いしてきた人々に下心満載のアプローチを一晩受け続けた上にバルバロスの襲来。彼女は疲れていた。そんな彼女の下に来たのは彼女の姉、ニフタ・ネージュだ。


「お姉さま…」

「…あなた死にそうな顔してるわね…まぁいいわ。逃げるわよ?」

「…どこにです?」

「どこにって…どこかによ!少なくともここより安全なとこ!」


 ぼんやり訊いてくる祓の手を姉のニフタは引っ張った。祓はなすがままに連れて行かれる。


「…お姉さまが人のことを気に掛けるって…珍しいですね…」

「あぁ。まぁ…ある人の受け売りよこんなの!『人を助けるのは気分次第、見殺して嫌な気分になりそうなら助ける』って!」


 中々酷い教えだ。だが、そんなことを言う彼女は曲っておらず、その信念を通そうとする心は強かった。―――だから目を付けられた。迫り来る「闇焔」。流石に諦め、体を強張らせるニフタ。祓は自身の死さえどうでもよさそうに炎を眺めていた。

 その時、炎は急に進行方向を変えた。そして一直線に宙に浮かぶ黒みを帯びた紫色の立方体に吸い込まれていく。


「あ~あ…後何採ればいいんだっけ…?」


 その立方体の横では今村が宙に浮かんで「呪刀」を肩にかけていた。












 遡ること一時間前の冥界。


「…尽くぃとの行動が阻害される…」


 天界を平定した後、翌日になるなりアーラムは今村のいる冥界に戻って来て今村に愚痴っていた。今村は苦笑いと共にアーラムの頭を撫で、アーラムは続ける。


「ムー…何で厄介ごとが起きるのかな~あ!また来た!多いんだよ…そうだ!兄ぃも行かない?」

「う~ん…この後『冥府の山』行くしなぁ…」


 渋る今村にアーラムはあっさり諦めた。今村が決められた予定を他人に変えられるのを嫌うことを知っているからだ。


「ム~仕方ないかぁ…行って来まぁす…」


 アーラムは不承不承ながら去って行った。その後にチャーンドが入ってくる。


「…すまぬ仁…我も急な仕事が入って午前中は行動できん…」

「まぁ天界の長変わったしな。上の方は大慌てだろ…」


 その混乱を作り出した張本人はチャーンドが冥界で随一の腕を誇る料理人が作ったのんびり朝食を食べている。


「悪いな…」

「別にぃ~?こうなるだろうなぁと思ってやってたし。ご馳走様~あ、後これ作った人に調味料あげとくから渡しといて。」


 今村はすべて食べ終えると醤油と味噌を一樽分ずつ位置いて「冥府の山」に向かった。




「さて…採取の開始ですねぃ。」


 今村は土やら植物やらを少しずつ採取して行く。すると、何となく引っ張られる感じがしたのでその方向に進んで行ってみた。そこには雰囲気の少し違う一本の枯木があった。


「…これか?」


 今村は手を触れてみる。材質は普通の木だった。


「フ~ム…冥界にある時点で普通の木とは思えんが…知らない木なんだよなぁ…」


 そう言いながら「呪式照符」をかざしてその気の紹介文を見ようとする。だが「呪式照符」に映ったのは今村の予想を越える物だった。


「エラー?何だそれは…」


 「呪式照符」にはERRORと出たのだ。このようなものは始めて見たので今村は軽く困惑する。


「こんなの初めてだな。…とりあえず貴重な経験をさせてもらったので…」


 何となく今村は枯木に抱き着いてみた。すると木に葉がついた。


「…なんのこっちゃ。」


 離すと葉の進行は止まった。今村は試しにもう一度抱き着いてみる。すると今度は実がなった。そしてその実は今村の方にゆっくり降りてくる。


(もしかして「呪氣」に反応して何かしらの変異でも起こってるのか…?)


「これはくれるってのか。じゃあ貰っとこう。…これ何だろうなぁ…とりあえずこの場所はシルベル君に入れといて…え~と…フィトの場所でいいか。」


 今村はそれをローブに収め、呪具に場所の情報を入れた。そして気が付くと「冥府の山」の入り口に立っていた。


「…何だったんだ?ただの移動陣じゃなかったし…シルベル君に場所情報はあるが…反応がちょっとおかしい…まぁここからだと楽に城に帰れるからいいけど…」


 そんなことを言っていると突然目の前にアーラムが現れた。


「兄ぃ!バルバロスがお腹空かせて出て来たよ!」

「お!マジ?」

「うん!人間界に!何か人間がいっぱい集まってた国があってさ!そこで一気に食べるつもりみたい!」

「へぇ~何で地獄に出なかったんだろ」


(兄ぃが怖かったんだろうけどね…)


 アーラムはそう思ったが口には出さない。出せば昔のことを出して来て弄られるからだ。そんな折にチャーンドも今村の前に現れる。


「迎えに来た…が…」

「あ、人間界に行くよ。で、悪いけど人間界だし結界張っといて。」

「うんいいよ。」

「任せろ。」


 …つまり、一行はもの凄く危機感のない状態で人間界に飛んでいた。











「…い…今村くん…?何でここに…?」


 こう呟いたのは誰の台詞だっただろうか。この台詞で祓は上空にいる人をはっきりと見ることが出来た。


「え…?先生…?何でここに…?」


 最初に行った人と全く同じ質問をする祓。だが、当然ここから上空にいる今村に声は届かない。隣にいたニフタが祓に尋ねる。


「…彼と知り合いなの…?」

「…はい…でも…どうして…」


 混乱する祓。今村は祓とフェデラシオンに来てくれなかったはず…そこで祓は今村と別れる際のことを思い出し、はっとした。


(…準備がいるって…私…勘違いしてた…先生はこれを予見してて…)


 一人で今村のことを疑っていたのが申し訳なくなる祓。上空の今村を見ると激しい戦いをしている。


「ごめんなさい先生…疑って…約束守ってくれますよね…先生ですからね…」

「コロル?彼と何の約束を…?」

「ずっと一緒って…」

「だ…駄目よ!あなたは貴族で…」


 祓の言葉にニフタが慌てる。そんなニフタに対して祓は少し考える。


「…なら、貴族辞めます。…そうだ良い機会…」

「はぁ?」

「お姉さま。さようなら。私なら先程の炎に焼かれて綺麗に亡くなったと言ってください。」


 ニフタとの会話を一方的に打ち切って祓は能力を発動。学校に帰った。












「…角くれよ。」


 今村は基本圧倒してバルバロスを攻撃していたが、「αモード」でないので少し手こずっていた。何せ定期的に材料を入手したいため殺すわけにもいかないのだ。


「…そうだなぁ…飽きたし…これ以上『αモード』使うと後で筋肉痛になるから嫌なんだけど仕方ない。『αモード』」


 勝負は一瞬で決まった。ふっつうに斬り落としたのだ。


「『αモード』解除。さて、大人しく…」


 今村は回復させてやるから大人しくしてね?という意味での笑みを浮かべたのだがいかんせん「αモード」は解除してある。また、歪んだ笑みがデフォルトなのでバルバロスには大人しく死ね。というようにしか見えない。だから彼は逃げた。


「あっ…待て…」


 だがバルバロスは断った。正直回復は勝手にやってもらっても構わない今村は真剣には追わず、アーラムとチャーンドを呼んだ。


「お疲れーこれで今回は解散ね。」

「…殆ど兄ぃと行動してない…まぁ兄ぃも元気になったしいいか!」

「…じゃあ…また。」


 こちらも解散となり、今村は少し考えて「雲の欠片」で存分に寝ることが出来る「幻夜の館」に帰ることにした。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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