17.オフだから気分屋
「あっるじっさま~♪」
「むぅ……後6秒あれば【数え殺し】の奥義『無撃総乱舞』まで綺麗にぶち込めたんだが……まぁしょうがないしょうがない。防衛は強かにいかないと。まだ高見東志の本終わってないのに死にたくないし。」
今村は微妙に早かったなと思ったがるぅねは指示通りに動いたので頭を撫でておく。
「まぁいいとして、実験の方は?」
「んーとね、えへ……忘れちゃった……でもでも!これに書いてあるから多分大丈夫だよ!」
今村はるぅねからカルテのような物を受け取り、慣れたのでもう何も言わないが一応るぅねに尋ねておく。
「……分かるからいいんだが、文字で表現してくれないか?」
「えへ……るぅね、こう言うのなんて書けばいいのか分かんないから……」
そこに書いてあるのは各状態の奴隷少女たちの言動をそのまま模写した絵だった。るぅね視点で見た順番に漫画のようにコマ割りして吹き出しを作って描いてある。
「ふむ……で、今どんな状態?」
「疲れたらしいので寝てます!あ、一人降りて来ましたね。」
るぅねの探知に引っ掛かった人物は初日に独鈷を粉々にされて泣き、今村に泣き虫娘と名付けられた少女だった。
彼女は天井に逆さ吊りでここに現れるとそのまま宙を舞い、今村の前に膝をついて意志の強い目で尋ねた。
「……ご主人様、あなたは一体……何なんですか?」
「ん~そうだなぁ……原神どもの表現は嫌だから……最近聞いて良いなと思ったのは『立てば悪役、座れば仇歩いた後には死の徒花』とかかな……?そんな感じで呼ばれる化物。」
今村はそう言ってから首を傾げ、目の前の少女に尋ねた。
「仇って今時あんまり聞かないよな。今考えるとサタンとか暗澹とかにした方がいいと思うんだが、どうだろう?」
「あなたは、何を成すために……」
無視されたことに若干イラッと来たが真剣な表情で尋ねて来る少女に今村は別に教えてもいいかとるぅねとアルマに結界を張らせて、アルマの耳を塞いで念話も封じた状態で嗤いながら喋った。
「俺は何も成さん。死ぬほど面白いことに会って死ぬために生きてる。終わりを求めて生きる化物だよ。」
「るぅねはあんまりよくわかんないけどあるじ様を全力でサポートして、あるじ様が居なくなっちゃったら消滅する機械だよー」
笑う二人。今村は簡単に言い終えるとアルマの両耳から手を放して念話を解放する。
「……私は何をすればいいのですか?」
何を言っているのか分からないというより、ふざけていると思ったらしく信じていない少女の顔を見て今村は言うだけ無駄だなと判断して甘えてくるアルマから手を放して少女の髪に触れる。
「実験に協力して。」
「はふぅんっ!」
薬品による効果を見るために髪に触れた瞬間、思いっきり変な声を出した少女の声を無視して今村は髪の毛を弄る。
「るぅね、こいつに与えたのって……あぁいい。どうせ覚えてないだろうからカルテ持って来い。」
「うん!カルテって何?」
「……そこにある紙束持って来い。」
手で少女の髪の毛を弄りながら今村は視る。下の変な声をシャットアウト状態にしがら今村は紙束の4番目にある紙に書いている薬品名に目を通した。
「ぅぁあ……ぞ、ぞわぞわします……や、止めて……」
「……魔力値が微妙。ん~匂いはまぁまぁ。手触りは……そこそこ?吸収値が結構あるよな。」
「はぁ……んっ!や、お……おかしく、なる……止めてぇ……」
ローブで紙に記入しながら今村は髪を弄り、ついでに頭皮のチェックまで始めだした。
「……あ、ちょっと失敗。毛穴系統が全部なくなってつるつるになった。まぁ俺ももうないけど。……ん~一部能力者とか神、神族とか魔物、魔族とかにしか使えないかな?」
「い……あぅっ……はぁっ……はぁ……も、もうりゃめ……りゃめらかりゃぁっ!」
少女の声は聞こえていないので今村は無造作に髪を引っこ抜いた。すると新しい髪が粒子状になって形成されて出来る。
「うん。コンセプト通り周囲の魔力で新しい髪が……どうしたアルマ?」
カルテに書き込んでいるとアルマが今村のローブの裾を引いて見上げながら口を開いた。
「………………なでなで……ずるい……」
「これは別に撫でてるわけじゃないんだが……あ。床が……」
一度観察状態を解除して今更ながら少女の様子がおかしい事と、床が汚れていることに気付いた今村はるぅねに目配せして掃除をさせてその間に椅子に座ると乗って来たアルマの頭を撫でた。
「はーっ……はーっ……さ、最っ低……です、ね……わ……私が、奴隷だからって、む、無理矢理に……頭撫で……?サーチ……あれ……?魅了もされてない……本当に頭撫でられただけ……最低です!」
「あぁそうだな。」
「っ!その態度が気に入らないんですよ!」
「その態度が気に入らないと言ったから今日はお前の命日。」
適当に首を刎ねて生首を宙に浮かせた後、るぅねに治してから床の掃除をして泣き虫少女をベッドに寝かせるように言ってから今村は少し外に出る。
「……下級過ぎるなぁ……もう少し強くした方がいいかな?この辺のケモノ共を皆殺しに出来る程度になれば……まぁ、俺に触れられても過剰反応は示さなくはなるかな。」
大あくびをしながらアルマを滅ぼしてもいい世界に適当に送り出してそこにレジェンドクエスターズからお目付け役を送り、自分のところに来させないように命令する。
「でもなぁ……俺はやる気ないんだよなぁ……休みなんだし。誰か暇な奴でも居ないものか……」
ふと考えて今村は白崎に電話を送ってみた。何コールかして電話先の人物は電話に出た。
『な、何かしら?』
微妙に声が上擦っているが今村が電話をかける相手にはよくあることなので今村は気にせずなるべく低い声で口を開いた。
「お前の子どもは預かった。」
『……今村くん。何がしたいのかしら……?」
適当なことをやってもすぐに中てられたので今までのことをなかったことにして今村は用件に切り出す。
「今、暇?」
『暇だと思うの?』
「いや、忙しいと思う。でさぁ、仕事を更に押し付けたいんだけどいい?」
『……内容によるわ。』
割とクズなことをへらへら笑いながら白崎に告げると彼女は少し考える素振りを見せながら応じる。
「子どもの面倒を看る仕事。訓練をつけよう!」
『……私、ここにいる人たちみたいに戦闘しないんだけど……』
「体捌きでいいから。ここに居る奴らは身体能力に頼り過ぎ。お前、体に付いてる兵器なしの合気で無双できるぞ。」
『……兵器…………付けてるのね……そうなの……気付いたらいっぱい出て来たわ。何なのコレ……』
「あ、不用意に動かすなよ?その世界が破滅するから。」
『何て物を付けてるのよ……』
電話先の白崎は溜息をついた。そして一瞬で頭を切り替えたらしく今村に答える。
『分かったわ。どうすればいいのかしら?』
「ん?……今からで大丈夫か?」
『えぇ……』「大丈夫よ。……って、ここどこなの?」
「ようこそ。じゃ、ここ家な。」
今村は白崎を大量の書類ごと召喚して住居の案内を始めた。




