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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十四章~さぁ、動き出そう~
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2.今更なんですか?

「……これはこれで大変だな。」


 深夜。今村は部屋の中に入って来ていた男どもを叩きのめして仁王立ちをしてそう呟いた。夜這いを掛けられたのだ。


「ん~……特に美しいって言う概念は使ってないんだが……何だろうな。女って大変なのだな。」


 頷くと二階の窓から男たちを捨てる。死んだか死んでいないかはあまり気にしないことにして再び眠るが、だんだんイライラして来た。


「……考えれば何で休暇の日までこんなことしなくてはならんのだ……ゆっくり寝させてくれないのか?ゴミ共め……あ、そう言えば【最悪】の術式あったな。」


 イライラの矛先は先程ここにやって来た他の宿泊客。彼らに刻印を穿って嫌な夢を見てもらうことにして今村は今度こそいい夢を見られるように術を掛けて眠りについた。













「……ふむ。いい夢だった。」


 その日の夢は現在今村が認識している周囲の女性陣たちが全員円満に知らない誰かと結婚して今村は独りになっていたという状況だった。


「……まぁ、でも……もっといい感じのものが見たかったのだがなぁ……夢の中でくらい死ぬほど面白いものを想像できれば……まぁ、考えられないようなものだからこそ、それの為に一生を費やしているんだがな。うむ。」


 勝手に納得した後、のそのそ動いて簡素な浴衣を着直し、部屋の中を見てからもう一度風呂に入ることに決めた。


 瑞々しい肢体を伸ばして朝風呂に入ると、途中で覗きに来ていた変態どもを発見したので水鉄砲で四肢を撃ち抜いて記憶を消した後に風呂から悠然と出てモーニングコールと朝食を摂り、この星を後にした。


「さて、本日の夢は……そろそろ実行に移すとして、相手をどう見積もるかが問題なのだよ。……お?」


 温泉の星から出た後、今村は取り敢えず人が多い場所へと行ってみた。目的はその日の内に見た夢の実行のために使える物を探すことだ。だが、その道中でそれより気になるモノが視界に入った。


「……見たことない雑誌だな。どこの世界産だ?」

「タージャラークだよ。」


 本だ。見出しだけで面白そうだと思った今村はそれを手に取って一先ず買うことにした。


「ほう……結構好きだぞ。こういうの。」

「か、変わった嬢ちゃんだね……タージャラークの出身かい?」

「いや、そんな世界は知らない。」


 今村が手に取った本は独身であることを賛美する本だった。しかも週刊で一週ごとに100フレーズも載っており、現在まで年に約52週で30年の連載を誇っているらしい。


「女性用のもあるが……?結婚は最悪だシリーズは……」

「そちらも買う。……売り残しがあったら全部くれないか?金は払う。」

「一応創刊号からあるけど……これから、定期購読するかい?」

「あぁ。」


 最近は実験時以外は自宅に住んでいるがほぼお構いなしで家に来る奴らに見せてやろうと初刊の「真に愛し合う者が多数派であればこの世にわざわざ結婚と言う制度は生まれなかった。」と言う見出し本を買っておく。


「……これで全部だな。店主。」

「あぁ……にしても、嬢ちゃんほどの美人なら引く手数多だろうに……」


 店主は今村の顔をじろじろ見ながらそう言ってきた。軽い殺意を覚えたが仮にも本を売っている神物だったので殺さずに適当なカフェへと移動する。


「いらっさ……いらっしゃいませ!テラスへどうぞ!」

「……いや、カウンターでいいんだが。」


 噛んだなと思ったがなかったことにして今村は元気溌剌と言った様子の少女の接客を受ける。取り敢えず、意見が合わない。少女はやたらとテラスを推してくるが、今村は日が本に注すのが気に入らないので空いてる席は使えないのか質問する。


「お姉様は、テラスで神々しい光を纏うのがとてもよろしいかと!お代は要りませんし、むしろお金を払うので見せてください!」

「……はぁ。別に、いいんだが……」


 他の客がいる中でピシッとしたこれ以上ない土下座の姿勢に入った少女を見て今村は諦めてテラスへと案内を受ける。


「お飲み物は……」

「白神茶。」

「!ありがとうございます!こちら全て当店のサービスとさせていただきます!いや、やはり紅茶ですよねぇ……似合います!素敵です!」


 五月蠅い子どもだなと言う感想を抱きながら今村は先ほど買った本に日の光を通さないコーティングを施して読書を始める。


「こ、こちら、当店の裏メニューとなっていますふんだんベリーベリーのタルトです。結構甘いので紅茶と一緒にどうぞ!」

「……頼んでないのだが?」

「サービスです!それより紅茶のカップを持ってください!」


 他の客が読んでいるのにここから離れない少女を見て今村は変人を見る目で少女を見た後、別に減る物じゃないのでカップを持つ。


「あぁん!流石です!ぞくぞくします!」

「……他のお客が呼んでいるが、行ったらどうなんだ?」

「後でいいです!」

「い・い・わ・け・な・い・で・しょ?……リリィ?」

「ぴっ!お、お姉ちゃん!」


 何やらコントが始まったが今村はもう完全に無視して読書を開始した。コントの結果はここに出された物はリリィとか言う少女が迷惑を掛けたという理由で只にするということで、しばらくすると周囲が騒がしくなって来たので今村は退去した。


「あ、あの……また来てくださいお姉様!」

「リリィ?あなたの姉は私しかいなかったはずよ?」

「ご馳走様。」


 帰り際にもコントが始まったが今村はそれも無視してさっさと外に出る。するとそこには何かの書状を持っている男を中心として男たちが集まっていた。


「貴様だな?人心を惑わしているという女は。罪状を上げる。一つ、その美貌を以て衆人を惑わしたことぉっ!」

「うるさいな。」


 口上を遮るかのように今村は弓で一撃を喰らわせて黙らせた。それを受けて周囲が色めき立つ。


「この小娘が!いい気になりおって……嬲り尽くしてやる!」

「……そこはもっといい感じに言えなかったのか?」


 警察のような出で立ちで完全に下心丸出しの男たちに今村は冷ややかな視線を浴びせて対峙し、内心で嘲笑う。


(俺の挙動を見もしねぇで胸とケツ、あと腿辺りばっかり見てやがる……自殺志願者だったのかね?)


 既に仕込みを終えているので後は全員去勢にするか全員串刺しにするのか決めるだけのところで急に空から何かが降って来た。


「助太刀いたします。」

「め……誰?」


 空から降って来たのは黒猫のようにしなやかな体を持ち、猫耳を生やした美少女だった。そして彼女のことを今村は知っている。


「怪しい者ではございません。レジェンドクエスターズ暗部・女人部元締めの芽衣と申します。主の捜索中ですが……義によって推参しました。」


(……こいついつの間にそんな権力の座に収まってたんだよ……)


 登場と共に何人か倒しながら格好よく決めた猫耳少女の芽衣。しばらく見ない内にこの第2世界の神々相手にも余裕で戦えるようになっていたらしい。


「ですが、余計なお世話だったようですね。」

「あぁ、まぁな……『影縫い』『宵闇に沈め、月夜烏つくよがらす』」


 全員の影から影の矢が放たれ、その軌道にある物を綺麗に削って去勢し、粗末なものが道に散らばる。


「……強いですね……そして、それ以上に美人ですね。よろしければあなたもレジェンドクエスターズに……いえ、我らの主様の後宮にどうですか?」

「結構だ。」


 訊かれるまでもない。何があっても答えはノーだ。こいつら頭おかしいんじゃないだろうか?そんな思いを胸に断った。


「……そう、ですか……残念です。」

「私は生涯独身で居続ける。大体、その男が誰だか知らないが碌でもないような奴だろう?」


 瞬間、芽衣の瞳が細く、耳が反り返るように立ち、尻尾の毛が膨れて猫の攻撃態勢に入ってなるべく自分を落ち着かせるように深呼吸しながら言った。


「ふぅ……ふぅ……あ、主様のことは、悪く、言わないで、頂きたい……うっかり八つ裂きにしてしまいたくなります…………と、特に、暗部所属の私だから、まだ押さえられ……ましたが、くれぐれも、他の、方には言わない様に……し、失礼しますね。ふ、ぅぅ……」


 何かが抑えきれなくなりそうだったらしい芽衣は瞬時に今村の前から消えた。それを見送って今村はあまり悠長に本を読んでいたら手遅れになりそうだと今更感じて計画の実行に移ることにした。

 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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