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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二章~最初の一年後半戦~
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9.地獄

 翌日の朝。祓は校門でずっと立っていた。


(先生…遅いな…早いってこと言ってたから知ってると思ってたけどもしかして時間知らないかったとか…?)


 出発の時間が迫るにつれて焦る祓の心。そんな祓の下に理事長が現れた。


「…祓君?どうしたのですか?」

「先生が…」

「今村君?…今村君なら今日から休みですけど…?」


 理事長の言葉に祓は一瞬耳を疑った。


「…は?」

「何でも地獄や冥界、天界などを回るそうです。」

「な…え?せ…先生は約束を守るって…」

「…僕に言われても…」


 理事長の言葉が唯の単語としてしか入って来ない。そして出発の時が来た。


(…嘘吐き…)


 祓はアフトクラトリアを発った。












ぃ!出来たよ!」

「こっちも万全だ。」

「じゃ行こ!」

「…我も行くがな。」

「チャーンド空気読めよ!」

「あ?黙れ砂利ん子。」

「はいはい両方黙れ。行くぞ?」


 一方冥界。今村は突然現れたアーラムと一宿していた先のチャーンドの喧嘩を宥めて(?)いた。


「はぁ…兄ぃと二人きりが良かった…」

「こっちの台詞だ詐欺ガキ。」

「兄ぃが居るからって調子に乗ってるんじゃない?…殺すよ?」


 溜息をつくアーラムを睨むチャーンド。それに不満を募らせていたアーラムが殺気を迸らせる。その殺気に当てられ周囲の空気が歪んだ。


「…はぁ。『ε(イプシロン)モード』…オラ黙れ。」


 今村は急に黒髪黒目の絶世の美女になった。艶のあり、一本一本が凶器となりうる黒髪。シミひとつない死人のように白い綺麗な肌。死んだようにハイライトがないくせに大きな黒目。無駄に形のいい赤色の唇。今村なのにムカつくぐらい完璧なプロポーション。

 そんな今村の形のいい胸にアーラムが飛び込んできた。


「キメェ。…で、チャーンドは何で自分で目ぇ潰してんだ?」

「仁は大事な方。仁は大事な方。仁は大事な方…」

「兄ぃ~ふっかふか~」

「ウゼェ…さて落ち着いたんなら『モード解除』」


 元の残念な今村に戻る。チャーンドは安心して目を治療して今村を直視できるようになったがアーラムは今村にしがみついたまま離れない。今村は溜息をついてまとめに入る。


「…はぁ。とりあえず行くぞ?まずは地獄だな?」

「うん!」

「…あぁ。あと…『εモード』になる時は一声かけてくれ…」


 顔を赤くしているチャーンドを見て今村はニヤーっと笑うと短く


「『εモード』…ま~だこれに慣れてないのかお前…姉貴見てたら大丈夫だと思うんだがねぇ…」

「…正直こっちの方がタイプって我は何をぉっ!」

「引くわ~」

「…でも僕も兄ぃの方が美人と思う…」

「はっは!ないない。」


 そんなことを言いながら今村は「εモード」解いて一行を率いて地獄に向かった。












 今村たちが巫山戯ていた少し前。


「…何?バルバロスが目覚めたじゃと…?それは確かなんじゃろうな…?」

「はっ!」


 地獄では薄い真紅のドレスに身を包んだ破壊的な胸囲を持った地獄の女帝サラが部下から報告を受けていた。


「すぐに兵を集めるのじゃ!地獄の平和は妾たちで守るぞ!」


 そしてすぐに兵士は集まった。鬼や悪魔。霊や英雄などが集まる中、サラは音高く宣言した。


「敵はバルバロス!世界を滅ぼす魔炎を使いし闇竜じゃ!皆!勝利を我が手に持って参れ!」




 ―――その数分後、バルバロス討伐に出た万を超す兵士たちの半数が骸と成り、残る半数が戦闘不能になっていた。


 戦闘地では低い声の念話が響いていた。


 ―――ヌルイな―――


「くっ…」


 戦闘不能になった者の魂を吸いながらボロボロになったサラに念話を送る黒き闇竜バルバロス。彼にとって恐怖した魂は極上の味。そしてその極上の味を強き心を持つ王が出すとなれば多少の手間などは惜しまない。サラだけはっきりと意識を残して動けなくしていた。


 ―――どうした?ただ無様に這いつくばっているだけでは貴様の大事な兵たちは死んでいくぞ?―――


「や…めろ…」


 バルバロスの嘲笑に体のどこかを動かそうとするサラ。だが、体のどの部分も動かない。闇竜の呪いだ。


 ―――無様だな。貴様はこの世界で最後に食ってやろう。感謝しろ―――


「ふざけ…」


 ―――巫山戯てなどいない。至って真面目だぞ?貴様の方が巫山戯ているのではないか?王というのに民を守れない。何のために君臨していたのだ?愚か者め―――


「貴様がぁっ!うぐっ!」


 ―――黙って見ておけ…それでは暇か?それなら…一人一人の魂の拠り所でも聞かせてやろう。今食った魂の持ち主は貴様のことを好いておったようだ。クック…こんな無能を…その所為で食われて…―――


 闇竜の呪いを口にも使用してサラを黙らせたバルバロス。その巨体の尾で一人の兵士を掴むとサラの前で笑いながら魂を吸引した。


(妾は…こんな所でっ!)


 サラは必至で何とかしようとするが体はピクリともしない。憎々しげにバルバロスを睨むことしかできない自分の身を呪いながらただ睨む。すると不意にバルバロスが食事を止めた。


 ―――無粋な…誰か来るな…まぁいい。餌にしてくれる!―――


 バルバロスは口に『闇焔』を溜めて新たな来訪者を待ち受けた―――











「…なんだこれ?ビミョ~な殺し方して…解呪すればみんな生き返るし…これ使った奴呪いを舐めてんのかねぇ?お説教が必要だな…」


 今村達は地獄に来ていた。そこあった屍を上空から軽~く観察すると魂のつながりは切り切れてない。死体の損壊度も低い。今村からしてみれば馬鹿みたいなものだった。

 そんな死体検分をして検分させてもらったお礼に「ドレインキューブ」で呪いを吸ってシルバーコードを引っ張って魂を盗り返して生き返らせているとアーラムが急に天を仰いだ。


「…ちっ!空気の読めない馬鹿がいる…兄ぃ…僕ちょっと用事ができた…ごめんなさいっ!行ってきます!」

「おー何か知らんけど行って来い。」


 チャーンドには何も言わず今村にだけ挨拶して去っていくアーラム。チャーンドはニヤニヤして見送った。


「で、チャーンドは危ないからここら辺で回復でもしといて。俺は行って来る『αモード』!」


 今村は飛んで行った。



 ―――貴様が吾輩から魂を―――


「あ、ごめん。」


 バルバロスに遭遇した今村は口上の途中で髭を切り取った。


「遅いよ言うのが…もっと早目に言ってくれないと口上無視になるじゃん。」


 自分は悪くないと主張する今村。その態度はバルバロスの逆鱗に触れた。


 ―――貴様は糧とならずに燃え散って死ねい!『闇焔』!―――


 バルバロスの口から大量の黒い炎が迸る。サラはそれを見てこの男ももう駄目だと目を伏せた。…だが


「お!いいね。協力的じゃないかバルバロス君。『ドレインキューブ』う~ん…期待外れだけどまぁいいや!じゃ、大人しくしててね?後で回復はさせるから。」


 今村はへらへら笑って黒みを帯びた紫の立方体を形成。「闇焔」はすべて呆気なく吸い取られる。

 そして今村はローブから「死神の大鎌」を取り出した。


「んじゃ…今回は生命力とー、鱗の一部とー、角一本とー流石に目玉は可哀そうだから血でいっか。貰うよ?『ウォドゥオション』」


 無差別に生命力を奪うその技はサラからも生命力を奪い、サラは気絶した。


「安心安全の『死神の大鎌』だから抵抗しないでね?寝れば回復するから。」


 ―――き…貴様はっ…―――


「もういいよ~次行ってみよう!」


 今村は「死神の大鎌」をローブの中にしまうと今度は「呪刀」を右手から出した。バルバロスは「ウォドゥオション」が切れ、行動が可能になる。…が、その時には今村の「呪死裂断」で胴体の半分ほど鱗を剥がれていた。


 ―――~っ!『転移方陣』!―――


 敵う相手でないと判断したバルバロスは強制転移を発動。


「あっ!おい!まだ角!」


 今村の言葉など無視して逃げ出した。残された今村は呟く。


「回復してないし…これじゃ俺完全に悪役ヒールじゃん…『αモード』解除」

「…ここは別の意味で大変なことになっているな…まぁ奴は慌てて逃げたから魂を置いて行ってる…ここに居る者共もすぐに回復するだろう。仁がやった分以外。」


 少し意地悪な顔で笑うチャーンド。


「あ!棘があるなテメェ…まぁいいか。」

「兄ぃ~…ありゃ…急いで来たのに…」

「終わってる。じゃ、冥界に帰ろうか。」


 急いで帰って来たアーラムを連れて今村達は冥界に帰って行った。












「う…うぅん?」

「サラ様!起きられましたか!」

「…バルバロスは…?」

「わかりません…ですが我が軍に死傷者なしとなっております。」

「…あの人が助けてくれたんじゃな…」

「あの人…?」

「わからない。ただ…黒いローブを着た凄く美しい男の方じゃった…」

「サラ様?ご尊顔が赤く…」

「っ!全軍をまとめて帰るぞ!」

「は…ははっ!」


(…どうしたんじゃろうか…あの人のことを考えると…いや…何でもないの…じゃが…また会えるといいのう…)





 ここまでありがとうございました!


 サラが見た今村は「αモード」ですので美しいの表記に誤りはありません。「εモード」はそういう美女になる用のモードなので今村は「αモード」と違って自分の状態を知ってます。…ただそんなに自分の顔は見たことありませんが…あと、三男神は今村の「εモード」を見たことはありません。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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