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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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13.薬物耐性の元祖

「変な実験ばっかりして……」


 瑠璃はご機嫌斜めになったが今村からしてみればそんなことはどうでもいい。問題は丸薬が独りでに滅んだことだ。崩れる、腐るなどではない。滅んだのだ。概念を使って色々する今村はこれ以降丸薬を作るのであれば特殊な技法がいることを把握しつつ首を傾げた。


「……何で?」

「当たり前だよ!ボクは反……何でもない。」

「ハン……?まぁいいや。瑠璃如きに効かないならあんまり効果なしだし。」


 今村はテイナーを足蹴にしながら丸薬のことは失敗作として次に生かすことにして周囲を見渡す。


「……ふむ。瑠璃の美貌にやられたか。この世界の通常運行までしばらく時間があるなこれは……その間にこの辺の世界をちょっと滅ぼしてくるか。」

「……時間潰しに世界潰すとか……まぁ仁が行くならボクもついてくけど……」


 今村の言動が常軌を逸しているのにもかかわらず普通について行こうとする瑠璃を見て今村は自分がすることを棚に上げて瑠璃に言った。


「イメージダウンですよ?【精練された美】様ぁ。」

「勝手に作られたイメージとか知らないもん。仁と居れればそれでいい。」

「……さいでっか。」


 先程からの童貞などの発言をムカつく理由として適当に吹き込んでおいて今村はテイナーを爆薬に縛り付けた後、この世界から一度離脱して近くの別世界の収入信力を誤魔化すために創られた世界へと移動する。


 そして大きく息を吸って少し止めてから吐いた。瞬間、世界の滅亡が始まる。その光景を見つつ今村は何とも言えない顔で笑う。


「……これだから迂闊に深呼吸も出来ん……まぁいいけど。」

「ボクは逆だけどね。」


 その横で瑠璃が大きく息を吸って今村に抱きついた。


「そこは吐けや!」

「いやだって……無防備なんだもん……ふぅ。」

「あ~じゃ~私も~」

「お前はさっきから背中ぁ……」


 寝たり起きたりしているフィトは瑠璃が息を吐いたのを見て今村の首筋に息を吹いて舐めた。そして謝る。


「ごめんね~間違えた~」

「何をどう間違えたんだこのボケ……」


 フィトの分泌する何かが脱力系の何かだったので怒るよりも呆れる方が強めに出た今村は首を捻りに捻ってフィトをじとりと睨む。そんな二人のことを見ながら瑠璃も立候補してきた。


「ボクも!間違える!」

「それは間違えじゃねぇ!」

「あのね~したいな~って思ってたのとね~しよ~って思ったのをね~間違えたの~」


 瑠璃と取っ組み合いを始める今村の背中に乗ってフィトはマイペースに自分が何を間違えたのかを説明するが今村は聞いていない。

 取り敢えずこの世界は今村の呼吸で一度崩壊して瑠璃の呼吸で新しい世界が始まり、フィトの息吹で植物たちの楽園が出来上がった。


「……信力が余計に増えて監査入りそうだな。楽しいか?瑠璃……」

「え?うん。」


 瑠璃に腰に手を回されながら周囲を見渡していると不意にこの世界に同も友好的ではない神々が現れ始めた。


「「「「「我ら【精練された美】様信奉隊。悪名高き世界の害悪であり存在してはならないはずの存在、【冥魔邪神】よ。死ね。」」」」」


 武装して対峙する面々に今村は顎に手を当てて頷いた。


「取り敢えず、君らの練習の成果は出てたと思うよ。綺麗に声が揃っててよかった。で、死ぬことなんだが……已むに已まれぬ事情があって……自殺は出来ないんだよねぇ……」

「ならば我らが殺してやろう!」


 一斉に襲い掛かってくる男たち。それを見て今村は邪悪に笑い体から瘴気を出して一気にプレッシャーをかける…………


「おい。」

「な~に~?」

「何?」


 臨戦態勢を整えた今村は先手を譲り正当防衛と言って戦闘を始めたい。


「何してんだ?」

「「ゴミ掃除(~)。」」


 だが、襲い掛かって来た時点で男たちは死んでいた。この世界に存在する植物が全て襲い掛かり、フィト自体も目に見えない早さで袖から何かを出して敵を狩り、【精練された美】は触れることすらなく拳圧で皆殺しにした。


「……もっと来るかなぁ?」

「え~まったりが~いいよ~」

「うん。そうそう。」


 今村は今度は何が来るのか期待しながら癒されるために猫を大量に召喚して少しの間待機する。


「「「「「【冥魔邪神】死ね。」」」」」

「あっ。」


 今度も何か出て来てくれて声を揃えて宣戦布告してくれたのだが今村が気付いて「あっ。」と言い臨戦態勢に入った時点で猫たちが全員狩っていた。


「……骨なしチキン共め。」

「いいよね~骨~外すの~疲れるし~」

「久し振りにお弁当作ろっか?「いや、俺が作るから止めろ。」……じょ、上手になったよ?」

「ジョーズになった?元からだろ焼き魚を調理して蘇生させた超理人が……お前は俺でも修正不可能。」

「て言うか、作って来ちゃった……」


 可愛らしい笑み。同性であるフィトですら魅了するその笑顔と共に開けられたその箱の中には絶望と悪意と災いがふんだんに詰め込まれており、それを直視してしまったフィトは魅了や不意に訪れる睡魔などではない何かの手によって意識を奪われた。


 直視していない猫たちも自前の空間術式を使って逃げ出した。その光景を見て瑠璃は照れ臭そうに笑う。


「えへ……?」

「……ムカつくぐらい可愛い笑顔は止めて俺の方をちゃんと見ろタコ。」

「う、うん……」


 恥ずかしげに瑠璃は俯き、その尊顔は強固な封印式を少しだけ上回り周囲の空間をまとめて魅了して世界ごと固めることになったが、今村は逃がさないとばかりに手を取って尋ねる。


「俺、お前に言ったよな?勝手に、料理を、作るなって。」

「え、えへ……でも、前上手にできたから……」

「……俺の超味料使って俺のレシピで超簡単……というより出汁すらとってある味噌で具材の入ったお湯の中に味噌を入れれば味噌汁完成なのに不味くはないが決して美味くもないというシチューを作った時のことを言ってるなら俺はお前を殴らなければならない。」


 最早奇跡だった。豆腐と油揚げとワカメが入ったシチューになったのだ。今村は何度も味噌を見て、そして食べたが味噌は味噌だった。だが、どこからどう見てもどう食べても鍋の中はシチューだった。


「……まぁ面白そうだから食べるけど……」

「……♡食べて!」


 取り敢えず今村が箸を付けたのはこの世の悪意というモノを煮詰めた煮汁で炊いたかのような怨霊すら裸足で逃げ出しかねない怨念を秘めたご飯?のようなものだ。


 一口食べて今村は笑い始めた。


「アッハッハッハッハ!スゲェ!【妬み嫉む孤高狼】が嫉妬で殺しかねないレベルの猛毒だ!どうやって作ったんだこれ……?」

「うぅ……毒なのこれ……?愛情込めて作ったのに……」

「いや、スゲェこれ……一応、食べればわかるんだが……本っ当に米と水で炊飯器で分量通りに炊いたのに……これスゲェ……あ、瑠璃は食べたらダメ。死ぬ。」

「でももう見てるだけで恥ずかしくて死んじゃうよぉ……何で?仁が食べる前は普通だったんだよ?」

「その綺麗なお目目は節穴ですか?それとも目ん玉腐ってんですか?」


 今村が少し地面にその……ご飯……?のような……?ナニカを置くと植物は枯れ果てて地表が抉れ、底なしの何かが出来上がった。それを見て今村は再び笑う。


「マジで瑠璃は天才……神体だけでなく無機物にすら何かしらの新エネルギーによるダメージを与えるとは……これ、何のエネルギーなんだろ……」

「うぅぅ……」


 今村的に楽しいお食事を繰り広げることになった。




 毎度毎度の御来訪ありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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