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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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18.カッサラーム

 今村は取り敢えず陣を描き終えた後にすぐ近くでスタンバイしている面々を見て言っておかねばならないことを思い出した。


「…………あ、これだけは言っておかないといけないといけないこと言うのを忘れてた。服の被覆箇所が全体の80%切ってたら誘ってると思われるから。」

「お洋服ちょうだい!」

「別の服を持って来るのじゃ。」


 今日のクロノの服は黒の改造ショートドレスだった。サラも基本的に薄着の習慣が付いているので一度部屋に戻って行く。


「……まぁ、別にいいんだけどよ。」


 今村は欲しい物をすぐねだって来るクロノを釈然としない気分で見つつも要望に応えて「ウェアーアップフレーム」を通して丈の長いドレスを身に纏わせた。


「ありがとー!」

「待たせたの……」


 サラは張袴に五衣、表着、小袿の姿で現れた。俗にいう平安時代の上流貴族の普段着だ。今村はそれを見てサラに言う。


「……紫の匂か。……いや、いいんだが……その恰好なら壺装束の方がいいんじゃねぇのか……?まぁ別に好きにしていいんだが……」

「……懸帯がの……」


 今村の歯切れの悪い言葉に対してサラは自らの巨大な胸をこちらもなんとも言えない目で見下ろしつつそう言った。


「……まぁ何となく察した。懸帯は参詣の為に身を慎んでるって意味でつけてたからいいんだが……まぁいいよ。ただ……流石に張袴だと歩き辛いだろうから切袴にしておけ。」

「じゃが……服装として変ではないかのぅ?」


 サラの質問に今村はそこまで気にする奴はいないと切り捨てて「ウェアーアップフレーム」を通して準備を整えさせる。


 そして今村は説明を開始することにした。


「……さて、今から行く世界は属性は土。世界観は正より負に寄ってる。禁忌を禁忌とも思わないようなマッドな世界だから大体……いや、大体どころじゃないか。変な奴しかいないと言って差し支えないな。デフォルトでお薬キメて笑い転げてるような奴がダース単位でも足りない位に居る。」

「うん。」

「あ、危ない所、なんですね……」

「そう思うならここに残った方がいい。その他の説明はまぁ、ヤバい街だから基本的に身の安全を図りながら移動しろ。以上。尚、この陣は俺が飛び込んだ後一瞬で消滅する。」


 今村は超適当に説明を済ますと転移陣の中に飛び込んだ。そしてこの場に居た3人も一瞬でこの陣の中に飛び込んで行った。


















「……チッ。」

「……お兄ちゃん……今舌打ちしたよね?」

「迷わず飛び込みやがったなぁって思うと自然と出た。さて、それは良いとして土地を買わないとな。」


 別天地、カッサラームと言う世界に着いた一行は今村の舌打ちに気分を落としつつ歩こうとしてすぐに今村の発言の違和感に気付いた。


「……土を買うんだよね?」

「あ?土地を買う。具体的には大陸一つ買って持って帰る。」

「……まぁ、仁じゃしの……」


 割とすぐに理解を示した今村の周囲の女性たちは今村が移動するスピードに文句も言わずについて行く。


 しばらく歩くという表現を使うのを躊躇うほどの速さで歩いた後、小さな村々を通り過ぎ、一行は城塞都市に着いた。そこでようやく彼女たちはこの世界の人類を見ることになる。


「お、いい女。ここの通行料そこの赤毛の女の髪一筋でどう?」


 いきなり身の丈が2メートル程あり、かなりのガタイを誇るおそらく門番と思われる人物から声をかけられたサラは殺しても良いのかと今村を見る。だが今村は何も言わなかった。


「……オイ、聞いてるのか?全く……俺の世界だったら神託を聞き逃すなんざありえないのに……もう一回言う。髪、寄越せ。」

「……妾の体は余すところなくここにいる仁の物じゃ。妾に訊くな。」


 サラは今村に丸投げした。あげるつもりはそれこそ毛頭もないのだが勝手に問題を起こすのもどうかと思ったのだ。


 そしてサラの言葉を聞いて男は目を軽く見開いて今村を見た。今村は我関せずと言わんばかりに本を読んでいる。


「ひゅー♪言うねぇ……そこの冴えないの、愛されてんなぁ?ま、いいや。こんなのよりも俺に乗り換えた方がいいぜ?何てったって自分の女が目の前で口説かれてるのに何も言えねぇ臆病者ガペッ」

「……あ、お兄ちゃんごめん。イラッて来ちゃったから殺しちゃった……」

「俺に謝る前にそのゴミに謝れよ……よっと。」


 サラを口説くために今村を貶してきた男を一瞬で斬殺したクロノは何も言わずに殺したことを今村に謝る。今村は溜息をつきつつ男を復活させた。


「っつつつ……?何だ?」

「またお兄ちゃんを馬鹿にしたら今度はもっと酷いことするからね。」

「別に馬鹿にしてないだろ……親切心でこいつは言ってくれてるんだから。」


 クロノと今村が談笑し、シェンが手持無沙汰でおろおろとしている中、男はサラを前に何を言っていたのか思い出す素振りを見せる。


「……何言ってたか忘れちまったな……あ、あぁそうだ。目の前でお前みたいなイイ女が口説かれてるのに、くだらねぇ本カペッ……」

「…………今、何つった?」


 今度は今村が立ち上がった。血が付くといけないので本は個人図書館の中に仕舞っておき、死体を爆散させ、惨たらしく殺した後に魂を引き摺り出してその首を掴み、ぶら下げる。


「ひ、ひぃっ!」

「……声あげてんじゃねぇよ。魂ごと捻り潰すぞこの腐れが……あ゛ぁ?この、名作の、高見東志の本を読みもせずにくだらねぇだと……?磨り潰すぞ?」


 そう言いつつ今村は目の前の魂の存在の存在している足の部分を術で拷問器具を出し、磨り潰す。悲鳴が上がるのを今村は五月蠅いと喉を潰してから続ける。


「この本はなぁ……超感動作だ馬鹿が……まぁ俺はあんまり感動しないんだが……それでも、いい話だと思うくらいのいい出来なんだぞ?何か言ってみろ。」


 今村は理不尽に恫喝した。魂の存在から喉を潰されている男は何も言うことが出来ずに罰として両腕を捥がれた。


「……取り敢えず、土下座な。五体投地の状態でセメントで体半分埋めて固めてやる……『白厄呪』」


 今村は爆散した体をわざと甚大な痛みを感じる方法で回復させた後、その男の半身を埋めてセメントで固める。


「ご、べ……」

「あ?何言ってるのかわかんねーよゴミ。死ねよ。」


 そして殺した。その後大きく息を吸ってからその男を生き返らせて門番としての業務を全うするように言って読書に戻った。


「……あ、あの……通行許可証を……」

「新規発行してくれ。料金は何だ?」

「テストラキミジー……です。」


 男の言葉に今村は難色を示した。この都市の有力者の欲しい物となっているのであろうそれは持ってはいるものの結構希少価値が高いのだ。


「……はぁ。かったるいなぁ……持って来させるか。」

「通行証をお持ちでしたら、すぐに通させていただきます!」


 態度を一転させて下手に出る男を冷たい目で見降ろしながら今村は通行証を新規で作るのをやめて持って来させることにした。




 此処までのお付き合いありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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