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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十四章~さぁ、動き出そう~
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12.【最悪】の術式

「さて、最期の訓練と逝こうか。神殺し。往ってみよう。」


 今村は元少年たちを連れて第2世界のある場所に来ていた。元少年たちは過酷な試練を今村により無理矢理こなし、身体ともに第3世界の一般神であれば凌駕するようになったので最終訓練となっている。


「……流石としか言いようがありませんね。流石仁様です。」


 一般人から1年もかけずにここまで来てしまった元少年たち。確かに元々の素材は悪くはなく、微弱ながらも加護持ちと言える人材だったが神と戦えるところまで行けるはずがない素体だった。


 だが、現在シェイムの前で集団でとは言え一つ上の階層世界の神と互角の勝負を繰り広げているのだ。


「おのれ……おのれ【冥魔邪妖霊神王】めぇええっ!」


 その集団暴行を受けている神が吠える。それを見て今村は若干嫌そうな顔をした。


「……また変な名前……原神委任地だからなぁ……あいつらが考えたんだろうがセンスがねぇ……語呂も悪いし、長い。前々から俺は単なる化物でいいって言ってるのになぁ……」

「……単なる化物では世界の敵認定されているのに未だ討伐できていないのに対して脅威度が伝わりませんから……」


 今村は納得できないようだ。長くすればいいという問題ではないし、何よりそれっぽい漢字を詰めておけばいいという適当感が見えるのだ。


「……新手の攻撃か?」

「違うと思いますよ……噂ですけど、仁様が……言えませんか。あの方々を倒されたという噂が出回っていますので、それに対する対応です……?」


 前々からその噂は流れていたのだがシェイムはここで違和感に気付く。あり得ないことであるのにもかかわらず噂が流れたこと、その噂が流れたのに当の本人はまだ抹消されていないこと、そしてその相手を高めるような表現が使われていること。


 これらを統合して考えてシェイムは表情を強張らせて今村に尋ねた。


「……あの、仁様って、原神と会ったこと……」

「あるぞ?」


 何の気負いもない台詞にシェイムは逆にこれ以上踏み込まない方がいいと本能的な警鐘を鳴らす。


 だが、本能よりも彼女は彼女の主に対する興味が強く、好奇心で尋ねた。


「……男性の方々、ですか?」

「両方。……あぁ、男の……長男にはまだ会ったことないな。」


 それ以外の全員に遭ったということだ。シェイムは驚きのあまり今村の顔を3度見して大きく口を開けた。


「……綺麗な顔がまた変に。」


 今村は元少年たちの神との戦いを見つつシェイムを横目で見て呆れたような顔をする。呆れたいのはシェイムの方だった。だが、驚きのあまり声を出すことすらできない。


「……ん~負けそうだな。」


 そんなシェイムから興味をなくした今村は神殺しの戦況を見る。今回今村が選んだターゲットは戦闘向きではなかったのだが、少年たちの戦況は芳しい物ではない。


「弱いなぁ……あれだけ薬と氣を使ったのに。」


 現在の少年たちの体は能力による変貌から更に変化しており【神核】も体の中に入れられ、半神半人の状態だ。その上、長年自らの思い通りに動き続けるニンゲンたちを作って箱庭で神力を溜めていただけの神よりも大きな力を今村に与えられている。


「使いこなせてないなぁ……まぁ勝てばいいんだけど。早く勝たないかな?もう仕込みは既に済ませてあるからこれが終わればすぐなんだけど。」


 今村の呟きにシェイムは悲しげな顔をする。だが、その表情はすぐに引き締められる。計画を知っており、快くは思っていないシェイムだが、今村に口答えをする気はない。


(叶わぬ恋であっても、私にも抱かせることだけはお許ししてくれたんだ……踏み込む方が、悪い……)


 そんな言い訳を自らに言い聞かせて元少年たちの戦闘を見る。


(……この戦いで、彼らが負けて、死ねば……)


 少なくともまたしばらく、彼女たちは平穏な暮らしを今村と暮らすことが出来る。だが、それがないのは戦闘を見れば分かりきっている。


(仁様の技術で、彼らを育てたのに彼らが負けるはず、ない……)


「あー負けそう。」


 隣にいるシェイムの想いなど知りもしないで今村は軽く笑いながらそんなことを呟く。その手にはストップウォッチがあった。


「……あ。」


 一際大きな破壊音がしてシェイムがストップウォッチから空を見上げると神は緩やかに崩壊し始めていた。シェイムがそれを見て今村を見ると今村は手に持っていたストップウォッチを見てシェイムに笑いかけた。


「チッ。俺の負けだ。3分オーバーした。昼飯を奢ろう。」

「……はい。」


 後数秒早ければな~などと言いながら戦闘の批評をしに子どもたちの方へと向かう今村の背中を見送って、シェイムはほんの一瞬だけ泣きそうな顔をし、それを刹那の時間で立て直すと今村の後を追った。
















「はいこれ。」

「!こ、これ、クロノに、くれるの!?」

「うん。あぁ、他の奴らにもあるから安心しろ。」


 戦闘が終わったその日の夜、今村は今日も部屋に入り浸っていた女性たちを集めてアクセサリーを配っていた。


「むぅ……妾も指輪が……」

「贅沢ですね……ありがとうございます。私は一生、大事にしますね。」


 指輪を貰って狂喜乱舞しているクロノ、ブレスレットを貰いつつはしゃぐクロノを見て少し不満気なサラ、ネックレスを貰って微笑む祓。


「わ~い~私~ものを~貰うの~初めて~」

「あ、あの……ありがとごじゃ……ごじゃいま、しゅ……」


 ティアラを貰って緩く、しかし非常に喜ぶフィト、アンクレットで泣きそうになるほど喜ぶシェン。


「えへへ……早速つけたよ?ありがとう!」

「似合いますかね~?」


 髪飾りを貰って早速つけて見せて来るアリス、輝くリボンを首下に結んで尋ねてくるヴァルゴ。


 そんな彼女たちを前に、今村は笑って応える。


「良く似合ってる。うん。だから、つけておいてね?【虚空時間】っ!」



 瞬間、時が止まり世界が灰色に変わる。その中で唯一動き、色を持った存在である今村は嗤いながら続けた。


「ベクトル、移動。……さて、幸せになってくれ。」


 笑顔のまま、喜びの顔のまま固まった彼女たちの耳には届かない中で今村はそう呟くと更に邪悪に嗤った。


「我が道は修羅の道、ここに歩は世界の敵成る化物なり、【最悪の術式】よこの世界から我が存在を塗り替えよ。」


 【最悪の求道者】と会話しつつコピーした術式、術式行使者の存在を非常に曖昧にそして消滅まで導くその術式を掛けると今村は笑顔を収めて固まった存在達に一礼する。


「では、これにて。」


 再び時が流れ始めた時、彼女たちの中には今村と言う存在は残されていなかった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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