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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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23.ストレスはいかんよ

「そこのゴリラ。何か用か?……あ、治して欲しいのか?」

「そうだよ!流石【マッド】話が分かる!」


 今村は近づいてきたゴリラのような生物を視てそれが【求道者】だということが判明して取り敢えず【白魔法】で治した。


「いや、まいったまいった……でもまぁ、最悪ではなかったなぁ……」

「さっきのは何考えてたんだ?」


 状況を理解していない面々のことは忘れて会話に華を咲かせる今村と【最悪】は次第に会話と呼ぶには相応しくない早さと聞き取り辛い言葉を喋り始めて最後には念話で話し、黙った。


「ふぅん……後でその術式コピーしていい?」

「勿論、いや、やっぱり【マッド】は目の付け所が違う。より悪い改悪が目指せそうだよ。」


 最後には握手を交わして終わった。周囲にいた3人には何が起きたのか全く理解できなかったが今村は歪んだ笑みを浮かべて楽しそうにしている。


「さて、取り敢えず本題と行こうか。この大陸持って行くから退け。」

「おっけ。ちょっと待って。……あ、ウチ来る?術式のコピーとかするんだろう?そっちの方が手っ取り早いと思うんだが。」


 ということで一行は【最悪の求道者】の家へと向かうことになった。





「……うわぁ……何か、もう……」

「近付くだけで嫌な臭いが鼻に付くのぅ……」

「あ、あの……私、お仕事が……」


 近付くだけで匂い的にはそうでもないが生理的に無理な臭気が蔓延し、近くで姿を見るだけで吐き気を催す邪悪な形をした家。そこに彼は住んでいた。


「シェンは仕事があるなら帰れ。お前の仕事はサボったら洒落にならない事態が発生する。」

「は、はい……」


 実際のところは大方の仕事を【火竜神】が勝手にやっているので特にいなくても問題はないのだが、この家の中に入るにはシェンには荷が重すぎた。どれだけ好きでも無理な物は無理なのだ。


「じゃ、じゃあ、失礼します……」


 サラとクロノの様子をちら見して二人の状態が悪いにもかかわらず断固として今村から離れる様子を見せない二人に軽い尊敬の念を抱きながらシェンは元の世界へと帰って行った。


「……さて、お前らは急に仕事とか思いださないのか?」


 今村は皮肉気な笑みで移動を続けながらクロノを見て、クロノはそれを笑顔で真っ向から受け止めた。


「クロノのお仕事はお兄ちゃんと一緒に居ること!そしてそれが趣味!」

「嫌な趣味してんなお前……」


 クロノのドヤ顔を受けて今村は嫌そうな顔をした後、サラの方も見る。サラは何かを諳んじるように口を開いた。


「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、妾は主を愛し、敬い、そして時に慰め、助け……死が二人を分かとうともこの魂がある限り全てを主に捧げることを誓っておるのでな。」

「お前いつの間に俺と結婚してんだよ……」


 こちらもドヤ顔だった。両者どうだと言わんばかりのその笑顔を見せて腰に手を当てて通常時でもかなり大きな胸を更に張り、見て来るので今村は溜息だけ吐いて【最悪】の方を見る。


 【最悪】は地獄で席の譲り合いをして結局座らないまま笑顔で両者立ち続ける結果に終わった地獄バスの光景を見たような顔をしていた。


「……何だよ。」

「いや……丸くなったなぁって……ルーネさんとかがふざけてたら地面に埋めてたよね?」

「おう、今でもよくやる。あいつは洒落にならんからな。っと、着いたな。入っていいか?」

「どうぞ。……あぁ、質問、いいかな?」


 今村は術式のコピーを行いながら【最悪】の質問に答える。【最悪】は今村との会話中に今村がコピーしている術式を見ながら会話をしつつ不意に笑みを浮かべた。


「……よかったよ。変わりないみたいで。」

「変わってるぞ?クック……まぁ、一回別実験してからの話だが。」


 サラとクロノが何を言っているのか分からない状態のまま二人は悪い笑いをして術式のコピーを終えた。


「あ、悪夢の申し子っていう適当に侵略して来た化物たちを改造して産ませた化物の子どもがいっぱいいるから気を付けてね。」

「この世界の化物じゃないんだろ?んじゃ、瞬殺しよう。」


 【最悪】の忠告を受けて今村は普通に外に出た。そして薬品を一口口に含むと地面に手を当てる。


「『総世氣朕流そうせきちんりゅう』この世界の意思を石と成せ。『大妖仙氣魔発剄』。」


 地面から石柱を浮き上がらせるとそれを剣に変えて今村は適当に構える。


「……何か必要以上に禍々しいよなぁ……」


 おそらくストレスが溜まっているのだろうと判断して一瞬今村は殺意が沸き立ち周囲を破壊しまくるがそれを押し殺して明るく笑った。


「さぁ、始めようか。『白礼刀法・三十二の型:霧斬り舞』」


 笑顔で刹那というには速過ぎる阿頼耶の間の舞が繰り広げられ、この場にいる誰もが見えない瞬時の技で見渡す限り地平線が広がる大陸が出来上がった。


「……うわぁ。引くわ……」

「ねぇねぇ。どうやったの?」


 【最悪】が引く中、クロノの問いに今村は今創り上げた剣を地面に突き刺して元に戻してから答える。


「……この世界の意思を剣に仕立て上げてこの世界のモノには干渉しない様に部分固定して世界を切り開いた。ここの動植物たち異世界産らしいな。殺意が伝わって来た。」


 説明ついでに先程の殺意の発露の一部の要因を話してほぼ自分の殺意の発露を誤魔化し、地面の剣に掛けた術を解除する。すると剣は消えてなくなった。


「……軽く死ぬかと思ったのじゃ。全然、強くなれてなかったのぅ……ヴァルゴが最近入っておるという門の中に妾も入れてもらうかの……?」

「……好きにしろ。『クロノトリガー』条件付き。」


 この大陸の大掃除が終わったところで今村は以前持って行った大陸を様々なエネルギーなどを別エネルギーで代用した状態で復元する。


「さて、これ持って行くの結構疲れるんだよなぁ……よ……っと。あ、退け。」


 今村のやる気のない掛け声とともに自分たちがいる円形から外が急激に持ち上がり、周囲が真っ暗になる。いつの間にか【最悪】は家ごと居なくなっており、今村はクロノとサラの様子を窺った。


(……微塵も動じてないな。こいつら……俺が関与してたら何が起きても不思議じゃないで済ませそうだ。)


 暗闇の中で今村は眉を顰める。誰にも見えていないだろうと思ってした行動だが、それにより二人に僅かな焦りが芽生えたのを知り今村は舌打ちした。


(どんな状況でも見てやがる。あぁ……ストレス溜まってるわけだ。自分の体を結

構適当に扱ってるからなぁ……やはり休養が必要だ。)


 大陸を飛ばした後、目を外していなかったはずのクロノとサラが一瞬の意識の断裂に気付いた時には既に今村はこの場に居なくなっていた。





 読了、ありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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