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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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19.城塞都市に入ろう

「褒めて!」

「黙れ馬鹿。帰れ。」


 今村が通行証を持って来させたのは今村以外でそれに触れることが可能な者である中で一番素直に言うことを聞くるぅねだった。


 そして持って来させたところまではいいのだが今村はシェン以外が凍りついたかのように動かなくなっている周囲を見て首を傾げた。


「……あれ?るぅねって思いの外可愛いのか……?」


 今村の呟きにシェンも少し上気しながら頷く。


「……うん。……あやうく……魅了、されかかりました……よ?」

「るぅね可愛い!?やったぁ!あるじ様が褒めてくれたよ!」


 ここで色々なやり取りをしていた門番は幸せそうな顔で見るに堪えないモノを下腹部から垂れ流しにして死んでいる。


「……ん~まぁ、るぅねも成長してるんだなぁ……外見と能力は。」

「してないよ!あるじ様いないとるぅねはダメダメだよ!」


 汚いものを消し飛ばしていく今村の前で両手でバツ印を作るるぅね。外見は人間でいうところの10代後半の、それも20代に入る一歩手前の極めて優れた美貌を持っているのだが頭の中は残念だ。


 そんなるぅねに今村が溜息をついているのを見てシェンはやっと二人の関係性について訊くタイミングを得た。


「え……と、その方は……」

「姫神様っ!」

「あ?」


 だが、シェンの質問に今村が何か答える前にいつの間にかこの場に多くの人々が集まっていた。今村はそれら全員が今村のことを全く気にも留めずに飛んできたことで反応に遅れ、訝しげな眼でその人物たちを睥睨する。


「ぅわっ……る、るぅねは知りませんよー?」


 そして今村の視線がそんな変な人物たちに囲まれているるぅねに向けられるとるぅねは困った顔でそんな返事をして今村の方に飛んで抱き着いて来た。


「……お前、これ……今の俺は大丈夫かも知れんが少し前の俺なら普通に死んでるからな?」

「死んじゃ駄目!」

「テメェが殺しかけてんだよこの馬鹿が……」


 るぅねを払い落すとこの場に来ていた面々から声が上がり、今村へ敵意が向けられる。それを受けて今村は笑った。


「何だ、分かり辛いんだよ……最初から殺す気なら掛かって来いよ……」

「あるじ様にるぅねのいいとこ見せるよ!るぅね超頑張る!」


 今村の臨戦態勢への移行に伴い、るぅねも戦闘態勢に入るがそれを見て今村は苦笑した。


「……いや、お前が至近距離で超頑張ると俺ちょっと困る……」

「るぅね頑張って褒めてもらってなでなでしてもらって、添い寝してもらって……えへ……その後はね……えへ……」


 今村は最優先で自分の隣にいる奴を倒した方がいいのではないかと思ったがそれよりも目の前の敵意を見せていた人物たちの死んだ目を見て思考を一度やめて尋ねる。


「お前ら、何?」

「……我らは姫神様親衛隊。」

「……非女神様?まぁ、合ってると言えば合ってるが。態々言うまでもないことだよな?」


 言ってから今村はこの世界には霊氣が少なく、言霊を使えない奴らが多いことを思い出して舌打ちをする。


 しかし、今村の言っているニュアンスはこの場にいる面々には伝わったようで再び敵愾心を抱いた目を向けられた。


「……ふ~ん。……ここで霊力を使えるってことは結構な高位神なんだな……まぁさっき気付いたが、るぅねを前にして正気を保ててるんだからそれを見なくともそうわかるもんだが……それで?何の用?」

「……姫神様の安寧と幸せのために我らは活動している。いつも寂寥感を露わに、あるじと言う人物を待ち続けてこの町で買い物をし、そしてそのあるじの為に永劫に近い年月を一人で仕事をし続けた彼女に……」


 今村は説明の途中で聞くのに飽きたので彼らに見えないように術を施してから先程門番とのやり取りの間に見ていた本を個人図書館から取り出して読書に勤しむ。


「…………あ、あの……疲れたので、座っても……」

「……その健気な精神と溢れる愛情、そして多くの人を惹き付けるその快活な笑顔が……あぁ、構わんよ。話は続くからな……そう。その快活な笑顔が曇ることのないようにすることへと尽力することに我らは基本理念を抱き……」

「ねーあるじ様~この人たち何言ってるの?る~ねあきた~」


 信仰対象から飽きられているのにもかかわらず彼らは話を続ける。一応、るぅねには気を遣って何かしらのお菓子やら何やらをあげるが今村の目の前で何かを貰うということはあまりしない方がいいと言うことは理解しているるぅねはそれを拒否した。

 そんな中でしばらくして本を読み終えた今村はチラッとこの世界に合わせている時計を見て立ち上がる。


「……行くか。取り敢えず『自聴他黙』。あと『錯視錯覚』。そうだな。るぅねは付いて来るならこの二人に顔を見せるな。」

「おっけーだよ!」


 一秒たりとも話を聞いていない今村とずっと今村を見続けていたるぅね。それと気絶したままだったクロノとサラを連れ、嫌が応にも聞こえてくる言葉に一人だけ苛まれていたシェンと今村たちは城塞都市の中へと入って行った。



















「……お兄ちゃん……何か、変な所が痛いよ……」

「妾もじゃ……」

「弱いのが悪い。」


 都市の中に入った今村たちは大小様々、造詣も色彩も豊かな人々たちの人目を惹きながら道中を進んでいた。


「おっと。気を付けろ。今、背後から心臓盗られかけてたからな?」

「ほ、ホントかの……?」

「は、はい……気付いてると……思ってたのですが……危なかった、です……」


 途中で愉快な出来事に遭いながらも一行はこの都市の中で一番大きな建物へと進んで行く。

 すると、ガラの悪い3人組のスキンヘッドの男たちが急に道を塞いで今村たちに対して笑いながら道を塞いで来た。


「へっへっへ……ちょっといいかい嬢ちゃんたちよ……今から命一杯愉しませてやるからよぉ……?」

「む……え?」


 見るからに悪者だなと思ったクロノが能力を行使、るぅねも同様の動きを取っていたのを今村に止められてクロノは呆気にとられた顔をする。そんなクロノを無視して今村は男たちに言った。


「また殺そうとする……悪いな。楽しませてくれ。」


 その言葉に今村の背後にいる面々全員が驚きの顔になり、そして泣きそうな顔になった。そんな面々を見ながら男たちは大きく頷く。


「おう。任せろ……いいか?お、これは凄まじい大きさの胸ですな。まさに驚異的なまでに強意された脅威の胸囲だぞ!」

「……100点満点で2点。」

「爆乳さん、巨乳さん、一人飛ばして……無乳さん。」

「シェン。その手を降ろせ。」

「聞いて聞いて~美代子ね~また胸が大きくなっちゃった♪見よこの鍛えられた大胸筋!先日100㎝の大台に乗りました!シェンちゃん!胸がないのを気にしてるのなら~鍛えたら~?これくらい!ハイッ!」

「……お前ら、殺されても文句言えないぞ?」


 取り敢えず無言でシェンがぷるぷるした後、静かに怒ったものの言いたいことが纏まらずに泣いて、他の女性陣に慰められている間に気まずくなった3人は逃げていた。


「……むぅ。折角色々感想を考えていたというのに……」

「ひっく……わ、私にも、ちゃんと、おっぱいあります……」

「え?あぁうん。まぁそれは結構どうでもいいんだが……」

「フィトちゃんにも負けるけど……ヴァルゴちゃんには、勝ってるんです……」


 無駄にヴァルゴが傷つけられた。比べる相手がなぁ……と今村は思ったが口にはせずに慰める代わりにといった態でシェンを肩車して今村たちはこの都市で一番大きな建物------王城へと再び歩み出した。





 此処までお疲れ様です。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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