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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十四章~さぁ、動き出そう~
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13.知らない天井

 目を開けると知らない天井があった。


「……『神眼』」


 知らない天井を前にして今村は舌打ちしてこの世界のことを調べる。現在位置が分かると今村は更にイラッと来てベッドから身を起こし、部屋の外で何かのタイミングを窺っている存在が入って来るのを待つ。


 少しの間の後、その存在は部屋の中へと入って来た。銀色の髪に狼の耳を付けた「幻夜の館」における中級程度の美少女だった。


「いつまで寝てらっしゃるんですか?冒険者さん。そろそろギルド……」

「テメェが召喚者か。面貸せや。」


 そんな狼少女を見て自分の体に付いていた魔力の残り香と目の前の存在の魔力波長が一致しているのを感じ取り、今村はその存在を縛り上げ、外に出た。


「……まずは、この世界の神に文句付けないとな。」

「なっ、え……?」


 状況に追いついていない召喚者の女を担ぐと今村は認識阻害の術をその女に掛け、ついでに『自聴他黙』の術式を施すと神殿へと向かって歩き始めた。











 神殿に入るとその真ん中にあったらしい像が根元から倒されていた。その光景に地面に降ろされた少女は目を丸くして何か呟いた。

 教会の関係者たちも状況を把握できていないようで困ったような感情を内心に持ちつつ今村が歩く道の脇に全員跪いている。


『本日は、誠に申し訳ございません。』


 そんな中で、不意に澄んだ声が天から舞い降りるかのように講堂に響く。今村は無言のまま先を促した。


『誠に勝手ながら、私の力ではそこに降りることが出来ませんので、代わりに私を模した像を倒すことで礼とさせてもらってもよろしいですか?』


 教会関係者たちの感動する声の中で、僅かに怯えを感じさせるその声の主に対して今村は不機嫌そうに呟いた。


「降りて来い。俺は、不機嫌だ。『現界』」


 端的に呟くと今村の目の前に純白の羽を生やした幼い少女が涙目で現れて今村を見るなり「ひっ」と声を漏らして土下座した。


「こ、この度は、誠に、も、申し訳……」

「……それはもういい。俺に何の用だ?この、休み、一日目で、折角、寝ていた、この俺に、何の用だ?」

「そ、それは、私じゃなくて、そこの者が勝手に……ひぅっ!ご、ごめんなさい!許して……」


 今村がイライラしているのを感じつつ怯えて今村を呼んだ銀髪の狼少女を指さす少女神。今村は「自聴他黙」を解いて呆けているその少女に尋ねる。


「俺に、何の、用だ?あ゛ぁん?」

「あ、あの、あなたって……何……」

「化物だ。何か文句があるのか?大体、俺は今お前が俺を呼んだ用件を訊いているんだが?その程度も答えられんのか低能。感覚を残したままバラバラにしてジグソーパズルにしてやろうか?」


 抑えてはいるものの少しだけ殺気を漏らした今村。行動に居た協会の関係者は全員失神し、近くで受けた銀髪の狼少女は別の物を漏らした。


「……きったねぇな。お前は俺にそんなものを見せるためにここに呼んだってわけか?あ゛ぁ?」

「ち……ちが……」

「あ~話にならん。そこのちっさいの。何があったのか、説明。」


 少女神は己の不幸を嘆きつつ銀髪少女の心を読んで要約し、今村に説明する。


「こ、ここで、陰謀があるみたいなんです。それを、解決してもらうために人手が必要で……囮として、完全に中立の人が必要で……どこかの国の派閥だと困るから真っ白な異世界人を……呼ぶつもりだったようです。」

「はぁ?」

「すみません!【双無き天下の最強神】様!第1世界にも最強クラスと名高いあなた様のような神の中の神に対してとんだご無礼を!すぐに始末します!」


 少女神は銀髪の少女を惨殺した。だがそれを今村は瞬時に治す。


「ひっ……ひぅ……」


 死の瞬前の光景をまざまざと覚えている銀髪の狼少女は怯えながら荒い息を吐き、自らが漏らした生暖かい水溜りの中にへたり込む。


「あ~……はぁ。」


 そんな音を背後に聞きつつ今村は溜息をついて頭を掻いた。


「まぁ、確かに、俺の方にも非があると言えばあるかもしれん。ちょいと術式を組んで忘れ去られるように仕向けた後、長期休暇を取るために仕事を終わらせまくったせいで、防御陣を適当にしてたのは事実だしな。」


 敵意、もしくは悪意に対しては第1世界の上級神でも破れないような結界を張った代わりにそれ以外はお座成りになっていたのは認めた。

 【最悪】の術式を掛けても忘れたくないと言う抵抗が凄く、「幻夜の館」のメンバーにはほぼ掛かっていない。その上、今村が利用していた神々にはあっさりと通じたため、逆に弱い神々の技が通じてしまうようになっていたのだ。


「だが、それはごく短時間なんだが?仕事が終わるまでの2時間で気付いた時には修繕して、しかも体のチェックもした。……術が未熟過ぎてインストールが果てしなく遅い上、俺が起きてる間は術の濃度が薄すぎて気づかない位だっただけみたいだがな。」


 今村は大量の仕事をした後の休みで、起きたらすでに休みの半日が潰れていたという虚無感をこの長期の休みの初日で感じたかったのだが失敗したので不機嫌だったのだ。


「……まぁいい。今から完全におふざけでその計画に乗ってやる。陰謀どころか国が……いや、世界が崩れるかもしれんが、自業自得な。」


 今村はそう言い残してその講堂から去った。残された中で意識がある二人の内少女神が溜息をつく。


「……折角、いい感じになったのに……ま、まぁ、でも……殺されなかったから。いいかな……」

「か、神様……あ、あたしは、何を呼んで……」


 腰を抜かしたままの銀髪の狼少女を少女神は睨みながら答えた。


「……私の何京倍……いや、それじゃ全然足りない位凄い、神様だよ。私が砂漠の砂粒としたら巨大な恒星位の差はある。うぅ……あの方の気が変わって殺されませんように……」

「に、逃げないと……」


 抵抗する気力をもろとも刈り取られた少女はそう言いつつ力の入らない四肢に力を込めようとして少女神に可愛らしい鼻で笑われた。


「無駄に決まってるよ。それより、あの方の気が変わらない様に全力でご機嫌取りをしてきて。裸で外を走れって言われたら自分から笑った方がいいか尋ねて全力疾走するくらいの気概を見せてね。私は逃げるから。じゃあね。」

「あっ……」


 少女神は逃げた。残された銀髪の狼少女は呆然としながら彼女の悪口を頭の中で巡らせる。それを逃げながら感じ取る少女神はイライラしながら考えた。


(……私の悪口を……いいや、逃げないと……全く、人々が困ってる時は助けに来ないだの何だの言ってるけど、畑を耕すときに中にいる虫のことなんか気にしないでしょ。より良い畑にするために異世界の人を自動農具的な意味で雇ったら何を間違えたのか核の弾道がこっちに向けられた気分だよ。とぉっても焦ったから罰としてこれ送っておこ。)


 そんな感じで全力で遠くに逃げながら少女神は少しだけ罰を与えて全力で彼女の姉妹神の世界の中へと逃げ込んで行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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