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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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22.そう来られると困る

「そ、それでは、王の間へお願いいたします……」

「あぁ。」


 屋敷が爆発した後、瞬時に復元してしばらく寛ぎ続けた今村たちはすぐに王の間へと迎え入れられた。

 当初は普通に謁見しようと思っていた今村だが相手の態度が露骨に怯えているのでそういう場所での対応で謁見することに決め、王との謁見に臨む。



 入って来て最初に見たのは王族たちの綺麗な土下座だった。



「…………」


 今村は目の前で土下座している王たちを見て最初に決めた態度のことを忘れ、黙した。そんな間で王が顔を下げたまま口を開く。


「【マッドセージ】様の御来訪があると言うのにもかかわらず、席を外して遠き地におり、長らくお待たせしたこと誠に申し訳ございませぬ!」


 必死な感じがひしひしと伝わって来て何だか虐めている気分になったので今村は取り敢えず顔を上げさせる。すると今村が玉座の間に座らされ、王族が臣下の礼を取った。


「……あー。」

「はっ!何でございましょうか!?」

「……土地をねぇ。」

「どういたしますか!?」


 何とも言えない気分になって口が重いのに王は一々五月蠅い。今村は交渉するのが面倒になったので今から自分がやることを告げるだけにした。


「大陸を持って行っただろ?あれ、復活させる。で、別のところ……まぁ適当な国の跡地になってるところ持って行くから。」

「は……ははっ!分かりました!」

「用件はそれだけ。別に大したことじゃなかったからそんな怯えなくていいのにね……」


 非常に大したことだが、今村の感覚的にそんなものだ。普通の星では大陸がなくなるということなどが起きようものなら星全体で気候変動が起きるが、この星はそんなルールなど知ったことではない。


 過去に弄り回した神物の一角が言うのだから間違いない。


「……さて、あ~どこの大陸なら持って行っていい?」


 そんな気軽に言われても非常に困る。以前、彼が持って行った大陸は当時人が住めない極寒の大地だったが、そこの大陸を返されても今、人々が住んでいる大地を奪われれば大問題になるのだ。


「まぁ、普通に考えてフレーパキショーかな。」


 普通の考えを持つ者であれば大陸など持って行くものではない。だが、王は一応今村が人がいない大陸を持って行くつもりであることを知り、安堵した。だが次の瞬間、人のいない不毛の大地に住み続けているある人物のことを思い出して王の背中に冷や汗が流れ落ちる。


「じゃあ、貰って行っていいかね?」

「ま、【マッドセージ】様。フレーパキショーには【最悪の求道者】様がお住みになられておりますことを、お伝えさせていただきます。」


 王は今村に対して反論も異論も言わずになるべく早く用件を済ませて帰って貰いたかったのだが、【最悪の求道者】がいることは言っておかねばよくて戦争。最悪の場合想像したくもないような事態に至るのではないかと危険を承知で今村にそう告げる。


「……あーあいつか……まぁ気にしないけど。」


 今村は一瞬眉を顰めたが、計画はそのまま実行することに決めて立ち上がる。


「じゃ、アレを退けるが……多分、新大陸に飛ばす。じゃあな。」


 今村は王にそう言って王城から出て行った。



















 王城から出て今村を待っていた女性陣たちと合流するのを避けて今村は移動したが2分後にるぅねに発見されて同行することになったので今村は今から行うことの説明を軽く行った。


「……さて、アホ。」

「はい!」


 今村の呼びかけにるぅねは元気よく手を挙げて応えた。今村は自覚があるなら少しは頑張ってほしいんだがなぁ……と思いつつ指示を出す。


「お前先に帰って土を入れる先の倉庫で管理状態を整えて受け入れ可能な状態にしておけ。」

「オッケーだよ!るぅね出来る子だもん!……あ、アホじゃないよ!」

「反論が遅い。つーかさっさと行け。」


 るぅねは瞬時に消える。だが、その前に一瞬今村の側に残っている女性たちに笑いかけて妖しく目を光らせた。


「これでよし。行って来ま~す!」

「……何で記憶消したんだ?」


 今村は術の正体を見た瞬間に把握して意識が朦朧とした状態になっているサラやクロノ、シェンをローブで支えつつるぅねに尋ねた。するとるぅねはごく当たり前のことを訊かれたかのように答える。


「え?変なのにあるじ様が所有権を渡したらるぅねが困るからだよ?特に、クロノちゃんとは仲良くなったからねー。変な気を起こされたら困る~」


 今村は笑顔で舌打ちし、るぅねは笑顔で舌を出してこの場からいなくなった。そしてそれを合図にしたかのように3人は意識を取り戻した。


「んぅ……?アレ?」

「え、えっと……な、何を、してたんでした……かね?」

「……アレじゃろ。大陸を持って行くことの説明じゃ。【最悪の求道者】についての説明を受けておったはずじゃ。」


 サラの言葉を受けて全員が今村の方に顔を向ける。今村はそんなものした覚えはなかったが、術抵抗がこの中で一番低いサラだし、仕方ないと説明を始める。


「簡単なことだ。【最悪の求道者】は万人にとって【最悪】である事態を追い求めてそれを実行し続ける男。……あ、ついでに人外にとっても【最悪】で、環境にとっても何にとっても【最悪】を追い求めてる。これが最悪じゃないかというものを考えついたら実行して周囲にばら撒くということと【最悪】を追い求めることから二つの意味で名付けられた。」

「……迷惑な人だね。」


 クロノが端的に表したことが一番しっくりきてシェンとサラも頷く。


「で、俺と仲良くはないけど敵ではない。ここから先に行くと多少トラウマを覚えて帰ることになりそうだが、どうする?」

「……お兄ちゃんの手、握っていい?」

「ローブな……おっと。手遅れだ。」


 クロノへの返答を打ち切って今村は「絶刀」「絶牙」の二振りの刀を抜いて臨戦態勢に入る。


「おーおー……今日の双刀は何か禍々しいね。」


 金色の大太刀と漆黒の小太刀の形状が綺麗な日本刀と太刀から荒れ狂う波を表したかのような蛮刀になっており、色も緋色と紫黒の禍々しい色になっていた。


「……【最悪】に中てられてるなこれ。別に強くなるからいいんだけど。」

「【マッド】!よく来てくれた!助けてくれ!」


 今村は首を傾げた。聞き覚えのない声でここでの昔の通り名を呼ばれたのだ。だが、取り敢えず近づいて来たゴリラみたいな動物は斬撃を発して斬り捨てにかかる。


「うわっ!ま、待ってくれ!」


 ゴリラのような動物は今村の攻撃を辛うじて避けて悲鳴を上げる。今村はそれを受けて少し攻撃の手を止めたがクロノが今村の隣で嬉々として能力を発動させていた。


「次、クロノの番でーす!」

「ふぉっ!」


 光すら逃れられない時空の斬撃がゴリラっぽい動物を襲う。ゴリラのように見える動物は何とかそれも避けた。


「ま、待て、俺は……」

「うむ、次は妾かの。」

「いい加減話聞いてやれよボケ。」


 サラも攻撃態勢に入ろうとしていたので今村はサラに拳骨を落として地面にすらりと伸びた足を半ばまで埋めて彼女の動きを止めた。




 ご閲覧ありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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