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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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16.最近色々忘れがち

 戻って来た時に今村が見た光景は今村のここへ来た意味を完全に抹消するようなものだった。


「……突っ込みが、死んでるんだけど。」

「生き返らせる?」


 今村が連れて帰ろうとしていた人物が死んでいたのだ。ここに来た時点で今村は探すのが面倒になったり色々あったりすることで何度かこの世界を滅亡させていたのだが普通に死んでいたとなると一気にやる気を削がれた。


「……はぁ……もういいや。こいつ……上敷 迅のことは諦めて別の誰かを持って帰ることにするか。」

「……生き返らせればいいじゃん……」

「いや、俺が来る前までしか俺が知ってる範囲じゃないからな……ここで死ぬのがこいつの運命だったんなら仕方ないだろ。」


 瑠璃は今村の行動を見て来て何がしたいのか分からない。だが今村は既に方針を決めたようで周囲を見渡してこの世界にいる何かしらのいいキャラクターを探し始める。


「……微妙な奴しかいないんだけどなぁ……まぁ、神野才でいっか。ウチの世界で放り出したらどうなるのか見てみよう。」


 今村は既に壊滅状態の神野の部隊を見ながらそう呟いて神野たちをゲネシス・ムンドゥスへと送った。そして先程の一件で家庭崩壊した神々の相手を適当にしながら欠伸をする。


「!ぼ、ボクの太腿、枕にする?」

「『雲の欠片』があるから別に「して?はい。」……まぁ煽ってブチ切れる奴らを見ながら寝るのは楽しいからいいんだが……」


 先程の神々の嫁たちが出てきて瑠璃を罵ったりするが瑠璃は至近距離の今村の顔を見ながら笑顔を溢れさせているので全く堪えない。実力行使だけほぼ反射的に排除しておく。


「……さらさらだね。仁の髪……あと、その子……ずっと貼り付いてるけど……」

「フィトは植物体だからなぁ……自分が気に入ったところから退くのはあんまりしないだろうな……」


 怨嗟の声が響き、戦場になったところということで大勢の死霊の嘆きが聞こえる中でずっと今村に背負われていたフィトは現在今村の横でコアラのようにしがみ付いて眠っている。


「……ボクと仁の子どもが出来たらこんな感じになるのかなぁ?」

「……まぁ、まずないが。」

「もっと可愛いに決まってるよね。」

「いや、前提としてまず子ども自体があり得ないが……」

「でも、ボクにとっての一番はいつでも仁だからね!」

「聞けよ人の話……」


 瑠璃は人の話を聞かない子だった。ついでにこの会話の間に襲い掛かって来ていた神群はフィトと瑠璃の手によって死に絶えている。


「……お前らの感性疑うわぁ……」


 死体がフィトによって生やされ、瑠璃により艶やかになった木に分解されている様子を氣で感じつつ誰も居なくなったので瑠璃から頭を降ろす。


「あっ……ぶないね?」

「いや、落ちたわけじゃないんだが?」

「?そうなの?」

「……まぁいいや。……おい?」

「え?」


 降りようとしているのだが瑠璃は本気で気付いていない様子で頭を降ろさないように無駄に流麗な動作で行動してくる。


「いや……滅茶苦茶動きに磨きがかかってるけど、そうじゃなくてよ。」

「えへへ……頑張ってたからね。」

「……もういっか。」


 説明も抗うことも面倒なので諦めた。別にデメリットがあるわけでもないので好きにさせておく。


「何が楽しいのか……」

「全部だよ?……仁……さっきの神々との戦いと堕天への盟約で少しだけ疲れてるでしょ?ゆっくり休んでね……」

「分かってますよ感がウザい。」


 今村は跳ね起きた。そして欠伸をした後にフィトを振り落して起こす。


「な~に~?」

「……俺が疲れてるのは、お前らの相……あ。」


 突き放すために言葉を連ねようとしたところで今更ながら爆薬に繋いでおいたテイナーのことを思い出して言葉を切った。


「ボクたちの愛?……でも、これ……抑えてる方なんだけど……」

「違う。……いや、それもだが……あ。」


 地面が隆起して金属の箱詰めの何かしらの化物が出てきたことで先程埋めたこの世界に生まれた神のことを思い出す今村。そして思い出したところで目の前のそれをどうするか考える。


「……ん~……どうするか。取り敢えずキモいからこれは埋め直して……テイナーを探さないとな……」

「オドレは死ねぃ!」


 その掛け声とほぼ同時に箱の側面から屈強な足が生えて来た。そして蓋の部分と底の部分から両腕が生えて来て足と逆方面の側面から頭が生える。


「母上。こやつを倒して俺があなたと契りましょう。」


 一連の動作を見て今村は笑いを堪えるので精一杯だった。1発いいのを貰った後にようやく行動に出る。


「……何撮ってるんだ!?」

「お前の写真。……想像以上に変だぞ?ほら。」


 インスタントカメラの個人改良版を使って写真を撮った後に目の前の新・世界の神に現在の滑稽な姿を見せてあげる。


「……お前がしたんだろうが!」

「いや、俺は封印しかしてない。しかもその封印は俺がここを去った後に解けて蓋が開くと同時に自動で【精練された美】のところに飛ぶ……おっと、口が滑りかけたな。」


 滑りかけたでは済まないと思うところまで言ってしまった今村の後頭部を何か柔らかい物が包む。


「へぇ……今日は、機嫌がいいのかなって思って嬉しかったんだけど……」

「……ここで怒って攻撃の1つでもしてくれれば楽なんだがなぁ……」

「するわけないじゃん。」


 瑠璃が後ろから抱き止めて来たのだ。今村は自分でも忘れかけていた計略の内容を今更思い出して思案する。


「再試行するかなぁ……?いや、もう面倒だ。何で忘れたんだっけな?あぁ……思いの外瑠璃に釣られたアホ共が多かった上、家庭内がアホだったせいか。」

「……仁が言ってることは何だかよく分からないけど、ボクはそれに感謝する必要がありそうだね……?」


 瑠璃の言葉を無視してすり抜けると今村は箱詰めの新・世界の神の箱から出ている部分を頭部分以外切り落として肩に「呪刀」の背をおいた。


「……チッ。帰るか。」

「……ボクたちの世界に……じゃないんだよね……?」


 瑠璃の期待とともに窺うような視線を真っ向から受け止めて今村は頷く。


「今の所俺の活動拠点はゲネシス・ムンドゥスだ。……お前が来たら世界がその清廉な美貌一つで破壊され尽くすから来るな。ダメ。」

「……うん。」


 残念そうな瑠璃はこの別れだけで涙目になる。


「……寿命と体内時間をそろえろよ……」

「少ないんだもん……ボクの君が好きって気持ちを少しだけでも君に分けられることができたらいいのに……」

「それでも俺は変わらない。……さて、テイナーを拾って帰るか。そろそろ手当しないとこいつ死ぬし。じゃな。」

「………………………………うん…………」


 今村はテイナーを担いだ後、フィトを振り落したままゲネシス・ムンドゥスへと帰って行った。


 瑠璃が寂しそうに溜息をついてフィトがいた所を見るとフィトは既にこの場所からいなくなっていた。


「はぁ……いいなぁ……ボクも一緒に居たいのになぁ……」


 瑠璃は新・世界の神を灰燼と化して一人で寂しく―――原神が2柱【可憐なる美】ことミニアン。【無垢なる美】ことセイラン。そして【清雅なる美】などが居る世界。反今村独身貴族連盟本部世界へと帰って行った。




 オツカレサマデス。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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