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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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20.何でかな?

 しばらく歩いて一行は王城前に着いた。


「っと、その前にっと……」


 門兵たちが不審な人物たちを見る目でこちらを見て来るのを感じて今村は今の自分の顔は以前の物と違うことを思い出して「αモード」に入る。


「っ!」


 その瞬間、目の前にいた門兵の警戒度が引き上がり、多数のゴーレムの増援が現れた上、門兵の一人は城の中へと消えて行った。


「……?変な顔にしてしまったか……?いや、まぁ……元から変な顔だが……鏡見たくないしなぁ……確認したくないけどまぁしょうがない。」

「格好いいよ!」

「……お前らは頭おかしいから当てにならん。」


 仕方がないので今村は自分の顔を鏡で見た後に罪もない鏡を殴り壊して門兵に確認を取りに歩いて近づく。


「ひぃっ!」

「……別に取って食べやしないんだけどなぁ……王様に会いたいんですけど、アポイント取ってもらってもいいですかね?」


 別に何もしていないのに怯えられた今村が釈然としない気分で門兵に語りかけると門兵は非常に緊張した面持ちで答えた。


「お、王は今、不在ですので、翌じ……い、いえ!後、半日でした!半日ほどお待ちください!何とか致します!」

「……ん?いや、まぁ、それでいいならいいんだが……」


 別段脅したわけでもないのにこの態度になられて微妙な顔になる今村。その顔を見て門兵は顔色を悪くし、そうしている間に城の中から城の中でも要職に付いていそうな格好の人物が現れた。


「ま、【マッドセージ】様。本日は、ようこそおいで下さいました。」

「……こりゃまた懐かしい名前を……」


 今村は苦笑した。


「王は少し所用で席を外しておりますので……後、1時間で呼び戻します。」

「あれ?半日って……」


 クロノが小さく呟くと今村の応対をしていた門兵の顔色が蒼白になる。


「……な、なにとぞご勘弁を!」


 そう言って門兵は自決した。今村はその光景を見て首を傾げつつ白魔法で普通に蘇らせた。すると彼は絶望した表情で泣き始める。


「え?何で?」


 今村が更に首を傾げると城の中から出てきた男が跪いて口を開く。


「そ、その者も、十分に反省しておりますので、せめて、苦しまない最期にしていただけませんか!?」

「……別に死ななくていいんだが。」

「い、嫌だ!俺は人間のままでいたいんだ!うわぁあぁぁぁああっ!」


 門兵が叫び声をあげながら逃げようとするのを周囲の増援だったゴーレムが回り込んで封じ込める。そして今村の前に持って来た。


「……何か勘違いされてる気がする。取り敢えず別に気にしてないから解放してあげなよ。」

「か、寛大な御心に感謝致します!」

「んで、1時間だね?1時間後に来るから。じゃ。」


 色々と釈然としない今村は微妙に首を傾げつつ後ろでずっと待機していた女性陣たちを連れてこの場を後にした。















「……何だったんだろうか?るぅね。俺何かしたっけ?」

「!るぅねあるじ様としたことなら何でも覚えて…………えへ?……なかった。でもでもっ!ちゅーした回数とか一緒に寝た回数は覚えてるよ!」

「んなこと訊いてない。」


 今村が「αモード」の顔になって町を歩き始めると人が道を開けて土下座状態になった。そして先程まで活気のあった町は静まり返っている。


「ん~……まぁこの扱いには慣れてると言えば慣れてるんだが……でも一回住んでた所だしなぁ……」

「お家行く!?」

「行かない。……おっ。」


 適当に時間潰しで来そうなところを探しながら土下座している人々で出来ている道の真ん中を歩いていると見覚えのあるスキンヘッドの3人の男たちの姿が目に入った。


「ひぃっ!」

「あ、あの人たち……」


 その3人組を見ると顔を伏せながらも様子を窺っていたらしい男たちが近付いてきた気配に悲鳴を上げ、その声でシェンも気付いて怒り始める。


「さ、さっきは……旦……ひ、仁さんの前で……よくも……人が……き、気にしてることを……」

「き、気付かなかったんです!何卒これでお許しを!」

「……いや、だからさぁ……」


 目の前で自決する男。今村は溜息をついて彼を復活させると質問した。


「俺、そんな怯えられること何かした?」

「お、怯えてなど、いません!ご、ご威光が……あまりにも凄く、私たちでは立てないのです!」

「……さっき……まぁいいや。俺が、何をした?」

「わ、私はその偉業を自ら見たわけではございませんが、父から……」


 今村の質問にスキンヘッドの男はすらすらと答えてくれた。


 曰く、平行世界の顕現実験を行い、この世界を二重化させて片方の世界をすべて消し去った。


 曰く、城塞都市の他にも国があったが、引き抜きを行おうとして手を出してきた国を全て支配下に陥れ、実験場とした。


 曰く、何らかの兵器を生み出し、この世界を完全に破滅させた後に完全修復し失敗だったの一言で済ませた。


 曰く……


「……成程、若干身に覚えがある。特異点が本当に他の世界に居ないのか覗いたりしてたな。五月蠅い国は黙らせたし……兵器はここで造ったか?」

「ん~多分、るぅねとドライブデートした時に一回世界が崩壊しちゃったときのことだと思います!」


 そう言えばそんなこともあったような気もする。だがデートではなく乗り物を造ったので試乗してみただけだ。


「なんじゃ。普通じゃの。」

「うん。もっと大変な事してたのかと思ったよ。」


 サラとクロノはそんな軽い反応で終わった。シェンは怒りの行き場をなくして何とも言えない顔になり今村のローブの裾辺りを引いて黙ることになった。


「ん~でも俺がいた時のこの世界ならもっとヤバい実験してた奴らがうようよいたんだがなぁ……何で俺だけ?どう考えても【ドクトルC】の方がヤバかったと思うんだが……」

「んにゃ?どんな人?」

「変態。自分の最高の嫁を創るためにある世界の女性全員を掻っ捌いて調べ尽くしたり……?いや、この動作良いなと思ったら男でも掻っ捌いて……あれ?つーか動物でも……ん~全部掻っ捌いてたな。うん。」

「そ、その人聞いたことあります……た、確か、殺されたんですよね……?」


 シェンの報告は初耳だった。


「へぇ……知らなかった。まぁいいけど。世界平和に近づいたね。」


 今村は笑顔で頷いた。













『……陛下。緊急事態です。【悪夢の時代】の覇者が帰って来て謁見を要求しております。』


 その頃、世界の裏側まで討伐軍を労いに行っていた王の下に一通の連絡が入り王は顔を凍りつかせた。


「ば、馬鹿者。【黄金時代】と言え。どこで誰が……いや、何が聞いておるのか分からんのだぞ?」

『し、失礼いたしました!』


 謝って済む問題ではないと怒鳴りたい気分だがそれよりも今は情報が必要だったので先を促す。


「……あの時代の覇者……か。【マッドセージ】様か?」

『……はい。ルーネ・バートビール様が傍に控え、ずっと上機嫌でしたので間違いありません。』

「……まだ【哲学者】様よりマシだと考えるか……すぐに戻る。全力で戻って今から50分程だ。すぐに謁見の準備を整えろ。」

『はっ!』


 通話を切ると王は深く、深く溜息をついた。その脳裏には幼い頃、彼の父との会話で土地を貰うと言って大陸を一つ消滅させた男の姿が笑顔で思い起こされていた。




 読了ありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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