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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十四章~さぁ、動き出そう~
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1.誰にもバレない変装

「さて、『εモード』。後はどう改変するかな。」


 大陸を移動させた後、今村は崩壊した世界へと飛んで廃屋の中で女性形になって首を傾げた。


「……匂いは、まぁアクアマリンで。服装はなぁ……通常時だと何着ても白か黒色になるからせめてドレスか何かにしておくか。」


 今の自分を絶対に鏡で見たくないと思いつつ今村は改変を進め、結局、白小袖に鳳凰の文様が入った千早。そして黒い馬乗袴で体を包み、短弓を持った。


 それに合わせて髪型も短垂髪みじかすべらかしという簡単に言えば腰の辺りまで髪を伸ばした状態で首下で結んだ状態で結い収める。そのころには最初に設定した匂いが体から発され、無駄にいい香りがしてきて何となく物悲しい気分になる。


「……考えたら負けだ。まぁ別にこれも俺の一部みたいなものなんだが……他の形態だったらどんな状態でも認識できる癖に女性になると分からなくなる辺り全員変態だよなぁ……」


 今村は言い寄ってくる女性たちのことを思い出しながら溜息をつく。尤も男の方が深刻で目の前で改変しても言い寄ってくる男がいるくらいだ。最近あった中ではアーラムとチャーンドくらいしかこの姿を知らないが二人とも変態だったので殴り飛ばした。


「んじゃ、口調を改めまして。完成。」

「ね~」


 今村の「εモード」が完成したところでいきなり気の抜ける声とともに思わず飛びつきたくなるほどの愛らしさを持った女の子が目の前に現れた。


「……何だ?」


 今村は舌打ちしたい気分を内心で押し殺してその少女……フィトの問いかけに芯の強い凛とした女性の声で応答する。時間経過してその声に慣れるまで自分を殴りたくなるがそれも押し殺しておく。


「……あのね~とぉっても~格好いい~人~見なかった~?」

「知らんな。……というより、特徴が分からんのだが……」

「黒い~お洋服で~目が~諦観してて~それなのに~楽しそうな人~格好いいんだよ~?」


 格好いいは外せないらしい。取り敢えず目をよく洗って見えるようにしてきた方がいいんじゃないかと言いたいのを抑えて今村は再び知らないと告げる。するとフィトはとても残念そうに俯いた。


「………シェンちゃんに~お仕事~押し付けて~来たのに~」

「……それが誰か知らないが、自分の仕事は自分でしたらどうだろうか?」

「ダ~リンの~ほきゅ~がね~いるの~ないと~眠い~」

「そこは頑張るべきところだろう……?とにかく、私は見ていない。それと、行くところがあるからこの辺で切り上げてもいいか?」

「うん~私も~探さないと~じゃ~ね~」


 フィトは自ら消えて行った。それを見送って今村は悪い顔で笑う。


「はっ。計画通り……まぁ言ってみたかっただけだが。んじゃ、温泉行こうかね。何て名前で予約したっけ?……あぁ、望月朔か。」


 今村は独り言を楽しげに言いながら崩壊した世界から飛び、星の表面の殆どが温水に包まれた場所へと飛んで行った。
















「予約しておいた望月 朔だ。」

「はい。えっと、翡翠の間にお泊りの望月様でよろしいでしょうか?」

「あぁ。」

「1泊2日ですね。お部屋へご案内させていただきます。」


 武装解除など言われないまま今村は広々とした畳の部屋に移動して、部屋の説明を受ける。


「それでは個人浴場をお楽しみいただければ幸いです。夕食の方はいつごろお持ちいたしましょうか?」

「……そうだな。1時間後にしてほしい。」

「畏まりました。それではごゆっくり……」


 女将が消えた後、今村はすぐに温泉に浸かりに移動する。


「……はぁ。つっかれたなぁ~……偶には結界なしで風呂に入りたいよね。」


 体は術で綺麗にされているがそれでも一応ざっと洗って露天風呂に浸かって息を吐き、体の様々なモノを巡らせて力を抜く。


「……水死体。」


 力を全くなくなるまで抜いて浮いていると眠くなって来たのでそのまま水の中で15分ほど寝ることにした。


「…………はぁ。んっ……と。行きますか。」


 風呂から上がると今村は簡素な浴衣に着替えて大浴場の前に売ってあるという「天牛の甘乳」と「天野菜」のベリーベリーを態々取り寄せて作った苺ミルクのような飲み物を買いに外に出る。


「退いてくれないか?」


 外に出て2階の大浴場前に行くと多くの人がおり、今村は人混みの中を掻き分けるにはこの体では色々と面倒なので近くにいた人物にそう言った。


(……この体だとすり抜けの時に胸とケツが邪魔になるからな……それに向こうから手を出してくる奴多いし。)


 色々と視線を集めているのを感じつつ今村は堂々と真ん中を通り過ぎて目当ての物を買い、飲む。


「んっ。美味し。」


 噂と想像よりも美味しかったので今村が軽く顔を綻ばせると急に倒れる人物が何人か出た。それをガン無視して今村は瓶を籠の中に入れて更に買う。


「……まぁ、あんまり飲むと夕飯の時に困るし、これでいいか。」


 計2本空けたところで今村はその場から立ち去った。そして部屋の近くまで行ったところで先程いた所から争うような声が聞こえてきたので溜息をつく。


「……そう言えば、そういうのに気を付けないといけなかったか。」


 瓶の奪い合いが生じているらしい。似たようなことを男性形でも祓たちにされたがこの状態でもされると気持ち悪い。


「まぁ、でも毒で勝手にやられるだろうから放置しよう。それより夕飯の方が楽しみだな。あの苺ミルクの出来だったら期待できそうだ。」


 今村は電子精霊を呼んでコンサートをこの場で開いてもらい、夕飯を待つことにする。


「……君ら、元の世界のこと覚えてるか?……いやまぁ、あの世界の物とは完全に別物……いや別人になったんだが。もう忘れたか……」


 首を傾げる電子精霊たち。そんなことよりと歌い始める。今村はのんびりしたい時でもアップテンポの歌を聞くのでコンサート自体は電子精霊たちだけ盛り上がっていた。


『マスター、盛り上がって欲しいです。』

「無理だな。私はお休み中。本日あらゆる頼みごとを休業中なんだ。」


 完全防音の部屋の中で本を読みながら横になりだらける今村。裾が肌蹴て淫靡な雰囲気を醸し出しているが本人は全く気にしていない。


「お食事をお持っ致しました……」

「お、待っていたぞ。ぉ?」


 期待の笑顔で女将を迎え入れる今村だが、女将は急に術で全ての料理を支えて鼻を抑えた。だが、指の隙間から血が滴り落ち、箸に付着する。


「誠に申し訳ございません。今すぐ新しい物をお持ちいたします。少々お待ちください。」

「あ、あぁ……」


 女将はすぐに遁走して行った。今村は訝しみながら首を傾げると傍に居た電子精霊の一人に溜息と共に言われる。


『もう少し、恥じらいを持ってくださいよ。今のマスターは同性でも見惚れるほどの美人さんなんですから……』

「……いや、脳にダメージを与えるほど気持ち悪い顔だったんだろ。後でもう少し改変しよう。」


 この後、夕食で食事を終えた後の今村がもう少し美人になるように概念での改変を終了させたところで女将が先程のお詫びの品を持って来たところ、興奮し過ぎて昏倒したと言う事件が起きた。





 お付き合い頂き有難う御座います。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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